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8月に刊行した古処誠二氏の3年ぶりの最新刊『いくさの底』が、このたび、第71回毎日出版文化賞〈文学・芸術部門〉を受賞いたしました。
本作は「こんな小説が読みたかった」と、新聞、週刊誌ほか、本読みたちが下記のように、各紙誌でこぞって絶賛するエンターテインメント性と深い文学性を兼ね備えた出色の作品です。この機会にぜひお手にとっていただけましたら幸いです。
謎解きの構成が、戦争小説としてのテーマと完璧に結びついている点といい、抑えた筆致が醸し出す不穏な緊張感といい、ほれぼれするほど完成度の高いミステリである。
――千街晶之(「東京新聞」書評より)
外部との連絡が難しい閉鎖空間の村で、互いを疑うことで生まれる息苦しいまでのサスペンスは圧倒的。意外な犯人にも、衝撃の動機にも驚かされる。
――末國善己(「朝日新聞」書評より)
正統派犯人当て小説。
読者を真相へ導く終盤の展開には圧巻の迫力がある。
――杉江松恋(「週刊新潮」書評より)
戦争小説のスタイルと犯人当て小説の手法が必然性を持って結びついた「戦場ミステリ」の逸品!
――若林踏(「小説現代」書評より)
いちだんと夾雑物を排し、静かに鋭く人間性を掘り下げている。
堂々たる語りの優れた戦争ミステリーだ。
――池上冬樹(共同通信配信の書評より)
なぜ本作は、この時間と場所でなければならなかったのか? 本格ミステリの手法で、これらの問いにいっささかも揺るがない強固な説得力を見事に持たせたことで、本作はまぎれもなく“戦争ミステリの金字塔”と称えられるべき作品である。
――宇田川拓也(「STORY BOX」書評より)
圧巻は終盤に置かれた犯人の告白だ。その思いもよらぬ“真実”は、戦争が持つ暴力の、別の一面を見せつける。
――讀賣新聞エンターテインメント小説月評より
毎日出版文化賞についての情報はこちらをご覧ください。
https://www.mainichi.co.jp/event/aw/20170627.html
作品名:『いくさの底』
著:古処誠二
定価:本体1,600円+税
発売日:2017年8月8日
体裁:四六判上製
頁数:208頁
発行:株式会社KADOKAWA
http://www.kadokawa.co.jp/product/321706000495/
あらすじ:
「そうです。賀川少尉を殺したのはわたしです」――
第二次世界大戦中期、ビルマの山岳地帯に急拵えの警備隊として配属された賀川少尉一隊。
しかし駐屯当日の夜、何者かの手で少尉に迷いのない一刀が振るわれる。
私怨か、内紛か――。敵性住民が村に潜りこんでいる可能性はないか。
体裁を重んじる軍にあって、少尉の死は徹底して伏され、兵隊と村人の疑心暗鬼は募るばかり。
皆目犯人の見当もつかない中、次なる事件が起こり、騒然となる村人たち。
調べを進めるうちにあぶり出されてきたのは、幾重にも糊塗された過去と、想像以上に根の深いしがらみだった――。
戦争という所業が引き起こす村の分断と人知れず心に宿した復讐の炎。
義侠心と忠誠心の狭間で引き裂かれ、人生をねじ曲げられていく人々の数奇な人生を乾いた筆致で描いた本書は、一貫して人間の本質を見つめ、戦争を描き続けてきた著者だからこそ到達しえた戦争小説の極北。
善悪の彼岸を跳び越えた殺人者の告白が読む者の心を摑んで離さない、衝撃の戦争ミステリ!
古処誠二(こどころ・せいじ)
1970年、福岡県生まれ。高校卒業後、様々な職業を経て、航空自衛隊入隊。2000年4月『UNKNOWN』でメフィスト賞を受賞、小説家デビュー。03年『ルール』、04年『接近』で山本周五郎賞候補。05年『七月七日』、06年『遮断』、08年『敵影』で直木三十五賞候補。10年『線』をはじめとする執筆活動に対して「わたくし、つまりNobody賞」を授けられる。このたび、本作『いくさの底』で毎日出版文化賞〈文学・芸術部門〉受賞。ストイックで寡黙な語り口のなかに、人間の業をまざまざと描き出し、新世代の戦争文学を担う。近著に『中尉』(角川文庫7月刊)。