四人の女性の人生が交錯し、薄紙を剥ぐようにそれぞれの事情が明かされていく——。
精緻に組み立てられた心理サスペンスが高く評価され、
二年ぶりのメフィスト賞受賞作が誕生しました。

──インタビューなどでお顔を出さない、覆面作家としてデビューされたんですね。

宮西:「こういう人が書いているんだ」と先入観を持たれるより、謎にしておいたほうがよいかと思ったんです。

──小説を書き始めてからどれくらい経つのでしょうか。

宮西:大学時代には映画サークルに入っていて、シナリオを書いていました。卒業してから、一人で映画を作るのは難しいけど、小説なら一人でもできるんじゃないかという、少し安易な気持ちもありました。以前、湊かなえさんが「地方に住んでいるとシナリオライターになるのは難しいと言われて作家になった」というようなことを話されていたインタビュー記事を読んだこともあって、じゃあ私も作家かなあ、と。辻村深月さんが大好きで、辻村さんみたいになりたいとも思って、小説を書き始めて一〇年になります。

──デビュー前に一作、メフィスト賞に応募された作品があったんですね。

宮西:一度目に応募した時に、編集のかたに声をかけてもらって。その時に、ミステリとサスペンスの違いとか、具体的なアドバイスをいただきました。そこでジャンルを意識して書いてみたらどうか、と提案されて書いたのが『誰かが見ている』です。

──パートとしてスーパーで働きながら、ブログに嘘の「幸せな育児生活」を書き続けていく主婦の千夏子。年下の夫とのセックスレスに悩む、アパレル店店長の結子。ストレスで過食に走り、恋人との結婚だけが生き甲斐となる保育士の春花。そして、優しい夫とかわいい娘に恵まれ、タワーマンションに暮らす主婦の柚季。四人の女性は境遇も年齢も、将来像も異なりますが、こんなふうに悩んだり、気持ちが揺れ動くこともあるだろうな、と、どの女性にも等しく感情移入して読み進めました。この見事な人物造形は、どのように考えたんでしょうか。

宮西:女性はこうあるべき、とか、輝いていなくてはならない、とか、メディアに無駄にあおられている気がしていました。ひるがえって自分の周りを見てみると、不妊治療をしている友人も、子育てをしている友人も、婚活をしている友人もいます。たとえば婚活している人から見れば、結婚している人は「結婚してるんだからいいじゃない」となるんでしょうけれど、それぞれに悩んでいる。悩みを抱えている女性たちに、どこか希望を与えるような物語にしたかったんです。

書籍

『誰かが見ている』(講談社)

宮西 真冬

定価 1620円(本体1500円+税)

発売日:2017年04月12日

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    書籍

    『小説 野性時代 第165号 2017年8月号』

    小説野性時代編集部

    定価 860円(本体796円+税)

    発売日:2017年07月12日

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