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特集

恐怖ものから脱力系まで緩急自在なモロホシワールド、ここにあり! 諸星大二郎×高橋葉介『夢のあもくん』刊行記念対談


十年来の交友関係と漫画でのやりとり


――アイデア交換をするほどの親交があるお二人ですが、お知り合いになったきっかけは何だったんでしょうか。

高橋:最初に会ったのは、二〇一二年に出た諸星先生の画集『不熟』(河出書房新社)の対談企画でした。

諸星:そうでした。


――よろしければ、その時のお互いの第一印象を教えていただけますか。

高橋:私はいつも、誰かに諸星先生ってどんな人か聞かれた時には「ファンの人ががっかりするほど普通でもないし、思わず引いちゃうほど変でもない。ちょうどいい変な人」って答えています。

諸星:(笑)。

高橋:漫画家になる前は公務員だったと聞いていたので、会う前は資料を集めることや事務的なことに強い、本当に真面目な公務員みたいな人か、そうでなければイっちゃった人かと思っていたんですけど、実際はちょうどよかったです(笑)。

諸星:高橋先生だって結構似たようなもんだよ(笑)。


――諸星さんから見て高橋さんの第一印象は。

諸星:うーん。どうだったろう。

高橋:普通ですよね。

諸星:いや普通ではないはずなんですよ。でもみんな自分は普通だって言うんですよね(笑)。

高橋:その最初の対談のすぐ後に、私の特集本「文藝別冊 総特集高橋葉介」(河出書房新社)の企画でも、一緒に三鷹の森ジブリ美術館に行って、また対談をしました。ジブリ美術館では諸星先生が展示物よりも全体の構造とか、階段の形とかを気に入ってらっしゃったのが印象的でした。ジブリと言えば『風立ちぬ』も一緒に観にいきましたね。

諸星:そんなこともありましたね。

高橋:そういえば諸星先生ってジブリ以外のアニメもよくご覧になるんですか? 自分はジブリアニメからようやくアニメを観始めた感じなので、あんまり観ているほうではないんですが。

諸星:よくというほどじゃないですけど、録画デッキが自動的に新番組を録画するので、全部は観ないけど、そこからたまに「何か面白いのないかな?」って観ています。


――お二人が最近観た中で面白いアニメはありましたか。

高橋:私が観たのでは『平家物語』が面白かったですね。あとは何かあったかな……。三十過ぎのおっさんが異世界で美少女に転生するっていう、よくわからない話も観ましたが(笑)。

諸星:僕は放送の一回目だけを観ることが多いのですが、面白そうだと続けて観ることもあります。よくわからないと言えば、登場する女の子たちが全員いつでもブルマーというアニメを観たことがあります(笑)。


――そういえば、この対談を始める前にお二人は古いB級映画のDVDを交換してらっしゃいましたが、よく貸し借りされているんですか?

高橋:最初の対談でお会いした時に、話のタネになるかと思って大島渚が監督した白土三平の『忍者武芸帳』のDVDを持っていって、それをお貸ししてからずっとこんなことをしていますね。

諸星:それが最初でしたっけ。

高橋:それで、返してもらった時に、諸星先生がDVDに登場人物の「影丸」の似顔絵を描いてくれたんですよ。

諸星:人のものに落書きしちゃだめですよね(笑)。

高橋:いいんですいいんです。でもその後もよく描いてますよね(笑)。


――そういう交流が高じて、本日お持ちいただいた直筆イラスト入りの扇子や団扇まで贈り合っているというわけなんですね。


(上)諸星氏の直筆イラスト入り扇子と(下)高橋氏の直筆イラスト入り団扇。十年来の交流の中で贈り合ったという、ファンには垂涎ものの一品だ。


高橋:そうなんですよ。あとはFAXを送る時に、ついでにちょこっと漫画を添えるというのをお互いが繰り返していたら、連続ものの漫画みたいになっちゃったってこともありました。

諸星:なんて馬鹿なことをしてるんでしょうね(笑)。

高橋:あの漫画は恥ずかしいから見せないようにしましょうね。

諸星:そうですね(笑)。最近はコロナ禍で会っていなかったせいもあって、FAXのやりとりもしていないんですけど。


――最近はお会いになっていなかったんですね。

高橋:ここ二年くらいは全然会っていませんでしたね。

諸星:コロナが始まってからはね。

高橋:それで去年の暮れに、やっと飲めるようになったかなって久しぶりに会いました。でもまた東京でも感染者が増えて、状況が厳しくなって……。


――電話などのやりとりは。

高橋:そっちのほうも途絶えちゃっていましたね、自然に。

諸星:FAXも特に用件がないと送りづらいですからね。変な漫画だけ描いて送るのもどうかなと思いますし(笑)。


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