『キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編』発売記念! 井上純一×田中圭一トークイベントレポート【前編】
消費税が10%になり、我々の生活はどう変わるのか?
井上純一さんと田中圭一さんが、経済から漫画まで、幅広い視野で語りつくします!
先月、書泉ブックタワーで井上純一さんと田中圭一さんのトークイベントが開催されました。
お二人のトークに、会場は大爆笑! 「萌え国債」を発行すれば、国債は売れる!? いやいや、国債が売れないわけではなく、発行しないから買いたくても買えない……など、独自の視点から語られる経済論は、一読の価値ありです。
消費税で景気が悪くなる!?
――消費税が10%になり、私たちの生活はどう変わるのか。今日はお二人に経済について、漫画についてざっくばらんにお話しいただきたいと思います。
井上:消費税に関しては田中さんの『うつヌケ』も関係あるんですよ。間違いなく鬱の人が増えるから。
田中:若い人が心配ですね。いま、大学で教えているんですけど、卒業して就職しても半年くらいで辞めちゃうんですよ。年収どのくらいなの? と聞くと、196万。
井上:えっ、ウソ!
田中:京都の小さい会社ですけど。その学生は東北の出身で、大学から京都。とてもじゃないけど、実家から通わないと生活できない。京都の中小企業では普通の年収だそうなんです。若い人の年収が低いって言われているけど、東京以外の都市はとくに厳しい。
井上:それはマズいなあ。消費税が上がることが決定してから、もうすでに経済の地盤沈下が始まっている。この前、お会いした森永康平さん(経済アナリスト)が言っていたんですけど、ベンチャー企業がお金を引っ張れなくなっているそうなんですよ。前は、AI、ビッグデータといえばお金が集まってきた。リアルな話、テレビとかででかい顔してるベンチャー起業家が1年後、路頭に迷っているかもしれない。
「ざまあみさらせ」じゃないんですよ! 日本のベンチャーのいいところが海外に買われてるってことなんです。それがもうすでに始まっている。
それは消費税のせいなんですよ。もうすでに景気が悪くなることがわかっているので、出資者が金を出さない。当然雇用もひどいことになるんですよ。
田中:これ以上ひどくなるってことですか。
井上:間違いないですね。今日、おすすめの本を持ってきたんですけど、『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』 (デヴィッド・スタックラー、サンジェイ・バス共著、橘明美・臼井美子訳、草思社)。『キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編』でアイスランドの経済危機の話を描いたんですが、そのアイスランド経済を建て直した経済学者の人が共著で書いた本です。そのなかで、不景気になると人が死ぬと思われているけれどそれは違う。経済政策で死ぬと書いてある。内容はタイトルと少し違っていて、書いてあるのは「経済政策でなぜ人が死ぬのか?」。具体的に言うと、緊縮政策で人が死ぬんです。政府がお金を出さないと人が死ぬ。それだけ。
それでも消費税を上げる理由
田中:お金が社会に回らなくなっちゃうわけですね。
井上:それがこの国にやってくるわけですよ。目の前に来てる。びっくりするくらい経済が悪くなることがわかってるんです。なぜやるんでしょうね?
田中:みんな言ってますけど、日本人って戦争やっていたときと変わっていなくて、このまま進むとマズい、と言いながら誰も止められない。
井上:そこが『キミのお金はどこに消えるのか』で描けなかったことなんですよね。なぜこうなったのか。みんな知りたいじゃないですか。でもね、それを描くとオカルトになっちゃう(笑)。
いくらでも言えますよ。描かなかったですけど。財務省で偉くなる人って、東大法学部卒が多いんですよ。本来は経済の専門家じゃない(笑)。彼らは法律のスペシャリストだから、決められたことは守らなきゃいけないと思ってるんです。たとえば、日本には借金がこれだけあるから返さねばならない。「返さねばならない」となったら疑わない。
もう一つは、財務省はそもそも日本を縮小させたがっているという説ですね。
田中:日本が縮小すると誰がハッピーになるんですか。
井上:それはですね、戦時中に遡るんですよ──って話をすると、オカルトでしょ(笑)! でも、まじめにそう言っている人がいるんです。戦時中に日本は山のように戦時国債を発行した。そうやって集めたお金を軍事費につぎ込んで戦争を拡大していった。
戦後、官僚たちは考えたわけですよ。日本は二度と戦争を起こしてはいけない。だからなるべく国債を発行しないようにしよう。日本は貧乏になればなるほど戦争は起きないから。
田中:それで緊縮財政になる。
井上:日本の景気が上向くと、なるべく日本の経済力を削ぐような政策を取る。そうすれば戦争は起きない──なるほど、と言いたいところなんですが、実際は不景気になると戦争が起こるんですけどね。
戦争をしたことが悪い、じゃなくて、国債が悪い、という面白い現象が起こってる──っていうことも描けるんですけど、そんな漫画はどうなんでしょう。僕は描けないなあ。