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特集

仏教界震撼! 奥深い仏教の謎を戒名探偵が解き明かす! 高殿円『戒名探偵 卒塔婆くん』#3

お墓が大好きだという著者自ら「さすがにこのタイトルはどうかしている……」とつぶやくほど不思議な小説が誕生しました。
まったく「仏教」の知識がないアナタでも楽しめること間違いなしの本作ですが、基礎知識を知っていればより奥深い世界へと旅立てるはず!
『知っておきたいわが家の宗教』『よくわかるお経読本』(以上、角川ソフィア文庫)など、仏教関連の著作が多数ある瓜生中さんにご協力いただいた仏教トリビアコラムを主人公の春馬と外場との対話形式でお送りします。これを読めばあなたもいままでふんわりとしか知らなかったお寺が身近になること間違いなし!

●外場 薫(画像・左)
頭脳明晰、悟り系高校生。好きなものは仏教と和菓子。

●金満 春馬(画像・右)
意識低い系俗物高校生。将来に悩むお年頃。

1.もうすぐお寺が潰れちゃう?


金満:最初でもお金の話をしたけど、そもそも寺の建物自体が木造で、そのへんの家と違ってだれでも建てられるものじゃないし、日本は地震の国だし、保存とかも結構深刻な問題だよね、きっと。

外場:儲かっているお寺もありますが、実際のところ、かなり収支が厳しいお寺も増えてきているようです。そもそも、今の日本のお寺というのは、江戸時代に確立した檀家制度に支えられてきたんです。もともと檀家制度はキリシタン弾圧のために作られた戸籍制度で、これによってすべての日本人は自分が住んでいるところにある菩提寺の檀家になることになりました。以降、日本の寺は葬儀や年忌法要などをすることで収入を得るようになり、財政的に安定することになりました。そして、明治以降もこのシステムは継承され、現在も基本的には寺の多くは檀家制度に支えられているんです。

金満:檀家様々ってわけだ。

外場:しかし、第二次大戦後、都市に人口が集中して核家族化が進んだことなどから、家族や家に対する考え方が大きく変化してきました。それで、先祖供養を基盤にしていた檀家制度にも陰りが見えるようになりました。最近は、お墓は要らないとか、散骨や樹木葬など、先祖代々の墓にはこだわらない人たちも急増していますよね。

金満:あー、聞いたことある。海に散骨してほしい、とか。宇宙葬なんてのも。

外場:檀家が少なくなれば、寺で法要を行う人も減り、お盆やお彼岸でも寺に行かない人が増えてきます。そうなると、お布施などの檀家からの収入も減るというわけです。

金満:人口も減ってるし、そりゃいろいろとあの手この手が必要なわけだ~!!

2.お寺のイメージアップ大作戦!?


外場:いま言ったように、現代の多くのお寺の最大の悩みは、これからも急激に檀家が減っていくということ。どうすれば檀家の減少を食い止められるか、これが現代の住職たちを悩ませている最大の問題なんです。とくにキンマンくんのお兄さん、哲彦住職代理ぐらいの世代から40代ぐらいまで、若い世代が強い危機感を持っていると聞きます。彼らは10年後、20年後にさらに進むであろう檀家離れ、それに伴う収入の減少に頭を痛めているんですね。

金満:うーん、そう聞くとうちの哲彦が「イメージアップ作戦」に真剣になるのもわかるな……。

外場:これから檀家を増やすことは簡単にはできないから、いろんなイベントをやってとにかく寺に人が集まるようにしたらどうか、つまり、これまでの葬儀や年忌法要に寺の収入を頼るのではなく、新たな事業展開をしてお布施や寄進に代わる収入を確保したいと考えている寺社は多いのではないでしょうか。いずれにしても、現代のお寺は今までに経験したことのない問題に直面していることは間違いないでしょう。
実際、あれだけの敷地と木造建築を保護するだけでも、相当大変なことなんですよ。
キミもスネかじりの身なら、フツーに生きますとかいってないで、少しは家業に関心を持つべきだと思いますね。

金満:(あー、急にあらがえない眠気が……)

(了)
>>高殿円『戒名探偵 卒塔婆くん』


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