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特集

世界一危なくて可愛い美少年探偵!? <札幌アンダーソング>完結記念 著者・小路幸也インタヴュー!

 このたび、惜しまれつつ大団円を迎えた小路幸也さんのキャラクター文芸人気シリーズ〈札幌アンダーソング〉。札幌の風景や、警察や市政のリアル描写、「変態」をめぐる事件と、極めてチャーミングな登場人物たちという組み合わせの妙などなどシリーズの魅力は多々あるのですが、何と言っても最大の看板は主人公の春くん。ミステリの歴史上、美形キャラは星の数ほど存在してきましたが、こんなにキュートさとヤバさを兼ね備えた探偵は空前絶後であろうと思われます。春くんの誕生秘話から恋のお相手まで、著者の小路幸也さんにとことん伺いました!

Q1.変態の探偵、というか変態を知る探偵・春くん。小路作品としては、
というよりミステリ界的にも唯一無二の存在と思いますが、どのようにして彼は誕生したのでしょうか。

小路: ホームズにポワロにクイーンに明智小五郎に金田一耕助エトセトラ…… そもそも名探偵って極論すれば皆ある種の〈変態〉だよな、という思いが以前からありまして(^_^;) じゃあ本当のというかセクシャルな意味でも〈変態の探偵〉がいたらおもしろいなー、という単純な発想からでした。 なので、最初に頭の中に描いたのは本編の春くんよりもずっとずっと18禁のヤバい男でしたが自主規制で大人しくなりました。

Q2.春くんにとって、キュウちゃんはどんな存在なのでしょう。

小路: キュウも実は裏設定では、バイセクシャルな人という設定でした。バイというよりは、ちょっとSF的に両性具有のような、 将来は男にも女にも分化できる(萩尾望都先生の『11人いる!』のフロルのような)感じです。 本人はまったく気づいていませんけどね。 そういうところを、春は見抜いていたんですね。だから春にとっては最高に愛しいオモチャを見つけたような感覚です。

Q3.人間のあらゆる感情に興味がつきない、その探求のためにはどんなことでもしてしまう春くんですが、小路さんの中にも(実行するかどうかはともかく)そういう欲望はありますか?

小路: 似たような思いはありますね。僕の理想は〈喫茶店店主の頑固親父〉なんですが、 それはとりもなおさず〈カウンターの中からいろんな人を眺めていたい〉からです。 そもそも小説家になるような人間は皆そうかもしれませんよね。人間を見つめることが好きなんだと思います。

Q4.春くんの中に積み重なっている記憶によって、彼はどんな人間になっているのでしょう。春くんの内部世界が知りたいです。

小路: 彼にとっては〈着替える〉のと同じことになっています。父親の記憶を呼び覚ましたときには〈父親の服に着替えて〉いるのです。 着替えることによってその人になってしまう。舞台役者と同じような感覚かもしれません。 舞台の上ではその役になりきっていながら、その裏側には現在の自分がいるんです。〈憑依型役者〉とも言えるかもしれません。 彼は〈記憶と思い出を身に纏う〉んですね。

Q5.春くんが誰かひとりを真剣に愛する日は来るのでしょうか。来るとしたらそれは、どんな相手なのでしょうか。

小路: 春は全ての感情をニュートラルに俯瞰できるので、そういう意味でひとりの人間を〈愛する〉ことはないです。 もしもあるとしたら、それは春が先祖の記憶を失ったときでしょうか。姉の秋奈が研究しているのもそれです。 秋奈は弟の、志村家の呪いを消し去りたいのです。 もしも春くんが先祖の記憶を失い〈たった一人の春〉になったとき、愛するのはやっぱり二人の姉と似たような女性だと 思いますよ。それぐらい結びつきの深い姉弟ですから。

Q6.札幌とはどんな街ですか? 本作が札幌を舞台に書かれた理由も、教えてください。

小路: 街は人の歴史を纏います。どんなに風景が変わってもそこに積み重なった歴史は消えません。 そういう意味で、札幌は(北海道は)たかが150年程度の歴史しかない街です。 それと同時に、半年近くも雪に閉じこめられる厳しい自然の中にある街です。外で寝たらそのまま凍死する街です(^_^;)。 歴史の浅さ(言い換えれば新しさ)は軽やかさと同義ですが、同時に重く厳しい自然を知っています。 だから、軽やかさと重さが同時に存在している街だと思います。 〈来るものは拒まず、去る者は追わず〉というのは道民気質をよく表す言葉として祖父たちの世代はよく言っていました。 この作品の登場人物も皆そうだと思いますよ。だから書けたのかもしれません。

Q7.登場人物たちにモデルはいますか?

小路: モデルはいません。これに限らず僕の書く小説にはほとんどモデルはいないんですよ。 ただ〈女の子のように可愛らしい男の子〉という意味合いでは『小さな恋のメロディ』の マーク・レスターがいつも僕の頭の中にいます。あとは『ポーの一族』のエドガーとアランですねヽ( ´ー`)ノ

Q8.登場人物たちの中で、小路さんのお気に入りは誰ですか?

小路: うーん、お気に入りですかぁ。キャラという意味合いでは市役所の長崎茂さんですかね(^_^;) ガタイが良くてオネエ言葉を操り頭も良い。どこに持っていってもオッケーですよね。 〈市役所の探偵〉である彼で長編一本書けるような気もします。

Q9.ほんとうに多彩な作風をお持ちの小路さん、毎回作品ごとに新しい試みをされていると思うのですが、今回のシリーズで、チャレンジしたかったことは何でしょうか。

小路: そう思っていただけるのはとても嬉しいのですが、 僕としては、多彩な作風とも毎回新しい試みをしているともまったく思っていないんです。 自分の中にあるものを、新作の度に他の作品となるべく被らないようにひっぱり出しているだけなので。 むしろそうやっても毎回同じようなことしか書けないなー小路幸也は、と、反省しきりです。 ですから〈札幌アンダーソング〉も特に何かをチャレンジしたという思いはないですが、 よく知っている街だけに、登場人物たちがそれぞれ自由に動き回れるように舞台をきっちり整えることが 作者としてはできたかな、と思います。

Q10.読者のみなさん(ファンの方へも、これからお読みになる方へも)へのメッセージをお願いいたします。

小路: 変態を知る探偵が主人公ですから深読みするとけっこうエグかったりヤバかったりするものを扱っているのですが、 それを表に出さずにとことん気軽に楽しめるように描きました。札幌の街の様子はほぼノンフィクションです。 そのあたりと一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。


小路 幸也

北海道出身・在住。広告制作会社を経て、メフィスト賞を受賞した『空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-towm fiction』でデビュー。

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