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特集

「黙示録」二千年の謎に挑む! 暗号小説の名手、中見利男が語る『救世主の条件』創作秘話

角川文庫より発売された『救世主の条件』(上下巻)は、キリストの最大の暗号とされる「ヨハネの黙示録」のなかの一節に秘められた暗号解読に挑む、エンターテインメント小説だ。東西冷戦下の核戦争危機の緊張感のなかで繰り広げられる、壮大なストーリーは一気読み必至の作品。
作家として、そしてジャーナリストとして幅広く活動をしている著者の中見利男氏に、はじめて創作秘話を語ってもらった。

── : はじめに、『救世主の条件』を書かれるきっかけについて教えてください。

中見: 私はこれまで聖書の研究を行ってきたのですが、やはり新約聖書の『ヨハネの黙示録』に記された「666」の暗号が気になっていました。2000年間正解が出ないのは、もしかするとこれまでのアプローチ以外にも別の道があるのではないかと考えたのです。  そこで聖書に敬意を払いつつ、『ここに知恵が必要である』という聖句をキーワードに中見版として解読に挑んでみたのです。そのうえで悪魔の条件が666ならば、その逆を調べれば救世主の条件が判明するだろうと執筆を開始したのです。

── : 東西冷戦下のアメリカとソ連が舞台となっていますが、その時代を選ばれた理由はなんでしょうか。

中見: 第2次世界大戦は原爆をB‐29から投下するという戦術でしたが、一転してキューバ危機は米ソ両国が、ミサイル搭載型の核兵器を保有していた時代です。空を飛び交う核ミサイルによって地球を一瞬にして削り落とすほど危険な時代に突入したのです。その時代こそ、人類史上最大の危機であり、666が登場してもおかしくはない時代だと直観しました。しかも凶弾に倒れた若きケネディ大統領がこの人類史上最大の危機に核のボタンを押せる立場にあったのです。しかもソ連の核ミサイルは、まさにアメリカの喉笛に位置するキューバからアメリカ本土に向けられていたわけです。この危機をケネディ大統領は、いかにして乗り越えたのか。これを知ることは将来の日本と日本人にとっても非常に重要なことではないかと考えたのです。

── : 物語には実在した人物も出てきますが、創作の人物達もとても魅力的です。中見さんのなかで思い入れのある人物はありますか?

中見: どの作家もそうでしょうが、すべての登場人物に思い入れはあると思います。しかし書き始めると意外な人物が勝手に活躍を始めることがあります。たとえば、私の時代暗号小説「友海、蒼海」シリーズの火薬師 友海は当初、脇役で、相手の要塞に爆薬を仕掛けるために一人犠牲になる予定でした。つまり第1作だけの登場人物だったのです。ところが、彼はまるで私を操るかのように見事に敵の要塞から脱出して生還してみせたあと、ついにはすべての作品に主役として躍り出ることになったのです。  本作で言えば、ディビッド博士がそれに当たります。彼は物語の後半から登場するとケネディ大統領やロバート、エドワードという兄弟たちを最初は敵視し、罵声を浴びせ、そして激励をし、物語を激しく揺さぶってみせました。面白い人物です。

── : 暗号の着想で苦労されたところなどありましたか。

中見: 通常の暗号は規則正しいルールに基づいて解読されます。その点は私も『暗号解読を楽しむ』という拙著の中でもご紹介しています。しかし暗号小説はその壁を打ち砕いても良いのではないかと考えます。なぜなら、ミケランジェロにしてもダ・ヴィンチにしても絵画に暗号を封印しましたが、それは時のローマ教皇にバレないためです。  本来、暗号とは批判、密命などの機密情報、あるいは呪いの言葉の封印など、多岐にわたる機能があるのです。それを落とし込んだ小説は「こじつけ」という言葉が必ず飛んできます。その批判を恐れることなく、あえて小説に落とし込んでいくチャレンジ精神こそが最も大事なのです。ですからエンターテインメントとしてお読みいただくことをお勧めいたします。

── : 聖書の解説書を数多く手掛けられてますが、中見さんにとって聖書のなかでの最大の謎はなんでしょう。

中見: 最大の謎はおよそ2000年もの間に語り継がれ、読み継がれてきた聖書のなかに666のようにまだ解読が難しい謎がある点です。たとえば、それは唯一の神が、何故「我々に似せて人を造ろう」と人間を創造されたのか。  つまり普通に考えれば、神は複数いらっしゃったということです。また一説によれば、イエス・キリストには兄弟がおり、しかもその中のユダ・トマスがイエスの双子だったという説もあります。このように読めば読むほど関心がわくのも聖書であり、いわば聖書の謎ではないでしょうか。日本人も今や世界の常識となっている聖書をご一読されることをお勧めします。

── : 『救世主の条件』をどのような読者に読んでもらいたいですか。

中見: この小説は2011年版と2018年版の二つのバージョンがあるとお考え下さい。2011年版の単行本と2018年の文庫本は内容が違います。ですから、読み比べていただけるとありがたいですね。  そのうえでいえば、2011年に将来、起こるかもしれない日本の危機に備えてキューバ危機に学ぶことは重要でした。つまり2011年に危機管理エンターテインメント小説の一つとして出版した本が『救世主の条件 キリストの暗号』だったんです。それが2017年から2018年にかけて米朝の間で本当に核戦争の危機が現実のものになろうとしていた。そのことにいささか驚いています。そういう意味でいえば、政治家や官僚、財界の皆さんにも手に取っていただきたいです。

── : 中見さんは、テレビ局に10年、作家・ジャーナリストとして23年間活動されておられます。若い作家志望の皆さんに一言お願いします。

中見: そうですね。これから作家を志望される方に対しましては、あえて申し上げれば、原稿用紙でもPCでも、あなたが向かっている、その手元には宇宙が広がっているのです。どんな小さなバクテリアや粒子の話も、また一方でビッグバンや宇宙戦争のような壮大な話でも、なんでも書ける自由があるのです。テレビ化や映画化を前提に書き上げることはもちろん大事ですが、そうした媒体のフレームを超えて、最初のうちは生活もあって大変かと思いますが、長く続けていくことも大事です。ですから若いときこそ、誰もやっていない世界に向かって、もっと自由に物を書くことにチャレンジしても良いのではないかと思います。また書き手だけではなく出版社の皆さんもこれまでのやり方を変えて、若い作家の皆さんと力を合わせながら共存共栄で、そろそろ出版界にルネッサンスの風を起こしていく時期なのではないかと思います。原点回帰であり革命。そうですね、あえて言えば、書命かくめいが大事ですね(笑)。

── : ありがとうございました。引き続き執筆活動に期待しております。

中見: 本日は、わざわざインタビューまでいただき、ありがとうございました。次回作は医療モノで勝負したいと思います。ご期待ください。

◎カドブンでは、文芸評論家・細谷正充氏による解説を掲載。あわせてお楽しみください。
>>「黙示録」の謎を解明せよ――国際謀略と史実が絡み合うグローバル時代の暗号ミステリ『救世主の条件』


中見 利男

1959年、岡山県生まれ。作家、ジャーナリスト。古代史と暗号をリンクさせた暗号系ミステリの第一人者で、『秀吉の暗号』や『ニュートン極秘文書』などヒット作多数。

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