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レビュー

連ドラも大ヒット!いつも一生懸命な河野悦子が、働くすべての人に元気をくれる『校閲ガール トルネード』

「校閲ガール」を読んだとき、「これは新しいお仕事ドラマとして、イケる」と思いました。そして同時に、「私が絶対ドラマ化したい」とも。
 当時、自分は三十五歳。「ドラマを作りたい」と叫んで日本テレビに入社したにもかかわらず、十年以上情報番組やバラエティ番組を担当して、ようやく念願のドラマ部に異動、いよいよ自分の企画を通さねばと焦っていた時期だったと思います。
 イケると思った理由の一つは「校閲」というちょっと聞きなれない仕事を面白いと思ったから。テレビ業界にも「校正さん」という方がいて、自分も情報系のバラエティ番組を担当していた時にナレーション原稿のチェックをして貰っていたんですが、……正直苦手でした。例えば「世界一大きい◯◯」というナレーションに「世界最大級の○○」と修正の赤が入って戻ってきたりして、その隣に「世界一の◯◯は他の国にもあるようです」とご丁寧にメモがついていたりするんです。こっちとしては「世界一ってドーンと言っちゃいたいのにさ、ちぇっ」って感じです。当時の私は、それを揚げ足をとられているように感じてしまっていて、こんな仕事をしている人って一体どんな気持ちで働いてるんだろうと興味も持っていたので、「校閲」がヒロインのお仕事ドラマというのは、引っ掛かりはあるな、とすぐに思いました。
 でも、きっとそれだけの理由だったら「私が絶対ドラマ化したい」とまでは思わなかったでしょう。この「校閲ガール」を他の誰でもない自分の手でドラマ化したいと強く思ったのは、「河野悦子は私自身だ」と思ったからです。悦子がファッション雑誌を作りたくて景凡社に入社したのに校閲部に配属になり、それでも目の前にある仕事に全力で向き合う姿は、「ドラマを作りたいのに作れなかったあの頃の自分」とピタリと重なりました。「無駄な仕事なんて一つもない、どんな仕事もきっといつかファッション雑誌に異動したときに役に立つよ、だから頑張れ悦子! 負けるな悦子!」やりたいこととやれることの間でもがく悦子を応援しながら、熱くなったのを覚えています。そして思ったのです。……ひょっとして、みんな同じなんじゃないの? 本当にやりたい仕事をやれている人なんて一体どれだけいるんだろう? 大抵の働く人が悦子や自分と同じようにやりたい仕事とは違うところで、それでも「ちゃんと」働いているから、この社会は成り立っているのでは? そう気づいたとき、このドラマは「夢を叶える」とか「みんなが憧れるような職業で大活躍」とは一味違うけど、でもすべての働く人の活力になるような新しいお仕事ドラマになると確信しました。
 宮木先生にはじめてお会いした時も、そんなドラマ化への想いを熱っぽく話したと思います。我が子のように大切な作品を他人に預けること、きっと不安だったと思いますが、「悦子や森尾を色んなところへ連れて行ってください。小説では見せられなかった景色を見せてあげてください」と笑顔で言ってくださり、とても安心しました。そして、お任せしていただけた分、絶対ヒットさせたいと強く思いました。
 そんなこんなで二〇一六年秋に放送した「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」。悦子を演じた石原さとみさんのド派手なファッションで一見ポップな印象のドラマ、でも実は「地味な仕事バンザイ」をテーマにした堅実なお仕事ドラマである……と老若男女多くの視聴者に支持される作品になりました。私もこの作品でエランドールプロデューサー賞なんていうたいそう立派な賞までいただいちゃったりして! ありがとうございます! 何より嬉しかったのは、好評につき二時間のスペシャルドラマまで制作できたこと! そうそう、連ドラから一年後、二〇一七年の秋に放送された続編はこの『校閲ガール トルネード』のラスト付近の悦子の台詞を読んだときから構想していたものなんです。

「私、『Lassy』の編集者になるためだけに景凡社に入ったのに、なんで校閲部なんかってずっと思ってたのに、今は女性誌の校閲が楽しくて仕方なくて(中略)やりたい仕事と向いてる仕事が、違ったんです」

 ……なんてビターな結末! でも悦子らしくて素敵だなと思いました。連ドラの最終回で悦子は「いつか『Lassy』に異動してやる!」と吠えて終わりましたが、でもきっとずっとこの子は楽しく校閲をやっているんだろうなと予感させるラストシーンにしました。でも、もしも続編を作れるのなら、その時は悦子が胸を張って「校閲部の河野悦子です!」と言うラストシーンを作りたい、そう思っていたんです。だから、続編を作ったときにようやく本当の最終回を迎えられたとホッとしました。続編のテーマ「夢=天職……じゃなくてもいい」という考え方もまた、お仕事ドラマとして新しいものだったと思います。悦子が校閲の道に進んだように、私自身も「バラエティに戻れ」と言われても大丈夫かもしれない、と思うようにさえなりました。……いや、せっかくなんでもう少しドラマを作りたいですけど(笑)。「校閲ガール」を通して、私は改めて働くことについて色々考えることができました。そういった意味でもとても大切な作品です。

>>宮木あや子『校閲ガール トルネード』
※文庫版の巻末には、著者と石原さとみ氏の対談も収録!


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