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レビュー

家に憑く怪異を鎮めるのは――大工の青年?!『十二国記』の作者が描く優しい恐怖『営繕かるかや怪異譚』

 営繕とは、建物を新築・修繕することである。本書は、その〈修繕〉の方を話の核とした六つの短編で構成されている。タイトルどおり、どのエピソードも住居や場所をめぐる怪異(たん)であり、各話の登場人物たちは種々の怪現象に見舞われ、はっきりと幽霊らしきものを目撃してしまう場合もあるし、もっと恐ろしい異形のものを間近にしてしまう者もいる。
 困惑し、(おび)え、途方にくれる彼らを救う役割を担うのが、「営繕 かるかや」の尾端(おばな)という青年だ。彼は霊能者ではない。僧侶でもない(僧侶の友人はいる)。本人も自分を「大工です」と言う。実際、彼が怪現象への対策として行うのは、あるときは座敷の、あるときはガレージの改修工事だ。施主にはどんな作業をするのか事前に説明し、費用のほども見積もって提示する。百パーセント、大工さんの仕事である。
 それで怪異は鎮まる。少なくとも、各話の登場人物たちがその家に、その場所に(とど)まって生活を続けるには充分なほどに。尾端は除霊したわけではなく、何かを(きよ)めたわけでもない。彼は怪異を排除しない。そもそも、怪異を必ず排除しなければならないものだと考えてはいない。だから、過去の出来事が原因でその建物や場所についた〈(きず)〉の手当てをし、結果として、当事者がその怪異と折り合いをつけられるように計らうだけである。
 怪異という形で立ち現れている時間の積み重ねを、壊して(はら)って断ち切ってしまうのではなく、受容しやすいように直した上で引き継いでいく。これが至極まっとうで現実的なやり方であることは、〈怪異〉を〈不仲〉や〈揉め事〉等のより日常的な言葉に置き換えてみれば、すぐ腑に落ちるだろう。
 絆を大切にするというのは、実はこういうことなのだ。読後に、目が覚めたような気分でそう思う。この作者にしかできない(まれ)な技を目の当たりにした喜びを噛みしめながら。

(讀賣新聞 二〇一五年一月四日付 書評より)


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