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レビュー

研究&研究者への「愛あるツッコミ」が心地いい!

 難解だと思われがちな学問を、エンターテインメント化することは、さまざまな形で試みられている。いわゆる学習マンガは、日本の歴史や宇宙の不思議なんかを、マンガでわかりやすく教えてくれる。また、クイズ番組にも、教育的効果を狙ったものが多数存在する。楽しみながら知識や教養が身に付くのは、素直にありがたい。
 サンキュータツオ『もっとヘンな論文』もその系譜上にある。本書は『ヘンな論文』の続編。個性的な論文の収集をライフワークとする「学者芸人」の著者が、ヘンな論文を紹介しまくっている。
 続編が出せるほどこの世にはヘンな論文があふれている。その事実に驚かれた方もいそうだが、研究の世界というのは、カタくてマジメというわけではなく、けっこう多様である。ちなみにわたしも、日本の少女マンガにおいて女性の労働がどのように描かれているかについて研究しているが、そんな人間にも研究の世界は寛容だ(まぁ、たまに笑われることはあるけど)。

 ただ、ふつうに生活していたら、そうした多様性について知るきっかけはないし、たくさんある論文の中からアタリを引き当てることもできないだろう。でも、大学で教鞭をとる研究者でありながら、漫才コンビのツッコミでもあるサンキュータツオには、それができる。「学者も芸人も、私から見ると自由でタガのはずれたエンターテイナーであることはおなじだ。というか、ほぼおなじ人種だと思っている」……学者≒芸人。この見立てが素晴らしいのは、学者が怖くなくなるところ。偉い人だと思っていた学者との距離が縮まる感じがよいではないか。
 前作でも、公園の土手に座っているカップルを観察した論文とか、おっぱいの揺れとブラのずれに関する論文とか、タイトルの時点でかなり破壊力があったが、今回も一本目から飛ばしている。いきなり「プロ野球選手と結婚するための方法論に関する研究」である。女子アナになる以外の方法だと、球団本拠地近くのクラブでホステスをやるのがいいらしい。バカみたいなんだけど、説得力がある論文だ。

「自分が知りたい、調べずにはいられない、という衝動だけで動いている。しかもそれを知りたい人がシェアできる知見という意味で論文にまとめているのがカッコいい」……ただ面白がるだけでなく、評価すべきは評価する。この「ツッコんで褒めて」の往復運動が、「タツオ流論文の読み方」の基本だ。彼はヘンな論文を笑いのめしたいのではなく、ヘンだが優れた論文に光を当てたいのだ。つまり本書は、研究&研究者に向けて書かれた、彼なりのラブレターなのである。
 最も感動的なのは、「「坊っちゃん」と瀬戸内航路」についての章だ。「かぐや姫のおじいさんは何歳か」「前世の記憶を持つ子ども」といったタイトルに比べると、妙に地味だが、舐めてはいけない。

 夏目漱石『坊っちゃん』のラスト近くに、松山から東京に帰る坊っちゃんのことが書いてあるのだが、これを読んだ論者の山田廸生氏が、じゃあ漱石は当時どうやって松山まで行ったのか?と考え、あらゆる情報を調べ尽くす。そのプロセスが実にスリリングなのだが、そのスリリングさにやられてしまった著者が、山田先生に会いたいと切望するも学会の事務局から「先生は、いまは一年の半分は船の上で過ごされています。それにご高齢なので、これ以上新しく知り合いを作りたいとは思っていないそうです」と返事されてしまうオチがおかしくて仕方ない。さらに「このバッサリ行く感じ、いかにも研究者っぽいな〜」とか思っていると、「後日譚」として、やっぱり山田先生に会えてしまうまさかの展開が待っている。研究への愛が奇跡を起こしたのだ。よかったよかった。

 ここまで書けばもうおわかりだと思うが、本書は学問をエンタメ化した作品の中でも、かなり熱い。熱すぎる。しかし、その熱さが心地よい。サウナみたいなものだと思って読んでみるのがいいんじゃないだろうか。


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