視聴者から募集した初出しの怪談を、怪談師たちが一発撮りで披露する全く新しいコンセプトの番組『初耳怪談』が待望の書籍化!
刊行を記念して、番組レギュラーの吉田猛々さんが推薦した、単行本未収録の短編怪談「蛇の祟り」(投稿者:やし 語り:ナナフシギ 大赤見ノヴ)を特別公開します。
大人気怪談師が恐怖した特選怪談を、どうぞお楽しみください。
(構成:田辺青蛙)
『初耳怪談』未収録の短編怪談 特別公開!
第2弾「蛇の祟り」
蛇の祟り
投稿者:やし
Aさんのお母さんが、お父さんの家に嫁いでからしばらくして、こんな夢を見たそうなんです。
暗い納屋の中に、スーパーの袋くらいの大きさの麻で出来た袋が置いてあって、これ何だろう? と思い、近寄って麻袋の紐をほどいたんです。
中を覗いてみると、そこには黒い蛇がいっぱい入っていて、もぞもぞと蠢いていました。
Aさんのお母さんは驚いて、うわっと麻袋を放り投げると、中から明らかに大きな一匹の蛇が這い出て来て、お母さんの片腕にガブッと嚙みつきました。
そのタイミングで目を覚ましたそうなのですが、なんだか夢とは思えない体験のように感じ、Aさんのお爺さんに相談してみることにしました。
すると、こんな話をしてくれたそうです。
Aさんのお爺さんには兄と弟がいます。野焼きを行った後にどうしたわけか、弟の足が全く動かなくなってしまいました。
足が動かなくなるだけならまだしも、毎日どんどん体調がおかしくなっていき、ついには仕事も出来なくなってしまいました。
医者も原因や治療法を見いだせず匙を投げる状況で、困り果てたAさんのお爺さんたちは、近所で有名な占い師に相談に行くことにしました。
占い師に今までのことを話そうとしたのですが、占い師はAさんのお爺さんを見るなりこう言ったそうです。
「あんたらな、野焼きを行ったやろ。その野焼きを行った笹藪の中になあ、残念ながらあんたらの土地を守っている主がおったらしい。あんたら野焼きする際に逃げ道を作らんかったやろ。これはアカン。地獄の業火に包まれながら子どもたちを守り、怨念渦巻くまなざしで、あんたらを睨んでいる。そんな強烈な力と恨みを持った大蛇がおる」
そうなんです。
Aさんのお母さんが嫁いだ先は、その土地の主である大蛇に祟られてしまっていた家系だったんです。
Aさんのお爺さんは、自分が出来る限りの供養をその大蛇に対し行っていたので、弟さんの足も多少は動くようになり仕事にも復帰できました。
野焼きを行ったその二人自体は命を取られるようなことは無かったんですが、大蛇の祟りはAさんのお父さんに現れたんです。
Aさんのお母さんと出会った頃は全然そんなことは無かったんですが、日に日に性格が暗くなり大酒を浴びるように飲み、飲んだ後は自室に籠って、外には全く出てこなくなったあげく体調を壊してしまい、ある日、亡くなっていました。
大酒を飲んで、お母さん、そしてAさんにも手をあげてしまうようなお父さんだったんですが、お母さんはそんなお父さんを見るたびに、夢に見たあの大蛇のまなざし、蛇の顔を、お父さんに重ねてしまったそうです。
父の葬儀の日、火葬場での出来事です。
火葬している最中、親戚が一同に会した部屋のベランダに、大きな蛇の抜け殻を見つけました。「どうしてこんなところに」と、とても不思議でした。それは蛇1匹をまるまる抜け殻にしたような、怖さと美しさを併せ持っている見事な代物でした。
それを見た母とわたしは「ああ、良かった」と思いました。やっと蛇の祟りから解放されたんだなと何故か感じたんです。
しかし、話はこれで幕を閉じることはありませんでした。
その抜け殻のことを聞きつけた父のいとこの三姉妹は、なんと躍起になってそれを取りに行き、「こんな綺麗な抜け殻はすごい! これはお金が貯まるわ! わたしは頭が欲しい!」など、きゃあきゃあと騒ぎ立てました。「あんたたちはいらないの?」とわたしたちに言い放ち、仲良く三等分にして持ち帰りました。
あんなに「人が恐ろしい」と感じたことはありません。
この後その三姉妹に訪れてしまった更なる不幸、これは皆さんのご想像にお任せします。
作品紹介
書 名:初耳怪談
著 者:テレビ大阪
発売日:2025年03月01日
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