

NEWS
作品紹介
蝶博士・榊史朗によるレポート「人間標本」より抜粋
<レポートに登場する蝶たち>

【1 レテノールモルフォ】
モルフォチョウ科モルフォチョウ属
モルフォチョウの仲間は中南米に60種類ほどいるが、本種のサファイアのような青い金属の輝きは一〇〇メートル先からでも見えるほど強く、モルフォチョウのグループの中で特に美しい。
翅は角度により色が変わり、翅についている鱗粉には青色の色素はないが、この鱗粉には青い光の波長に合わせる仕組みがあり、青い色を出しているように見える。
翅の裏側は地味な色をしており、目玉模様にも、落ち葉や樹皮の模様にも見える。

【2 ヒューイットソンミイロタテハ】
タテハチョウ科ミイロタテハ属
ミイロタテハ属のチョウは、青や黄色、赤やオレンジなど非常に鮮やかで美しい翅をもつ。
ヒューイットソンミイロタテハの幼虫は、麻薬としてよく知られているコカの葉を餌として成長する。そのため、体内に毒を持つ。
目立つ色彩は、自分に毒があることを宣伝するためである。

【3 アカネシロチョウ】
シロチョウ科カザリシロチョウ属
アカネシロチョウは翅裏の基部に赤い紋があり、この種に限らず、カザリシロチョウの仲間は一般に裏面が派手な色や模様で、表面は白と黒の地味なものが多い。
食草はヤドリギ科で、蝶の中でも変わった植物を幼虫の時に食べる。

【4 モンシロチョウ】
シロチョウ科モンシロチョウ属
キャベツ栽培とともに世界に広がった蝶で、キャベツだけでなく菜の花なども食べる。
比較的採集しやすいため、昆虫の生態や生活環を学習する教材としてもよく活用される。
翅は白いが、前翅と後翅の前縁が灰黒色で、さらに前翅の中央には灰黒色の斑はんてん点が二つある。

【5 オオゴマダラ】
タテハチョウ科オオゴマダラ属
ゆっくりと羽ばたき、ふわふわと滑空するような飛び方と翅の模様が、新聞紙が風に舞っているように見えることから、「新聞の蝶」と呼ばれることもある。
雄の成虫の腹部先端には、ヘアペンシルというブラシのような器官がある。マダラチョウ類に共通する器官で、フェロモンを分泌し、雌を引き付ける働きがある。メスを見つけた雄はヘアペンシルを広げて雌の周囲を飛び回る。
【6 マエモンジャコウアゲハ/クロアゲハ】
*マエモンジャコウアゲハ
アゲハチョウ科ジャコウアゲハ属
中米から南米にかけてのみ生息しており、毒を有するため、他のアゲハチョウやシロチョウに擬態されている。
雄の前翅中央部が鮮やかな種が多く、後翅は薄紅色の斑紋を持つ。また、雄の後翅の内側にはアオスジアゲハなどにも見られる白い発香鱗のかたまりのある袋がある。
あまり大きな種はいない。
*クロアゲハ
アゲハチョウ科アゲハチョウ属
表は黒色で、裏もほぼ同様だが、前翅の色彩は表よりも淡くなり、裏には赤斑列がある。
雌は後翅付根の白い線がない。
春は、アゲハチョウよりやや遅れて出現する。
幼虫は柑橘類の葉を食べる。
<蝶の視覚について>

モンシロチョウは紫外線を色として感じることのできる視細胞も持っており、四原色以上の世界を見ることができる。
モンシロチョウの雄の翅は紫外線の色覚「紫外色」を有し、雌雄の紫外線写真を撮ると、雌の翅は白く、雄の翅は赤黒く写る。人間の目には同じようにしか見えないモンシロチョウの雌雄が、紫外線が見える彼らにははっきりと識別できることがわかる。
絵のタンポポは、中央を濃いピンク色、外側を白色に塗ってある。
「僕に見えるタンポポは黄色の一色だし、シロツメクサは白色だよ。でも、蝶にはこう見えている、はずなんだ。文章で書いてあったから、正しく描けているかはわからないけど。人間には見えない紫外線が見えるんだって。」
プロフィール

湊 かなえ(みなと かなえ)
1973年広島県生まれ。2007年「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビュー。同書は、2009年本屋大賞を受賞。12年「望郷、海の星」(『望郷』収録)で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。16年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。18年『贖罪』がエドガー賞ベスト・ペーパーバック・オリジナル部門にノミネートされた。その他の著書に、『Nのために』『母性』『高校入試』『絶唱』『リバース』『未来』『ブロードキャスト』『落日』『カケラ』『ドキュメント』『残照の頂』などがある。