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レビュー

著者の特性を生かした力作

 あらためて、「新宗教の動きを知らねば日本の近代は読み解けない」ことを実感させてくれる著作である。幕末から現代に至るまでの新宗教教団の動きが俯瞰されていると同時に、細かな情報やエピソードが盛り込まれており、広範囲に宗教を見てきた筆者ならではの書だと言える。
 ここで取り上げられる宗教教団は、金光(こんこう)教・天理(てんり)教・大本(おおもと)生長(せいちょう)の家・ひとのみち教団・霊友(れいゆう)会・創価(そうか)学会・エホバの証人、さらには璽光尊(じこうそん)やイエスの方舟に至るまで実に多彩である。また、単に各教団を取り上げるだけではなく、当時の社会情勢や教団間の関係などにも眼を向けている。
 中でも、天理教と創価学会の著述に力が入っていると感じた。昭和13年当時、天理教の信者は総人口の6・4パーセントを占めたという記述に驚く。宗教教団の信者数というのはあまりあてにならないのではあるが、それにしても大変な勢いであったことが推察できる。
 本書では、天理教が仏教や吉田神道から受けた影響への言及や、いくつかある中山みきの教祖伝を対照するなどの考察がなされており、そのあたりは読み応えがある。115歳まで生きるはずの教祖が、90歳で亡くなった事態に対する教団の意味づけの経緯は、フェスティンガーたちが『予言がはずれるとき』で提唱した認知的不協和の事例を見るようである。
 後半は創価学会に多くのページを割いているが、他教団と比較することを通して創価学会の特性を浮かび上がらせていく手法が興味深い。たとえば、幕末から明治期にかけての「教祖の神(がか)り」を出発点とした神道系新宗教の流れ、既成仏教の信仰が土台となった仏教系新宗教の流れ、そして第三の流れとして創価学会を捉えつつ、「対立的敵対的態度」「伝統的な祖先崇拝の否定」「宿命転換の主張」などを挙げてこの教団の異質性を論じている。
 このように、各教団のつながりや影響をおさえていくところに本書の魅力がある。これだけ各系統を語りながら、わかりやすく書くのは容易ではない。おそらく本書の構成(各宗教をどう配置すればよいのか)にも腐心したことだろう。煩瑣(はんさ)になりがちな情報群を、時系列と教団別とを組み合わせることで整理している。神道系新宗教を天理教タイプと大本教タイプに分類する見方にも切れ味があると思う。新宗教教団への弾圧に関しても、ついつい一様に語りがちなところを、大本・ほんみち・生長の家・創価学会と、それぞれの事情を書き分けている。
 そして、筆者は「新宗教の時代は終焉した」と考えている。かつては地方から都市へと流入してきた人々が新宗教を支えてきた。しかし、もはや社会構造は変わった。新宗教と政治の関係も変貌した。戦後も長く影響が続いていた「新宗教と国家神道体制との関係は、ほとんど消滅しつつある」と言う。
 さらに、「現状においては、自由民主党の政権を、本来は相いれない創価学会と日本会議とが支える構造が成立している」と指摘している。今の政治・経済状況を把握するには、このあたりを見る眼が必要であろう。特に、筆者も述べている通り、最近の宗教右派が日本会議の支柱となっていることに注目が集まっている。生長の家系の人々・念法眞(ねんぽうしん)教・崇教真光(すうきょうまひかり)解脱(げだつ)会・黒住(くろずみ)教・佛所護念(ぶっしょごねん)会・大和(たいわ)教団などと、日本会議とのつながりが取り沙汰されているのである。
 個人的にはひとつひとつの情報の典拠・脚注をつけてもらいたかったと思うが(参考文献や索引は掲載されている)、読みやすいように避けたのかもしれない。いずれにしても、これほど新宗教を全般的に把握できる本はなかなかない。「宗教学概論」のテキストにお薦めの書である。
 それにしても幕末から近代前期において、伝統仏教はずいぶん冬の時代が続いたのだなあと、あらためて思う。近代の日本仏教の思想や言説も、新宗教を抜きにして考察するわけにはいかないのである。


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