平成22年2月22日に
とら、タンタンという2匹の猫が
正式にしまや出版の社員（社猫）に採用され、
彼女たちの入社とともに「癒し課」が新設されました。
猫って、かわいくない顔をしてるときのほうが多い。
猫飼いの実感としてそう思う。
そりゃーさ、まあ、存在はかわいいさ、声もしぐさもかたちも模様も匂いも（うちの黒白の頭はカラメルの匂いがする）100パー自分の都合でしか生きてないとこもかわいいったらかわいいさ、でも。キメ顔のかわいさは一瞬で、あとの大部分は人間には読み取れない、無表情と表情くらいの微妙な顔をしていると思う。かわいくなんかない。でもそれは、飼い主だけが見られる、いちばん愛おしい表情なのだ。微妙すぎて、他の誰にも伝えられないんだけど。
にごたろさんの描く猫には、いつも、そのある種プライベートショット的な瞬間が絶妙に再現されている。『拾い猫のモチャ』シリーズを読むといつも思う。えっこんな表情も、こんな表情も、飼い主じゃないのに見せてもらっていいんでしょうか……すみません……いやあかわいい、かわいいときもかわいくないときも、いや、かわいくないときがむしろかわいい、全部かわいい……そのうちかわいいがゲシュタルト崩壊し、いつまでも読んでしまうのだ。
そんな、猫漫画界のレジェンド・にごたろさんと、クオリティの高い同人誌作りで名高い「しまや出版」さんがタッグを組んだのがこの本だ。東京、下町にあるしまや出版には「癒し課」なる部署がある。そこでは手練れの猫社員たちが、人間どもをもうメロっメロにし、ヒーリングしまくってくれるのだ。なんて夢のような職場……しかしこの職場は一朝一夕に出来上がったわけではない。人間社員たちと、癒し課立ち上げメンバー、とらとタンタンの外猫時代からの、ゆっくりとしたお付き合い。決して無理に迎え入れることなく自然に歩み寄りつつ作られてきた歴史が、年表つきでじっくり語られている。それは、その後の猫社員たちにとっても同様で……だから、写真の猫たちはみんな、のんびり幸せそうに業務に励んでいるのだった。最近ではテレワーク猫（社長のおうち勤務）も登場して、癒し課の業務はどんどん拡大中なのである。ああもうたまらん、転職したい……癒し課のごはん出し＆ブラッシング係1名、募集してませんか？
と、読みながらかわいさにゴロンゴロン転げまわったり、妄想したりと忙しくなっちゃう本なのだが、この素敵な仕事空間を支えているのは、社長の小早川さんをはじめとした人間のみなさんの尽力によるものであることも、忘れず伝えておきたい。ごはんやトイレのお世話やお金はたぶん、大変なカロリーだと思う、動物である以上、思い通りにばかりは過ごしてくれない（思い通りになってくれることなんてほぼない）、病気や、悲しいお別れもある。それでも、人間と、人間でないものたちが、ゆるやかに一緒にいるって素敵なことだ。
日本中のあちこちに、こんな会社があってくれればいい。猫が、もしかしたら犬が、うさぎが、鳥と人間が、楽しく一緒に働けたらいいな。もしかしたら、だけど、それは人間同士でもいいのかもしれない。しまや出版みたいな、お互いがお互いのまま自然に存在できる職場を作ることは、わたしたちの考え方、ふるまい方次第で、きっといつだって可能なのだと思う。
ああ、でもやっぱり職場に猫、いるといいな……リモートワークの後ろで常に繰り広げられる大喧嘩（うちには兄弟猫2匹がいるのです）に辟易してるくせに、つい思ってしまうのだった。
（カドブン季節労働者Ｋ）
書籍紹介
ようこそ！しまや出版癒し課へ
写真 しまや出版漫画 にごたろ
発売日：2023年08月29日
話題の猫社員たち、ついに書籍デビュー！！
東京都足立区、荒川と墨田川に挟まれた場所にある印刷所、しまや出版。そこでは日々、たくさんの社員たちが汗を流して働いています。
そして、そんな社員たちとともに一生懸命働いているのが、「癒し課」所属の「社猫」たち！
会社のために日々頑張る社員たちの癒しとなるため、社猫たちも頑張ってゴロゴロ、スヤスヤ、パクパク…。
癒し課の社猫たちは、かつて保護猫や迷い猫だった子たちがほとんどです。縁あってしまや出版に入社後は、社長もびっくりの大活躍を続けています。
せめて自分たちと関わってくれた猫だけでも救いたい、不幸なめにあってほしくない。そんな優しい気持ちから設立された「しまや出版癒し課」。
癒し課の歴代社猫たちや、設立の歴史、勤務の様子などを秘蔵の写真と描き下ろし漫画でお届けします。
「拾い猫のモチャ」シリーズでおなじみのにごたろ先生が描く、再現度200％のかわいすぎる社猫イラスト＆漫画も必見です！
詳細：https://www.kadokawa.co.jp/product/322202000825/
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