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試し読み

【最終回間近!山田孝之×菅田将暉W主演ドラマ】小説第2弾『dele2』試し読み③

山田孝之×菅田将暉のW主演、そしてハイクオリティな映像と展開で話題沸騰中のドラマ『dele(テレビ朝日系毎週金曜よる11:15~ ※一部地域を除く)。最終回が迫る中、小説版1作目の試し読み公開につづいて、2作目の試し読みも実施します! 小説の著者は、ドラマ原案と3話分の脚本を担当したベストセラー作家の本多孝好。ドラマとは異なるオリジナルストーリーに注目!
>>試し読み第2回へ
 
 

「英明は」
 そこで相手は小さく息を吐いた。
「亡くなりました。私、母親です。横田ユウコといいます」
 子供を亡くしたばかりの母親に噓をつくのは忍びなかったが、他にどうしようもなかった。
「俺、友達なんですけど、横田さんが亡くなったって、え? いつです?」
「一昨日、池袋の道で倒れて、病院に運ばれまして、その日のうちに。連絡がありまして、私だけこちらにきて、家に連れて帰りよるところです。今、船を待っておって」
 息子の死で気が動転しているのか、ひどく気落ちしているのか。話が今ひとつ要領を得なかった。イントネーションに強い癖があったが、どこの方言なのかは祐太郎にはわからなかった。
「あの、船っていうと」
「島への船です。ああ、もうきよるようです」
 依頼人はどこかの地方の島の出身だった。一昨日、路上で倒れて病院に運ばれたが、その日のうちに死亡した。連絡が実家に行き、母親だけが上京して、息子の死を確認し、今、遺体とともに実家に向かっている。そういうことだろうと見当をつけた。息子の遺体とともに旅をしている母親の心中を思った。
「葬儀は内々で済ませます。また、改めてご連絡いたします」
 ごめんくだっしゃい、と電話を切られそうになり、祐太郎は慌てて声を上げた。
「あの、DVD。俺、横田さんに、DVDを貸したんです。記念で撮った映像が入っているやつで、こんなときにごめんなさい、どうしても返して欲しいんです。横田さんのパソコン、ありませんか? 横田さん、DVDはパソコンで見てたから、そこに入れっぱなしじゃないかと思うんです」
 圭司にも聞かせようと、祐太郎はスピーカー通話にした。
「パソコンですか。パソコンのことは、わからんです。部屋に、あるのかもしれません」
 息子のことを冷静に話せるほどには、感情がまだ落ち着いていないのだろう。言葉の間に感情を鎮めようとするかのような間が入った。長く会話を続けたくないという気持ちも、言葉の端々に滲んでいた。申し訳ないとは思ったが、祐太郎は無遠慮な人間を装って、会話を続けた。
「ええっと、部屋っていうと……」
「英明が住んどった目白めじろの部屋です。いろいろ急だったので、そのままにしてあります。ソウスケが整理すると言っとるんで、見つかったら、連絡します」
 新しい名前が出てきた。
「ソウスケ」
「ソウスケです。弟の」
 知っていることをあらかじめ期待しているような言い方だった。横田英明にはソウスケという弟がいて、その弟も上京していたということだろう。
「ああ、横田さんの弟さんの、ソウスケくん。ああ、はい、はい」
「ご存じですかね。そしたら、ソウスケから連絡させますので」
 また電話を切られそうになり、祐太郎は再び声を上げた。
「ああ、いや、ソウスケくんのことは知らないです。横田さんから名前を聞いたことがあるだけで。あ、DVDはひょっとしたら郵便受けに入っているかもしれません。前に一度、そうやって、ものをやり取りしたことがあったんです。横田さんが俺に渡したい荷物を郵便受けに入れておいて、それを俺が取りに行って、みたいな。郵便受けの開け方は知ってるんで、確認してみていいですかね」
「それは、ええ、どうぞ」
「横田さんの部屋って、あれですよね、目白の……」
「ヴェルデ目白というマンションです。どうぞ、ご自由になさってくだっしゃい。それでは、失礼します。ごめんくだっしゃい」
 これ以上の会話は酷だろう。電話が切られるのに任せようと、祐太郎は口を開かなかった。が、母親は電話を切らなかった。
「真柴さんでしたかね」
 一度切りかけてから、思い直したような間だった。
「はい。真柴です」
「英明の友達だったんですね?」
 胸の疼きをこらえて、祐太郎はスマホに向かって何度も頷いた。
「はい。友達でした」
「ありがとうございます。友達でおってくだっしゃって。あの子、こっちでは友達なんて、さっぱり」
 ぐすりとはなをすする音がした。
「気の優しい、言いたいことも言えん子だったもんで、軽う見られるばっかりで」
 友人として、故人をたたえるような言葉をつけ足したかったが、何も言えなかった。
「ずっといい思い出だけ、持っとってやってくだっしゃい」
 電話が切れた。
「ずいぶん、動揺してるな」とパソコンを操作しながら圭司が言った。
「子供が突然死んだんだ。無理もないよ」
 電話アプリを閉じて、祐太郎は深く息を吐いた。
「いい思い出だけ、か。何か悪いことがあったってことか?」
「そこまで深い意味はないんじゃない?」
 少し考え、圭司は首を振った。
「まあ、いい。今、お前のスマホにマンションの場所を送っておいた」
「わかった。取りあえず、行ってくる」

(第4回へつづく)
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>>本多孝好『dele2』 書籍詳細ページ


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