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連載

河﨑秋子の羊飼い日記 vol.13

【連載第13回】河﨑秋子の羊飼い日記「骨まで推せる」

河﨑秋子の羊飼い日記

北海道の東、海辺の町で羊を飼いながら小説を書く河﨑秋子さん。そのワイルドでラブリーな日々をご自身で撮られた写真と共にお届けします!
>>【連載第12回】河﨑秋子の羊飼い日記「今こそ楽しんだらいいっしょや北海道!」

 マンガ骨、というのを皆さんご存じだろうか。そう、マンガやアニメなどでよく見る両端にゴツゴツがついた、ワンコまっしぐら系の骨だ。ただし、犬がいくら肉食動物とはいっても骨の種類によっては食べさせてはいけないものがある。代表的なものがニワトリの骨で、フライドチキンを食べた後に残った骨は愛犬には絶対に与えてはいけない。割れた時の破片が針状になり、胃の中を刺しかねないからだ。
 その点、羊の骨は犬に与えてもいい骨とされている。実際に割ってみると分かるが、あまり鋭角に割れないのだ。もちろん与え過ぎはよくないものの(消化吸収に悪い)、少量であれば実に喜んでガジガジし、咬み割っては中から出てきた骨髄をベロベロと舐めつくす。人に飼い慣らされる前の犬はこうやって獲物を文字通り骨の髄まで大事に栄養にしていたんだなあと、非常に説得力のある観察ができる。

意外と淡泊な反応の犬もいる

 さて、外で繋ぎ飼いをし、時には飼い主のお供でムリヤリ山野を歩かされるうちの犬たちは羊の骨にも鹿の骨にも慣れて「え、骨? うんまあ貰っとく。ありがとう」という淡白な反応だが(実につまらない)、生まれてから死ぬまで屋内で暮らし、まさに人間のように生活しているお座敷犬に見たこともないマンガ骨を与えるとどうだろうか? 疑問に思い、以前試したことがある。
 実験対象は知人のラブラドールレトリバー。黒くなめらかな毛並みが美しいお嬢様である。飼い主あてに羊肉を送った際に、『愛犬にあげてください』とメモを添えて羊の大腿骨を同梱しておいた。さて、ワイルドな獣骨を前にしたお嬢様の反応やいかに。
【以下、飼い主からの電話】
『もうね、すごかったよ! 荷物開ける前から隣でスタンバイしてて、骨あげるとすぐにそのまま二階で自分のハウスに閉じこもって出て来なくなっちゃった。あんな姿初めて見た!』
 羊飼いとしてはイエス! と快哉を叫びたくなる、お手本のようなリアクションである。そんなわけで、愛犬家の皆さま、愛するワンちゃんのいつもと違うワイルドな姿が見たくなったら、羊骨を与えてみることをご提案する。どうせなら羊の骨付き肉をドカンと購入して、飼い主も愛犬も楽しめるディナーはいかがだろう。家族の絆も愛犬との絆も強くなること間違いない!(※ただし、人間も犬も食べすぎた際の責任は負いかねます)


河﨑秋子(かわさき・あきこ)
羊飼い。1979年北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒。大学卒業後、ニュージーランドにて緬羊飼育技術を1年間学んだ後、自宅で酪農従業員をしつつ緬羊(めんよう)を飼育・出荷。
2012年『北夷風人』北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。『颶風(ぐふう)の王』では三浦綾子文学賞、2015年度JRA賞馬事文化賞を受賞。


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