怠惰な俺が謎のJCと出会って副業を株式上場させちゃった話

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第三章 絶好調、そして暗転
1 1円買収で出版事業を承継する
告白すれば、おれは広告モデルに違和感を感じてきた。おれたちのサイトの価値と、広告は無関係だからだ。広告に、売り上げ以上の醍醐味を、おれは感じていなかったのだ。
ノベルビレッジの醍醐味は、物語を作って発表の場を求めている人と、新しい物語を探している人との出会いを演出することだ。そこには多様な出会いがある。いい作品が投稿され、そこにビビッドな反応が生まれるのを目撃するのは楽しかった。パブリッシャーとしての役割を担えるなら、その喜びは倍加するだろうなと思っていた。端的に言えば、小説好きのおれとしては〝編集〟という仕事へのあこがれがあった。しかし、おれも江川も大沢も、本づくりの知識はゼロだ。まして出版の販売会社(取次というらしい)や印刷・製本会社との取り引き経験もないから、ハナから諦めていたのだ。だからごこたいちゃんの提案はおれには願ったり叶ったりだった。
弱小とはいえ「楽園舎ライト文庫」というブランドまで、おまけに付いてくるとはな。
ノベルビレッジは、1円で楽園舎の株式を取得しこれを吸収合併した。楽園舎は、『オーガスト戦記』をはじめとする「楽園舎ライト文庫」が売れ始め債務超過から脱しつつあり、わずかな資産を売却することで借金も相殺した。人とブランド、それから取引先をノベルビレッジに引き継いだ。社名は株式会社ノベルビレッジのまま。楽園舎という社名は、文庫のレーベル名「楽園舎ライト文庫」の中に残ればいいというのが、オーナーの意向だった。
オーナーは河原崎文枝さんという。会計士が本職の女性だ。楽園舎は彼女の兄が創業した会社だったらしいが、創業者が亡くなり、遺言で会社のすべての株を引き継いだのだという。そのあたりの事情はおれには分からない。しかし文枝さんは会計士の仕事が忙しく、おっさんを社長に据え事業を任せた。交渉の矢面にはいつもおっさんが立ったから、文枝さんとおれたちとは会わずじまいだった。彼女は新会社の役職にはつかないが、再出発のはなむけとして、彼女から200万円の増資の申し入れがあった。亡くなった兄が熱望した〝事業承継〟を見守りたい、ということだった。おれたちは喜んでこれを受け入れた。これを機におれと江川と大沢も100万円ずつ足して資本金を1000万円とした。
新しいノベルビレッジは、投稿サイトの運営に出版事業を加えることになった。今後の新規事業計画には、電子出版事業への進出、さらにマンガの投稿サイトとマンガの新レーベル立ち上げが含まれていた。
これまで紙の出版社だった楽園舎だけでは電子出版事業はできないから、おれたちと統合することによって電子出版を新たに手掛けたいというのがおっさんの事業計画の柱だった。マンガへの進出はごこたいちゃんのアイデアで、アルバイトでいいからその立ち上げに参加したい、新生ノベルビレッジで働きたいとのことだった。全員大歓迎だった。
これを機に、社長のおれ以外役職も何もなかったものを、江川が専務取締役に、おっさんと大沢が取締役に就任した。総員11名(+女子高生バイト1人)の新生ノベルビレッジの船出だった。