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連載

新井素子「絶対猫から動かない」 vol.1

【カドブン連載第1回 新井素子「絶対猫から動かない」】繰り返す夢から脱出できるか? 大人のための冒険ホラー!#33-1

新井素子「絶対猫から動かない」


これまでのあらすじ

ある日、地震で地下鉄が緊急停止し、乗客の一人が陥った昏睡が夢の中に結界を作りだした。異変に気づいた大原夢路は、現実世界で乗客の村雨や中学生の渚らと出会い、結界を破ろうとするも果たせない。看護師・市川も仲間に加え、夢路たちは結界を作った三春と対峙する。三春を倒そうと動く市川たちだが、制止を聞かず三春に近づいた中学生・真理亜の発した言葉が、三春の動きを止めた。

   三春(承前)

 いつだったか。
 どこだったか。
 もう、すでに、よく、わからない。
 正しい言葉で言えば、「覚えていない」っていうことになるんじゃないかと思う。
 うん。
 もう、すでに、〝覚えていない〟程の昔。以前。いや……あるいは、時間的にそんなに以前ではないのかも知れない、けれど、はるが、自分で自分のことを抑圧して、〝覚えていない〟ことにしてしまった、いつか。いや……あるいは、〝時間〟なんてものを超越してしまっている、過去ですらないのかも知れない、そんな、いつか。
 どこかに、三春は、いた。
 そして、その場所には、三春を始め、〝妖怪〟って言われる、そんな仲間が、なんか沢山いたような気も、する。いや、沢山ったって、せいぜいが二十体から三十体くらいなんだけれど……三春のような存在が、集まること、それ自体が、とても珍しいことだったような……そんな覚えがある。
「どう考えても我々の存在はおかしい。つらつら考えるに……我々のような生き物が存在するのは、おかしいのではないか。人間の言うところの〝生物学的〟な意味において……あり得ないとしか言えない」
 この集まりで、最初に発言したのは、妙に理屈っぽい、鬼の誰かだった。その〝鬼〟の誰か、どうやら三春にしてみれば、かなり親しい妖怪のひとりだったような気もするのだが……今の三春には、おぼろげな彼の記憶しかない。
「うん。だよね」
 非常に軽く、この鬼の台詞せりふを受けたのが、おそらくは、この〝集まり〟を呼びかけた、誰か。とても軽く、鬼の台詞を受けているから、そんなふうには見えないんだけれど、おそらくは、この〝誰か〟の提案で、この集まりが開かれたはず
「みんなに集まってもらったのはね、最近、みんなが、そう思っているから」
 ほら、やっぱり。こんな台詞を言うってことは、この〝誰か〟が、みんなを集めたんだ。


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最新号 2019年11月号

10月10日 配信

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