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連載

櫛木理宇「虜囚の犬」 vol.48

【連載小説】凶悪犯を殺したのは「女の子みたいな美少年」? 胸を胸を抉るラストが待ち受ける、衝撃のミステリ。 櫛木理宇「虜囚の犬」#8-12

櫛木理宇「虜囚の犬」

※本記事は連載小説です。

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 放課後になってすぐ、スマートフォンを確認した。
 やはり、未尋からの着信はなかった。
 海斗はがっかりしながら学校を出て、あてどもなくバスに乗りこんだ。まっすぐ家に帰るのが業腹だった。
 ──街で、未尋を探そう。
 ただ待っているより、そのほうが会える確率が高い気がした。あの未尋が、まさか家に閉じこもりきりとは思えない。
 たとえ道で出くわして無視されたとしても、それはそれだと思った。遠くからでも、顔を見たかった。
 海斗は繁華街でバスを降りた。
 ほんの一週間ばかり来なかっただけなのに、ひどくよそよそしく感じた。陽光の照りかえしがきつい。立ち並ぶ消費者金融のATM。英会話塾やファストフードの看板を並べた雑居ビル。ネットカフェ。昼間から営業している居酒屋。あらためて見ると、なにもかもが雑多で下品だった。
 海斗は歩きだした。
 足は自然と、かつて未尋と過ごした店へと向かう。ファミレス。カラオケボックス。つぶれたスーパーの元廃棄物置き場。
 未尋はどこにもいなかった。海斗はコンビニに向かった。顔見知りの店員がアルコールを売ってくれる、例のコンビニだ。歩きながらうなじの汗を拭った。
 ふと足を止めた。
 十メートルほど先に、知った顔を見つけたからだ。ずっと以前に、未尋が「もろにネグられてるよなあ」と笑い、ドッグフードを食わせた女児であった。
 女児の前に、男がしゃがみこんでいる。目線を合わせ、スマートフォンの画面を見せてなにごとか尋ねている。
 変質者かな、と海斗は思った。
 でも身なりがしっかりしているし、ロリコンの変態にしては堂々としている。べつだん女児を守る気持ちはなかった。なんとはなし海斗はその場に立って、遠くから彼らを眺めた。
 視線を感じたのか、男が海斗を振りかえる。
 なぜか、海斗はぎくりとした。
 一瞬、男がひどく未尋に似て見えたのだ。色白の細面。中性的で整った顔立ち。二十年後の未尋はあんな大人になっているかもしれない──。そんなふうに思わせる男だった。
 海斗はきびすを返した。急いでその場を立ち去った。
 理由はわからない。わからないが、あの男がいやだった。耳のそばで、鼓動がやけにどくどくと鳴っている。

#8-13へつづく
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