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連載

矢月秀作「プラチナゴールド」 vol.15

【連載小説】彩川の意外な一面が──。 特殊犯罪に挑む二人の女性刑事の活躍。 矢月秀作「プラチナゴールド」#4-3

矢月秀作「プラチナゴールド」

※本記事は連載小説です。
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 午後からの取り調べも順調に進んだ。
 午後はつばきも取調室に詰めていたが、安谷が無理やりしゃべらされているという雰囲気はなかった。
 むしろ、自分から進んで話している様子さえ見受けられる。
 りおもリラックスした感じで、時折、雑談を交えながら事情を訊いていく。
 まるで、長年付き合っている異性の友達のような空気感だった。
 午後三時半ごろ、取り調べは少し早めに終わった。
 りおは手元にあった用紙を整え、安谷を正視した。
「安谷さん。知らなかったとはいえ、罪に問われるとは思いますが、きっちりと反省して、罪を償って、社会復帰してくださいね」
「そうだな」
 安谷は自嘲した。
「世間は冷たいものだけど、ちゃんと生きていれば認めてくれる人は必ず現われます。我慢しなきゃいけないことも多いけど、自分のためと思ってがんばってください」
「わかったよ。ありがとう」
 安谷は素直に礼を言い、笑顔をにじませた。
 留置場担当の警察官が入ってきた。安谷の両手首に手錠をかけ、腰に捕縄を回して、部屋から連れ出す。
 つばきは取調室を出て、安谷を追いかけた。
「ちょっと待って」
 廊下で呼び止める。警察官と安谷がまった。
「ちょっといいかな?」
「何?」
 安谷はつばきを睨んだ。
「あんた、ずいぶん素直に彩川と話をしてたけど、なんで?」
「なんでって、訊かれたことに答えてただけじゃねえか」
「そうじゃなくて、なぜ、友達みたいに話してたの? 怖かったから素直に話した?」
「ちげーよ。まあ、最初はビビったけど」
 安谷は苦笑し、思い出すように斜め上に顔を向けた。
「なんだろなあ。なんか、わかってくれそうっていうか、似たようなニオイがするっていうか……」
「似てる?」
「いや、あんな女の子が俺に似てるわけねえんだけど」
 安谷がつばきを見やる。
「言わねえでくれよ。また、キレられるとたまんねえから」
「言わないよ」
 つばきが笑う。
「あ、これは言っといてよ。不細工とか言って悪かった。あんた、めっちゃかわいいよって」
「自分で言えば?」
「不細工という言葉を出した途端に、また、やられそうだから」
 心なしか、安谷がりおの話をする時は、優しい顔になっている気がする。
 立ち話をしていると、廊下にぼさぼさ頭の女性が姿を見せた。
「あー、いたいた」
 蘭子だった。タブレットを手にしている。蘭子はつばきを認め、歩み寄ってきた。手錠をかけられている安谷に目を向ける。
「金髪。あんた、こないだ吉祥寺で捕まった人?」
「だったら、悪いかよ」
 蘭子のぞんざいな口ぶりに気色ばむ。
「もう時間?」
 つばきを見やる。
「まだ少し大丈夫だけど」
「よかった。ちょっと取調室に戻って」
 蘭子が安谷の腕をつかむ。
「なんだよ!」
 安谷は怒鳴り、体を振って手を払った。男性警察官が肩を握って制する。
 蘭子は気にするそぶりも見せず、取調室へ入った。
 つばきは安谷の二の腕を軽く叩いた。
「悪いね。あいつ、あまり人付き合いがうまくないんだよ。すぐに終わると思うから、戻って」
「何もしゃべらねえぞ」
「黙秘する権利はあるから、好きにして」
 つばきが促す。
 男性警察官に肩を押された安谷は、渋々、取調室へ戻った。
 記録係の制服警官とメモの整理をしていたりおは、次々と入ってくるつばきたちを見て、きょとんとしていた。
「どうしたんですか?」
「こいつが安谷に話があるんだって」
 蘭子を目で指す。

▶#4-4へつづく
◎第 4 回の全文は「カドブンノベル」2020年10月号でお楽しみいただけます!


「カドブンノベル」2020年10月号

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