menu
menu

連載

夢枕 獏「蠱毒の城――月の船――」 vol.18

【連載小説】遣唐使・井真成が、生死を賭けた試練に挑む! 真成に託された役目とは果たして――。夢枕獏「蠱毒の城――月の船――」#91〈後編〉

夢枕 獏「蠱毒の城――月の船――」

※本記事は連載小説です。

(三)

 どれほどの権力を手に入れようと、どれほどの金を持っていようと、それで、老いと死をまぬがれることはできない。
 始皇帝と、ていの物語は、はっきりとそれを示している。
 しかし、それでも、人は老いぬことを願ってしまう。
 不死を求めてしまう。
 権力を握ると、人は愚かになる。どのような名君であれ、例外はない。歴史はそれを証明している。
 それは、人であれば、当然のことであるのかもしれない。

十九章 旅する死者

海漫漫 戒求仙也   白楽天
海漫漫     直下無底旁無辺
雲濤煙浪最深処 人伝中有三神山
山上多生不死薬 服之羽化為天仙
秦皇漢武信此語 方士年年采薬去
蓬萊今古但聞名 煙水茫茫無覓処
海漫漫 風浩浩 眼穿不見蓬萊島
 
 
君看驪山頂上茂陵頭
畢竟悲風吹蔓草
何況玄元聖祖五千言
不言薬不言仙
不言白日昇青天

海漫漫 仙を求むるを戒むるなり   白楽天
海漫漫たり
直下底無く かたわら辺無し
うんとうえんろう 最深のところ
人は伝う中にさんしんざん有り
山上多く不死の薬を生じ
之を服すれば羽化して天仙とると
しんこうかん このを信じ
方士年年薬をりて去る
蓬萊今古だ名を聞くのみ
煙水ぼうぼうとしてもとむる処無し
海漫漫たり
風浩浩たり
まなこ穿うがたんとするも蓬萊島を見ず
(あえ)
どうなんかんじょ 
じょふくぶんせい (きょうたん)
じょうげんたいいつ (むなし)
よ ざんの頂上 りようほとり
ひつきよう 悲風まんそうを吹く
何ぞいわんや げんげん聖祖の五千言
薬を言わず仙を言わず
白日青天に昇るを言わざるをや

(一)

 早朝の、出発であった。
 まだ、朝露にれている草の上に、しんせいは立っている。
 他に、共に立っているのは──
 椿ちんれい
 こううんちよう
 もうてんらい
 ぼうらん
 はんよう
 でんたいけん
 さる
 とうゆうしよう
 おうぶんめい
 もん
 おう
 真成を合わせてこの十二名が、城内で行なわれた〝どく〟の生き残りであった。
 他は──
 しゆん
 ちんはんれい
 とうせい
 はくえいしん
 あとは兵士が三十三名。
 総勢で四十九名である。
 馬が用意されているのは、杜子春、陳範礼、蘇東成、白英信──の四名であった。
 他の四十五名は、であった。
 他に、馬のく荷馬車が十二台。
 この荷馬車に、食料、水、天幕など、その他の荷が載せられたのである。
 目的地は、告げられなかった。
 そこへゆく理由も、かかる日数も知らされなかった。
 白馬に乗った杜子春が、
「ゆくぞ」
 そう言って、前に出た。
 そして、その後に、陳範礼、蘇東成、白英信の乗った馬が続き、真成たちと兵士たちがさらにその後から続いたのである。

第91回につづく
◎第 90 回全文は「カドブンノベル」2020年7月号でお楽しみいただけます!


「カドブンノベル」2020年7月号

「カドブンノベル」2020年7月号


関連書籍

MAGAZINES

カドブンノベル

最新号
2020年7月号

6月10日 配信

怪と幽

最新号
Vol.004

4月28日 発売

小説 野性時代

第200号
2020年7月号

6月11日 発売

ランキング

アクセスランキング

新着コンテンツ

TOP