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連載

深沢潮「翡翠色の海へうたう」 vol.21

【連載小説】シズコとして、私は新たな人生を生きていく。深沢潮「翡翠色の海へうたう」#6-3

深沢潮「翡翠色の海へうたう」

※本記事は連載小説です。

>>前話を読む

 目が覚めて気づくと、わたしは、白と黒の縦じまの着物を羽織って横になっていた。
 なんだろう、この服は。
 キクさんにもらった着物はどこにいったのだろう。
 わたしは焦ってからだを起こす。キンジョーを探したが、見当たらない。
「どうしたんですか」
 看護婦が近づいてきたが、なにもしゃべることができない。わたしは、着物をつかんでひっぱり、看護婦に見せる。
「ああ、着物は捨てました。焦げてぼろぼろで、汚れてもいたので。それは、洗い立てで清潔ですよ」
 捨てた? あのキクさんの着物を?
 なんてひどいことをするのだろう。
 こんなものは、いらない。
 わたしは、喉の奥から声を精一杯絞り出すが、荒い息が漏れるだけだった。諦めて、次は着物を脱ごうと試みる。
 看護婦は、慌ててわたしの腕を押さえる。
「大丈夫ですか? もしかして、この着物が気に食わないんですか?」
 わたしは看護婦の手を振り払った。その勢いで彼女はしりもちをつく。
 自由になったわたしは、寝台から立ち上がって着物を脱ぎ捨てると、包帯を巻いただけの姿で出口を目指した。
 キクさんの着物を探しに行かなければ。
「だれかー。だれかー。止めてくださいっー」
 看護婦が叫ぶ。
 ただちに敵の男が駆けてきて、出口に達しそうなわたしを羽交い締めにした。抵抗するが、力の差は歴然で、どうにもならない。そのやりとりは、豚小屋での出来事を想起させた。わたしは敵の男の腕の中で、からだを硬くする。
 さっき診てくれた医師も来て、わたしの腕にふたたび注射針を刺す。こんどは、瞬く間に意識が遠のいていく。
 覚醒したら、わたしは縦じまの着物を着せられ、両手首、両足首を拘束され、寝台に縛り付けられていた。まったく身動きがとれない。そんなわたしを見てキンジョーは涙ぐんでいる。
 翌日には病棟を移された。どうやらわたしは頭がおかしいと判断されたらしい。拘束は解かれたが、看護婦が四六時中見張っている。キンジョーの姿はなく、まわりにいるのは、明らかに尋常には見えないひとびとだった。うわごとをつぶやいたり、はいかいしたり、にやにやと笑っている。
 わたしは、縦じまの着物を羽織った姿で、寝台に仰向けになっている。そして、テントの張られた天井をひたすら見つめていた。
 キクさんや仲間の女たちとともにうたった歌をおもう。

  아리랑 아리랑 아라리요
 아리랑고개로 넘어간다
 나를 버리고 가시는 님은
 십리도 못 가서 발병난다

 아리랑 아리랑 아라리요
 아리랑 고개로 넘어간다
 청천하늘엔 별도 많고
 우리네 가슴엔 꿈도 많다

 아리랑 아리랑 아라리요
 아리랑 고개로 넘어간다
 저기 저 산이 백두산이라지
 동지 섣달에도 꽃만 핀다

 十日後、もう危険な行動はないだろう、やけどの症状も快方に向かっている、と医師から判断されたわたしは、小屋に戻る許可をもらえた。
「傷が完全に乾いたら、包帯もとれる。あと少しだから、ちゃんと治療に通いなさいね」
 医者が視線を合わせて念を押すように言ったが、わたしは目をそらしてしまった。
「はい、ちゃんと連れてきます。先生」
 診察に立ちあったキンジョーがぺこぺこしている。
 病院のテントから出て掘立小屋を目指して歩いていると、死体を運んでいるところに遭遇した。まだ小さな子どもだ。やせ細ってあまりにも痛々しく、目がくぎけになってしまう。
「飢えて死んだんだろうね。かわいそうに。せっかく戦場で生き延びたのに、ここで死ぬなんてね」
 キンジョーは、はあっー、と嘆くように息を吐いた。
「収容者は増えるばっかりで、食べていくのが大変だ。それに、あっちにいたときよりも、マラリアも、そりゃあ、もう、増えてね。どんどん死んでいく。ツルコさんもマラリアにかかった。熱が高くてね。いま、病院にいる」
 わたしは思わず立ち止まった。
 ツルコがマラリア? 彼女は死んでしまうのだろうか。
 彼女のひとのよさそうな丸顔と大きな瞳が目に浮かぶ。やさしく肩を抱いてくれたときの掌のぬくもりが蘇る。
 シズコだと思い込んでいたからとはいえ、ツルコはわたしを大事にしてくれた。優しくしてくれた。
 もうこれ以上、わたしから、ささやかな支えを奪わないでほしい。
「さ、暑いから早く行こう」
 キンジョーに促され、ふたたび歩き始めるが、一歩一歩が重くてのろくなる。
「実は、話があるんだ」
 キンジョーは前を向いていて、私の方を見ていない。彼は、言いにくいことを口にするときに、わたしから目をそらす。
「あんたは、そのね。そろそろ、ね。チョーセナーの女たちがいる収容所の方に……」
 とうとうこのときがやってきた。わたしは、キンジョーに捨てられるのだ。
 やけどが治りそうだからなのか。この女は頭がおかしいと、うんざりしてしまったのだろうか。
 絶望やら悲しみやら諦めやらが胸にうずまく。自然とうなだれてしまい、歩調がさらに鈍くなる。
「包帯がとれたら、シズコじゃないって、ばれるだろうからね。ツルコさんはたぶん気づいていた。私に、『シズコちゃんはあんなに背が高かったかね』と言ったことがある。小さいころから、シズコを見ていたからね」
 わたしは耳を疑った。
 信じられない。
 ツルコはわたしがシズコでないと知っていながら、あんなに良くしてくれたのか。
 なんてあたたかい心の持ち主なのだろうか。ツルコのやさしさに触れられただけでも、いままで生き延びたがあったのかもしれない。
「だけど、みんながツルコさんみたいじゃないからね。チョーセナーだと知れたら、あんたが、つらい思いをするんじゃないかって思ってね。だから、ここにいるよりは、チョーセナーの仲間がいるところに行ったほうがいいんじゃないかね」
 兵隊にガマを出て行くように命じられた島のひとびとが、奥に入ろうとするわたしたちをにらんでいたことを思い出した。
 島のひとびとは、友軍の兵隊たちにさんざんひどい目にあわされた。だから、自分の意思ではないにしろ、兵隊たちと一緒にいたわたしは、みんなから恨まれ、ふくしゆうされても仕方ないのだ。そうでなくても、寺の近くで年端もいかない少年にまで小石をぶつけられたように、男たちにさんざん汚された半島の女は、蔑まれ、疎んじられるに違いない。そしてきっと、このままだと、わたしをかくまったキンジョーにも迷惑をかけてしまうのだろう。
 わたしは仲間の女たちがいる収容所に行くべきなのだ。たとえ、どんな境遇が待っていようとも。
 歩みを完全に止めると、キンジョーも立ち止まって、こちらを見つめてきた。わたしはその視線を受け、小さくうなずく。
 つかのまの沈黙が流れる。真夏の太陽が容赦なく照り付け、ふたりの影を濃く映し出していた。
「だけどね」
 キンジョーが口を開いた。
「もし、もし、ね」
 そこで言葉を区切り、ひとつせきばらいをする。
「あんたがね、もし、私を嫌いじゃないなら……このまま一緒にいよう」
 一緒にいようって、どういう意味だろう。仲間の女たちがいる収容所に行くように勧めたのに、矛盾しているではないか。
 わたしは首を大きくかしげた。そのため、やけどの部分がひきつれて痛い。
「私はね。収容所を出られた後は、知り合いのいないところに行くつもりさ。家族が死んでしまったっていうのに、ここに残ったって、かえって寂しいからね」
 そこで、わたしの肩にそっと手を置く。
「あんたを実の娘みたいに思っている。死んだシズコの分も、あんたを大事にしたいのさ」
 浅黒い顔でほほ笑むと、皺が深くなる。
「どうだね。ここから出て、わたしとふたりで生きないかね? 親子として」
 とっくにれたはずの涙がこみあげてきて、目の前のキンジョーの笑顔がにじんで見える。わたしは、キンジョーの手に自分の手を重ね、首が痛むのも構わずなんども深くうなずいた。

 わたしが薄い布団をかけなおすと、キンジョーは、世話をかけてすまないね、と張りのない声で言った。頰がこけ、土色の顔は、瞳だけがぎらぎらとしている。
「私はもうだめだね」
 わたしは首を横に強く振り、布団の中のキンジョーの掌を握った。骨ばって冷たいその手触りに、胸がかきむしられるかのようだ。せめて励ましの言葉をかけたいのに、口がきけないことが恨めしい。
「私がいなくなったら、シズコは、ひとりでどうやって生きていくのだろうね。心配さ」
 キンジョーがわずかながら掌に力を込め、握り返してきたのが伝わってくる。
「あんたに、謝ることがあるんだ」
 シズコではなく、あんた、と呼ばれたことが気になる。収容所を出て以来、ずっとシズコだったのに。よほど深刻なことなのだろうか。いったい何を謝られるのだろうか。思い当たることはまったくない。
 この五年間、わたしは、キンジョーに養ってもらい、そばにいて話しかけてもらい、大切にしてもらった。むしろ感謝することばかりだ。この恩を返さなければと思っている。
「あのとき、収容所からあんたを連れて逃げてしまったが、あれは、私が間違っていた……」
 苦しそうに息を継いでいるのを見て、話さなくていい、と伝えたかった。わたしは、キンジョーと暮らしてきてよかったと思っているのだから、この先は聞かなくてもいい。
「チョーセナーの女たちを見たって男と、道路工事の仕事で一緒だったことがあってね。その男から……収容所にいたチョーセナーは……女も男も、アメリカーが秋ごろには朝鮮に帰した、って聞いたのさ」
 わたしは、キンジョーの言っていることが理解できず、首を傾げた。するとキンジョーは、すうーっと大きく息を吸って、つまり、と続ける。
「あんたは……私のせいで……国に帰れなかったのさ」
 なんということだ。
 わたしは、キンジョーとつないでいた手を、すっと引っ込めた。
「申し訳ない……ほんとうに申し訳ない。あのときは、チョーセナーの女たちがいる収容所に送ったら、あんたがまたひどい仕打ちを受けるんじゃないかって思ったのさ」
 キンジョーの眼のふちが赤くなっていて、そこから涙がこぼれ落ちている。
「あんたに言ってなかったが、いま、朝鮮は南北に分かれてチョーセナー同士が戦っている。そこにアメリカーも加わっていて、ここの基地から兵士が行く……戦争だよ……だから……いま戻ろうったって、無理……なのさ」
 せっかく日本から解放されたのにわたしの故郷は、なぜ戦場になってしまったのだろうか。しかも、朝鮮人同士が戦っているという。さらにはアメリカーまでもが。彼らはなんのために、誰と戦うのか。わたしの国を壊さないでほしい。
 この島が焼き尽くされたさまが想い浮かび、そこに母や弟が逃げまわる姿が重なる。
 泣きながら、すまない、すまない、と繰り返し謝るキンジョーに対して、怒りの感情はじんもなかった。わたしは、ただひたすらむなしかった。果てしなく悲しかった。
 キンジョーに、ふたたび布団をかけ、とん、とん、とん、とん、と布団の上からその肩をなだめるように叩いた。
「許してくれるのかね?」
 わたしは、キンジョーと目を合わせ、ゆっくりとうなずいた。
 キンジョーには、なにも非はない。良かれと思ってしてくれただけだ。
「ありがとう、シズコ……いや、シズコじゃないね。あんたには、ちゃんとチョーセナーの名前があるのに。勝手に娘のシズコにしてしまって、悪かったね。国には本物の家族だっているだろうに……まったく、私は自分勝手な人間さ」
 そう言うと、ため息を吐き、目を閉じた。わたしは、キンジョーの傍らでしばらく布団を一定の調子で静かに叩いていた。
 寝息をたてているキンジョーを見ていると、ずいぶん老けたと、改めて思う。わたしは、その浅黒い顔を眺めながら、収容所を抜け出てからの、キンジョーとの日々をふりかえる。

 ふたりで森の中をさまよった。まだあどけない顔の少年兵に遭遇して逃げたり、遠くで銃声を聞いたりしたが、戦況はまったく知る由もなく、わたしたちは、米軍と日本兵、双方に見つからないように隠れ続けた。同じように森に潜む民間人も見かけたが、互いに干渉しなかった。
 食べるのに苦労し、草花のみならず、カエルにかたつむり、ときには虫までも、なんでも口に入れた。キンジョーもわたしも、たびたび腹を壊し、やせ細っていった。そのうちキンジョーが熱を出してふらふらになり、とうとう歩けなくなってしまった。マラリアにかかったようだった。しかし、どうしようもなく、木のふもとに寝かせ、水を与えてやり過ごすしかなかった。下がったかと思うとまた高熱がぶりかえし、意識がはっきりしなくなるほど悪くなったが、キンジョーはなんとか持ちこたえて回復した。すると、すこしして、こんどはわたしが高熱に見舞われたが、幸いに、わたしはそれほど重くならなかった。
 森から出て、洞窟や空き家などを転々としていたが、海岸で米兵に見つかった。そのとき暦はすでに十月で、日本が戦争に負け、アメリカになったと知った。わたしたちは帰村するように命じられ、収容されることなくすぐに放免された。
 キンジョーは海の近くの丘の中腹に、バラックの家を建て、わたしと生活を始めた。彼は米軍の仕事を得て、飛行場を整備したり、道路工事をしたりといった肉体労働で日銭をかせいだ。
 やけどの跡が頭、顔、首、とケロイド状に残ったわたしは、人目を気にして家からほとんど出なかったが、ときどきそばにある峠まで行き、海を眺めた。そこから見える景色は、偶然にも、小さな島の峠から見た景色とよく似ていた。そして故郷の海の眺望とも近かった。それだけありふれた景色なのかもしれない。
 わたしは家事を担った。白米に和え物、それに焼いたり煮たりした豚肉程度のわたしの料理を、キンジョーは文句ひとつ言わず食べてくれた。買い物は彼の役目で、市場でトウガラシをみつけると気を利かせて買ってきたが、キンジョー自身は辛い味付けは苦手のようで、無理して食べているように見えた。また、米軍から流れたレーションという携帯糧食を手に入れてくることもあった。ロウ引きされた箱の中には、肉、ビスケットの缶詰、チーズ、ジャム、チョコレートバー、粉末ジュースなどが入っていた。これら未知の食べ物は、最初こそ戸惑ったものの、すぐに気に入り、そうとなった。ときにはコーラも買って帰ってきた。わたしもキンジョーも、コーラが大好きだった。
 またキンジョーは紺地に白の絣柄の着物を手に入れてきてくれた。わたしはそれを毎日のように身に着けた。

 ふたりで森の中をさまよった。まだあどけない顔の少年兵に遭遇して逃げたり、遠くで銃声を聞いたりしたが、戦況はまったく知る由もなく、わたしたちは、米軍と日本兵、双方に見つからないように隠れ続けた。同じように森に潜む民間人も見かけたが、互いに干渉しなかった。
 食べるのに苦労し、草花のみならず、カエルにかたつむり、ときには虫までも、なんでも口に入れた。キンジョーもわたしも、たびたび腹を壊し、やせ細っていった。そのうちキンジョーが熱を出してふらふらになり、とうとう歩けなくなってしまった。マラリアにかかったようだった。しかし、どうしようもなく、木のふもとに寝かせ、水を与えてやり過ごすしかなかった。下がったかと思うとまた高熱がぶりかえし、意識がはっきりしなくなるほど悪くなったが、キンジョーはなんとか持ちこたえて回復した。すると、すこしして、こんどはわたしが高熱に見舞われたが、幸いに、わたしはそれほど重くならなかった。
 森から出て、洞窟や空き家などを転々としていたが、海岸で米兵に見つかった。そのとき暦はすでに十月で、日本が戦争に負け、アメリカになったと知った。わたしたちは帰村するように命じられ、収容されることなくすぐに放免された。
 キンジョーは海の近くの丘の中腹に、バラックの家を建て、わたしと生活を始めた。彼は米軍の仕事を得て、飛行場を整備したり、道路工事をしたりといった肉体労働で日銭をかせいだ。
 やけどの跡が頭、顔、首、とケロイド状に残ったわたしは、人目を気にして家からほとんど出なかったが、ときどきそばにある峠まで行き、海を眺めた。そこから見える景色は、偶然にも、小さな島の峠から見た景色とよく似ていた。そして故郷の海の眺望とも近かった。それだけありふれた景色なのかもしれない。
 わたしは家事を担った。白米に和え物、それに焼いたり煮たりした豚肉程度のわたしの料理を、キンジョーは文句ひとつ言わず食べてくれた。買い物は彼の役目で、市場でトウガラシをみつけると気を利かせて買ってきたが、キンジョー自身は辛い味付けは苦手のようで、無理して食べているように見えた。また、米軍から流れたレーションという携帯糧食を手に入れてくることもあった。ロウ引きされた箱の中には、肉、ビスケットの缶詰、チーズ、ジャム、チョコレートバー、粉末ジュースなどが入っていた。これら未知の食べ物は、最初こそ戸惑ったものの、すぐに気に入り、そうとなった。ときにはコーラも買って帰ってきた。わたしもキンジョーも、コーラが大好きだった。
 またキンジョーは紺地に白の絣柄の着物を手に入れてきてくれた。わたしはそれを毎日のように身に着けた。

「乾杯しましょうか」
 さんの掛け声で、グラスを合わせた。かちん、と気持ちのいい音が食堂に響く。
 グラスは、沖縄の海のように、青と緑のあわいの色が溶け込んだりゆうきゆうガラスでできていた。比嘉さんは泡盛の水割り、私はオリオンビールと、中には異なる飲みものが入っている。
 最初の一杯を飲み干して、テーブルをはさんでほほみあう。
わいさん、泡盛も飲みませんか?」
「ありがとうございます。でも、遠慮しておきます」
「試しに一口だけでもどうです? これ、美味しいですよ。泡盛はお嫌いですか?」
「いえ、そういうわけではないんです。あの、私、それほど強くないから、ビール二本ぐらいがちょうどいいんです。泡盛は強いからすぐに眠くなっちゃいそうですし」
 寝る前に、今日書店で買った書籍に目を通したり、取材のまとめをしたりしようと思っていた。
「河合さん、かなりいけそうに見えますけど」
「よく言われます」
「明日は何時の飛行機ですか?」
「えっと、夕方の六時ごろだったと思います」
「それまで、どこかにいらっしゃるんですか?」
「早く起きて、よみたんまで行ってみようかと思っています。戦跡が多く残っているみたいなので」
「早起きですか。それじゃあ、飲まない方がいいですね」
「はい、また寝坊しないように」
 くすっと笑ったその瞬間、食卓の上のスマートフォンにメールを着信した。視線を走らせ画面を見る。ふかさんからだ。
 こんなに早く返信をくれるなんて。どんな内容なのか、一刻も早く読みたい。
「すみません。ちょっと失礼します。急ぎのメールが来たので」
 そう言ってスマートフォンを手にし、画面をタッチする。
「どうぞどうぞ。じゃあ、私は、ちょっとしたつまみでも探してきます。やっぱり、ないと寂しいですからね」
 比嘉さんが席を立ってキッチンに行った。

#6-4へつづく
◎第6回の全文は「カドブンノベル」2020年12月号でお楽しみいただけます。


「カドブンノベル」2020年12月号

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