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連載

榎田ユウリ「武士とジェントルマン」 vol.21

【連載小説】引きこもり生活からは脱した、武士をやめた青年。英国紳士は、少女と武士の定義について話す。榎田ユウリ「武士とジェントルマン」#5-4

榎田ユウリ「武士とジェントルマン」

※本記事は連載小説です。

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 この日から、隼人の生活は次第にもとに戻っていった。
 まず、翌朝は八時に起きてきた。今までに比べれば遅いが、それでも顔を洗い、髭をり、髪を整えた。自分で切ったため、ひどい有様だった髪は、さらに翌日、商店街の床屋で整えてきた。隼人が髪を切った噂はあっというまに近隣に広がり、ご近所代表でひらさんが「どうしたの?」と私に聞きに来た。隼人は武士をやめると言っています──私はありのままに、そう答えた。平野さんは驚いていたが、なぜ、とは聞かなかった。驚いたあと、少し悲しげな顔になって「そうなのね」とだけ呟き、帰っていった。
 隼人は和装もやめた。
 やめたはいいが……彼は本当に服を持っていなかった。頼孝の言っていたとおりなのだ。来日してまだ半年の私より少ない。半裸でTシャツが乾くのを待っている姿を見て、一枚提供したほどだ。ちなみに恩師が冗談で持たせたラメ入りユニオンジャックのTシャツなのだが、なんの躊躇ためらいもなく着ていた。
 食卓にも顔を出すようになった。
 ルリが毎回呼びに行くからだ。栄子は隼人が武士をやめたことについてはなにも言わず、ただユニオンジャックのTシャツについては「いっそオシャレの域!」と笑っていた。そして変わらず美味しい食事を作ってくれている。
 剣道教室も再開された。ルリはそちらにも参加し、同年代の友達も何人かできたらしい。とくにあきらと気が合うようだ。
「手前の口調を誰もからかわないので、ありがたいです」
 食事の時にそう話してくれた。確かに隼人の教え子たちならば、武士ランゲッジに驚くことはないだろう。隼人が武士をやめるウンヌンについては、子供たちには知らされていない。頼孝が「夏稽古が終わってからにしろ」と言ったようだ。稽古中は剣道着だし、言葉遣いもなかなか変えられない隼人なので、結果的に今までと変わらなく見えるはずである。髪型に関しては、暑いから切ったのかな、程度に思っているらしい。
「将来は立派な武士になりたいと申しましたら、輝殿が、手前ならきっとそうなれると太鼓判をくださり……とても嬉しゅうございました」
「よかったですね。北海道の学校ではからかわれるのですか?」
「最初は変わり者だと言われ……あ、けれど今はみな慣れました。とくに剣道教室の仲間は、よき同輩たちです! ただ、母だけが」
 おやつのイモモチを食べながら、ルリは不意に言葉を止めた。ルリの家から山ほど送られてきたジャガイモで、栄子が作ってくれたのだ。北海道ではメジャーなおやつらしい。
「……母上が?」
 私ではなく隼人が続きを促した。今日は無地の白いTシャツである。ルリは少し困ったように笑みを作り、
「母は、手前が武士らしく振る舞うことがあまり好きではないようです」
 そう答える。なるほど……確かにかなり個性的ではあるので、親としては戸惑うところだろう。隼人の場合はもともと武士の家柄であり、祖父の意向もあったわけだが……と考えたところで、ふと疑問が浮かぶ。
「ルリの家も、昔は武家だったのですか?」
「いえ、当家はもともと開拓農民でございましたが……その、親戚に、武士がいて」
「なるほど。でも、その親戚では武士修行はできなかったのですね?」
 だからここに来たのだろう。そう解釈した私だったが、ルリは「はい」と答えつつも視線を下げてしまう。なにか複雑な事情でもあるのだろうか。
「母上は心配されているのであろう。ルリはまだ子供なのだから」
 隼人の言葉に、ルリの顔が上がる。
「されど隼人様も、幼き頃から武士らしい生活をされておられたかと」
「それが……俺は、男子ゆ……男、だからな」
「女子は武士を目指してはならぬのですか? よもや隼人様が、巴御前ともえごぜんるいをご存じないとは思えませぬ」
「いや、それは……知っているが……」
 いつにないルリの勢いに、隼人はややされていた。恐らく、今まで散々「女の子なのに」と言われてきてへきえきしているのだろう。トモエゴゼンもササキルイも知らない名前だったが、過去に実在した女性の武士と思われる。
「それに、現代武士の役割は地域社会への貢献と、伝統の保持と聞いております。ならばなお、女子にできぬ理由はございませぬ」
「それは……うむ、そうだな。ルリの言うとおりだ」
 隼人は居住まいを正し「愚かなことを言った。すまん」と頭を下げる。その率直な様子にルリは驚き、自分はさらに頭を低くし「おやめください!」と声を上擦らせた。ほとんど土下座なので、声は畳にぶつかって籠もった。
「手前こそ、師に反論するなど、せんえつなことをいたしました。どうかご容赦ください……!」
「いいや、ルリは悪くない」
「されど」
「悪くない。おまえは賢く、真っぐな子だ。よい武士になれる」
 不思議だ。
 隼人はもともと、誰に対しても声の調子をあまり変えない。まして子供に猫なで声を発したりはしない。このセリフもいつもどおり淡々と喋っているだけなのに、そこにはしんさと温かみがある。顔を上げたルリの瞳が潤んでいた。
 けれど、
「俺と違って、きっとなれる」
 そう続いた時、その瞳はたちまち曇ってしまう。
「……隼人様は立派な武士です」
「もう武士ではないし、以前も立派ではなかった」
「そんなことはございません」
 ルリは断固たる声で言う。けれど隼人は、困ったようなあきれたような、あるいはいくぶん迷惑がるような……複雑な笑みを浮かべ、
「すまぬな」
 と謝り、静かにその場を去ってしまった。ルリは膝立ちになり、追おうとしたようだが、結局やめる。とんっ、と再び座ると、やけのように残りのイモモチをむしゃむしゃ食べ始める。実際、やけ食いなのだろう。目は充血し、今にも泣き出しそうだ。
「……ルリは立派な武士になりそうなので」
 私は麦茶の追加をルリのグラスに入れてやりながら、話し始めた。
「日本文化に興味のある外国人の私としては、ぜひ、聞いてみたいのですが」
 ルリはやや俯いたまま、ぱちぱちと瞬きをした。滲んだ涙をどこかに追いやろうとしているのだ。やがてスンと鼻を鳴らすと、「なんでございましょうか」と姿勢を正す。泣き虫だけれど、リカバリーも早い子だ。
「武士の定義についてです」
「ていぎ……」
 十一歳には難しい質問だったろうか。
「武士であるための条件とはなにか、ということです」
 私がそう加えると、コクコクと頷き「ならばわかります」と答える。今まで、隼人や頼孝に聞いてもいまひとつ明確な回答を得られなかったというのに、この少女は迷いのない口調でわかると言いきった。期待してしまう私である。
「素晴らしい。ぜひ聞かせてください」
「はい。武士であるための条件は、自分が武士であることです」
「…………」
 うん、もちろん、それはそうなのだが。
 …………待て。もしや、今ルリはとても哲学的なことを口にしたのではないか? 方法的懐疑を超え、武士たる己を直感によって自明のこととする、デカルト的な……いや、むしろウィリアム・ジェイムズの『信じる意志』を思わせるような……。いやいや、待て、相手は十一歳だ。もっとシンプルな話だろうか。たとえば……。
「ええとですね。武士であるための条件は、自分が武士であること……それは、猫であることの条件は、猫であること……と同じような意味でしょうか……?」
「うーんと……。はい、似ていますが、同じではありませぬ。なぜならば、猫は自分が猫であることを知らないと思うのです」
「そうですね。獣なので」
「されど我らは、自らが武士だとわかっております」
「ふむふむ…………つまり、こうですかね? 自分が武士であるという自覚が、その人を武士にしていると?」
「あ、はい。だいたいそんな感じです」
「では、その『武士であるという自覚』はどこからくるのでしょうか?」
 それが問題なのである。私の質問に、ルリは小首を傾げてしばらく考え、
「ここ、でしょうか」
 と自分の胸のあたりを押さえて言った。
「……心、ですか?」
「はい! そうです、心の奥に、武士たる信念がございます!」
 わかっていただけましたか、とばかりの顔を向けられ、私は微笑んだものの……内心で白旗を揚げかけていた。信念、とルリは言った。つまりbeliefだ。漢字ならば「信じる」と「念じる」、これらは両方とも理性的思考とは対立するものであり、ある種の宗教性すら帯びている。もしくは、その地に長く住まう民族が独自に受け継いできた精神性、と言ってもいい。要は土着の精神、それが武士の魂なのだとしたら、異邦人である私が理解するのは相当に難しい。
 それでも私は、揚げかけた白旗をなんとか下ろせないものかと必死に考え「待って、ちょっと待ってください、ルリ」と髪をかき混ぜる。
「ルリは隼人と違って、もと武家で育ったわけではないのですから、その精神性を無意識に育んだということはないはず……幼い頃から時代劇を見ていたとはいえ、それだけで武士を目指すとも考えにくいですし……ほかにもきっかけがあったはずですよね? 武士になりたい、と思うきっかけが」
「あ、はい。それはございました」
 よかった。きっかけはちゃんとあったらしい。私が「どんな?」と前のめりに聞くと、
「動画にございます」
 と現代っ子らしい返答である。
「ああ、そういえば……現代武士のPR動画を見たと……」
「いえ。その動画とは別なのです。手前が武士を志したのは……それよりもっと古い、個人の方が撮った動画を見つけたからです」
「個人の? どんな?」
「立派な少年剣士の動画です。初めて見た時のことをよく覚えております。それは……それはもう…………」
 ルリは視線を宙に浮かせ、小さな手をそわそわと動かした。どうやらふさわしい言葉を探しているようだ。だが、彼女の感動を正確に伝える語が見つからなかったらしい。やや悔しげに、それでも感情を込めて、
「チョーかっこよかったのです!」
 と力説した。小さな武士の「チョー」はなんだか新鮮である。
「なるほど。どなたなのです?」
「それはご容赦を。なにぶん個人情報ゆえ」
 きっぱり拒まれ、私は内心でおやおやと思った。少年剣士、か。ルリはその動画の少年に、ときめきを感じたのかもしれない。初恋と言ってもいいのだろう。心惹かれた相手と同一の存在になりたい──その発想は不自然ではない。同じことをすることで、相手との距離が近くなったように感じるからだ。その少年剣士の存在によって、ルリは武士を志した……なるほど、あり得る。ただし、そういったときめきは一過性である場合も多い。ルリが実際に剣術を習い、武士言葉を通し、今もこうして小さな武士であり続けているのはたいしたものだ。実に意志の強い子である。
「時に、アンソニー様に伺いたいのですが」
 今度はルリが私に問う。考えてみると、ふたりだけでこうしてたいするのは初めてだ。私は姿勢を正した。相手が小学生だろうと、対話ダイアログは真剣にするのが流儀である。
「なんでしょう」
「ヨーロッパには騎士道なるものがあると聞きおよびます」
「キシドウ。……ええ、はい、chivalry……ありますね」
「それはいかなるものなのでしょうか。武士道と似ているところはあるのでしょうか? 以前から、ずっと気になっていたのです」
 うーん、と私は軽くうなった。
「騎士道といっても、時代によってずいぶん違っていてですね……もともとは中世に、キリスト教の影響を受けて生まれたものなのですが……しかし当時の騎士がみな騎士道の精神を持っていたわけではなく、もともと腕力自慢の乱暴者も多かったでしょうし、いや、だからこそ荒くれ者をコントロールするルールが必要だったわけで……。最初の十字軍crusadeが成功し、騎士の地位が上がったとされているわけですが……その後はかの有名な『アーサー王伝説Arthurian legend』のような、文学が……いわゆるレディに忠誠を誓うというロマンチシズム……しかしあれは文学であり……」
「アンソニー殿、申しわけございませんが」
 うめきながら喋る私に、ルリが「よくわかりませぬ」と真顔でダメ出しをしてくれる。それはそうだろう。説明している私自身、要領を得ていない。
「すみません、なにしろ昔のことなので……。ええとですね……ものすごく単純化しますと、武士道と騎士道は、強さとルールを守ること、のふたつを重要視しているところは同じです。でも、違うところもありますね。たとえば、騎士道はキリスト教との関係が強いのです。武士道は……あまり宗教と関係していないですよね?」
 ルリに聞くと、可愛らしく首を傾げ、
「たぶん、ないと思います。それに、様がえいざん延暦寺えんりやくじを焼いたのは有名ですし」
「比叡山は、あの有名な比叡山ですよね。うふ、とは?」
「あ、信長公です」
 そうか……頼孝のご先祖は、お寺を焼いてしまったのか……戦国とは厳しい世だったらしい。もっともそれはどこの国でも同じことだ。ヨーロッパの過去では、キリスト教徒同士が壮絶に殺し合っている。
「騎士道については、残念ながらその程度しかお答えできません」
「はい、ありがとうございます。では、紳士とはどういうものなのですか?」
 おっと、第二弾がきた。
「ジェントルマン、というのですよね? 英国にはたくさんいらっしゃると聞きました。また、栄子様はアンソニー様のことを『まさにジェントルマン』だと。母は以前、武士より紳士のほうがステキじゃない、と申しておりました」
 さて困った。今度は昔のことだからよくわからない、は通用しない。
「アンソニー殿、紳士についてぜひご教授くださいませ」
 ルリの真っ直ぐな視線が私を貫き、痛いほどである。
 紳士、ジェントルマン。子供の頃、父から嫌というほど言われて来た言葉だ。紳士らしく、紳士として、紳士なのだから……。どんなによい言葉、美しい言葉でも、必要以上に繰り返されれば陳腐化は免れない。
「礼儀正しく、取り乱さないこと……でしょうか」
 とりあえず、当たり障りのないところを言っておく。
「礼節と、自らを律する力ですね。武士も同じにござりまする!」
「……あとは、公に対する強い責任感も必要かと……」
「滅私奉公の精神! そこも、武士と一緒です! ならば、武士は紳士であり、紳士は武士と言えるのでしょうか」
 とても嬉しそうに聞くルリに、「いや、それは違う」とは言いにくかった。
「似ている部分もある、ということでしょう。違うところもあると思いますよ」
「どのようなところが違うのですか?」
 うーん、とまた私は考える。武士はそもそも戦闘要員であり、紳士にそういう意味はない……が、かつての貴族は戦場に駆けつけるべしとされていたわけで……それに現代武士はもはや戦闘要員ではなく…………。
「たとえば……紳士の場合、武芸は必ず必要というわけではなく……まあ、スポーツが上手なほうがいいんでしょうが……」
「では紳士はいかような、心身の鍛練を?」
「鍛錬……ええと、パブリックスクールでいえば、盛んなのはラグビー、フットボール、クリケットなど……しかしこれらをしなければ紳士ではない、ということもなく……」
「剣術のようなものは?」
「フェンシングが近いでしょうか。……でも、私はできません」
「女子でも紳士になれまするか?」
「いや、それは無理かと……紳士には男性、という意味も含まれているので……」
「アンソニー様は、紳士としてなにを最も大切にされていますか?」
 どんどん前のめりになっていくルリに、私は惨めにも「ええと」を繰り返していた。
 なにを大切に? 紳士として?
 今までずっと、「武士とはなんぞや」と問いかける立場だったがここにきて逆転だ。日頃まったく意識していない概念に対し、深く追及されるとこういった心持ちになるのか。紳士とはそもそもなんなのだ? 上流階級? それは違う。ブルーカラーにだって紳士は大勢いるだろう。そもそも階級を気にしてしまうあたりどうなのだ。いやだが、英国は今でも階級社会の側面を持っており…………。
「…………私が大切にしているのは」
 礼儀正しいこと。
 容易には取り乱さないこと。
 責任感が強く、リーダーシップがあり、社会の役に立ち、尊敬を受け、家の名を汚すことなく──頭に浮かんでくるのは、かつて父に繰り返された小言ばかりだ。もっとも、途中で父も諦めてしまった。一族の変わり者と認定されてからは、なにも言われなくなった。許されたというより、存在しないかのように扱われた。当然ながら、私はそういう父親のことが嫌いである。思春期の頃は憎んですらいた。けれど肉親としての情がないわけでもないから、いっそうやりづらい。
 広い屋敷に、私の居場所はなかった。
 救いはの存在だった。まったく異なる文化と価値観を携え、魔法のように現れた彼女のおかげで……私がどれだけ救われたことか。
「アンソニー様?」
「……過ちを認めることです」
 これも違う、あれも違うといくつも打ち消していって、残ったのはそんな答だ。
「過ち、間違い、自分の失敗を認め、受け入れられるのが紳士なのだと思います」
 ルリはきょとんとした顔になった。しばらく考えてから、
「ごめんなさい、と素直に言うこと、でしょうか?」
 と聞いてくる。私は微笑み「そうです」と頷いた。まだ子供であるルリにとっての『過ち』は、おそらく私が想定しているものと違うだろうが、そこにずれがあるのは当然だ。
「謝るべき相手がいるなら、そうします。あと、自分の失敗で自分が傷つくこともありますよね? そういう時には自分を許します」
「自分を許してしまって、よいのですか?」
「もちろん反省したあとで」
「ああ、はい。なるほど!」
 ルリは潑剌と頷いた。大人になるとこれがとてつもなく難しいわけだが、今のルリにそれはまだわからないだろうし、わからなくていい。
 私たちは間違える。毎日毎日、間違える。
 わいない間違いもあれば、深刻なものもある。それらひとつひとつを吟味し、省みるなどという生活は不可能に等しい。まるで山に籠もる宗教者だ。だからせめて、見落としてはいけないいくつかだけ、すくい上げたい。自分の間違いと対峙するのは気鬱なことだけれど、それを避けないのが紳士……いや、大人……つまるところ人間としての……。
「……あぁ」
 そうか、と。
 思わず、吐息とともに声がこぼれていた。
 武士だろうと、紳士だろうと、結局のところ『人』なのだ。
『人』は常に揺れ動き、変化していく。反して『定義』は変動があってはならない。両者は正反対の性質を持つのだから、『人』は『定義』しにくい。むしろ、定義すべきではないのかもしれない。騎士が比較的定義しやすかったのは、それがもう過去のものであり、歴史的な記号になっているからだ。けれど隼人たちのような現代武士は同時代性コンテンポラリーな存在である。彼らは今を生き、揺れ動く『人』だ。だからこそ、武士は『定義』しづらい。
「アンソニー様?」
 ひとりで納得していた私に、ルリがげん顔を見せる。ぜひ説明したいところだが、十一歳には退屈だろう。そう思ったところで、玄関から「ただいまぁ」という声が聞こえてきた。栄子だ。同時にドサドサと、多くの荷物を置く音も聞こえる。
「手伝うてまいります!」
 ルリはそう言って一礼し、サアッと風のように出ていった。
 その後ろ姿を見送りながら、私は心の内で礼を述べる。小さな武士は、私に大切なことを教えてくれたのだ。

#5-5へつづく
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