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連載

吉川英梨「新宿特別区警察署 Lの捜査官」 vol.19

【連載小説】新宿二丁目の現場で自殺した無差別殺傷の犯人。その身元に繋がる情報が少しずつ分かってきた。吉川英梨「新宿特別区警察署 Lの捜査官」#5-1

吉川英梨「新宿特別区警察署 Lの捜査官」

※本記事は連載小説です。



前回までのあらすじ

新宿L署に琴音が着任した日、歌舞伎町で青年による母親殺害、二丁目で無差別殺傷が発生。レズビアンである部下の六花の情報綱と知識を駆使した捜査で、母親を殺した尚人は逮捕された。琴音は懸命に署の幹部として振舞うが、夫の敦が指揮下にいるやりにくさや夫婦仲のこじれ、小3の息子の面倒を見切れていないことに苦しむ。一方、現場で自殺した無差別殺傷の犯人はインターセックスで、「クロキサチコ」と彫られたロ紅を持っていたことが判明する。

詳しくは 「この連載の一覧
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第五章

 ことは刑事部屋にある応接スペースに、あつしりつを呼び出した。
 事件から二週間経った、一月も下旬の二十七日、月曜日。パンプスの足先が最も冷えるころだ。
 琴音は令状請求書類を出して、テーブルの上で広げた。
 インターセックスの形成手術の実施例がある都下の病院など、全五十にも及ぶ施設に対する、捜索令状だった。すでに琴音、むらしたとめ署長、ふく管理官の決済印が押してある。
 六花が困惑したように、琴音を見返す。
「何度も言ってる。医者には守秘義務があるし、証言拒絶権がある。こんなの出すだけ無駄だと思うけど?」
 六花は口調が元に戻りつつあった。公務員らしいかつこうをしてきたのも数日だけだ。
「それでもここに手をつけないわけにはいかない。とう、クロキサチコ、ここまで判明した。そして犯人にはインターセックスで性器の形成手術をした痕跡がある。病院を徹底的に叩けば──」
「叩くなんて言い方」
 六花が遮った。敦が口を挟む。
「上の印鑑揃ってるのに、なんでどうばらさんの顔色をうかがうんだよ」
「LGBTの街で起こった事件よ。捜査を広げにくい。風穴をあけられるのは、影響力がある堂原さんしかいない」
 琴音は、六花を見据える。
「あなたは二丁目とL署の架け橋みたいな存在だと思っている。上もそれをよくわかっている。つまり──」
 六花が割り込む。Vサインした両手の指を二度折り曲げて、二重引用符を表現する。皮肉っぽく「LGBT」と口にした。
「──の私が医者を説得すれば、拒絶権を行使されずに情報を開示してもらえると。上は私にそれを期待しているってわけね」
 敦が琴音に尋ねた。
「例の口紅、科捜研や鑑識が精査しているんだろ? なにかわかったことはないのか」
 琴音は科捜研の報告書を示す。
「口紅は、せいどうドヌーブという最古参の化粧品ブランドだった」
 美生堂という大手化粧品会社が昭和二十三年に発売を開始したシリーズだ。
「美生堂に確認したところ、唐草模様のケースは昭和五十年から平成五年まで発売していたらしいの」
 定価は三千円。中身の付け替えが可能で、名入れサービスは発売開始から一年間だけ行っていた。つまり、昭和五十年から五十一年の間のみ、ということだ。敦が目を丸くする。
「四十年以上前? 俺すら生まれてない」
「犯人は十代から二十代前半だから、母親の年代は五十代程度の可能性が高い。だとしても昭和五十年の母親は十歳前後。名入れの口紅を買う年齢じゃない」
「さらにその上の女性──祖母か?」
 敦が腕を組んだ。琴音もうなずく。
「なぜそんな古い口紅をつけたのか、という以前に、なぜ持っていたのか、という謎も出てくる」
 六花が指摘する。
「祖母の遺品だったんじゃない?」
 遺品なら、簡単には捨てられない。大事に保管しておくだろう。
「そう考えると、矛盾点がひとつ解消する」
 犯人は処方薬などの私物をゴミ箱に捨てたのに、口紅だけは化粧台に置いて行った。
「遺品だから、ゴミ箱に捨てる、という行為ができなかったんじゃないかな」
 琴音は補足する。
「ちなみに、美生堂は名入れサービスを百貨店の店頭でしか行っていない。その場合は顧客シートを作成するらしいけど、さすがに四十年以上も前のは残っていないって」
 六花が推理する。
「祖母はクロキサチコという名前だったとして、母親は結婚して『佐藤』という苗字に変わったとか」
「それでジャケットのしゆうは『佐藤』だったのかな」
 敦が納得したが、琴音は首を横に振る。
「スーツはサイズが合っていなかったのよ。他人のものである可能性が高い」
 父親のものだろうか。六花が琴音に尋ねる。
「犯人は小田急線に乗ってきたんだよね? 乗車駅はわかっているの」
「まだよ。確認が済んでいるのは、和泉いずみがわ駅より東の駅と、つるかわ駅からまち駅間。それから、小田急多摩線のながやま駅からから駅間のみ。以上は該当なしだった」
 ずいぶん飛び飛びだな、と敦が指摘する。
「いま挙げた駅は全部、警視庁管内。それ以外は、神奈川県下なのよ」
 神奈川県警の管内にあたるから、根回しをしておかないと、駅の防犯カメラ映像を回収できないのだ。
 現在、上層部が神奈川県警に捜査協力を仰いでいる。時間がかかっていた。神奈川県警側は協力を了承したが、「はいどうぞ」と駅周辺の監視カメラ映像を渡したりはしない。
「こちらで該当箇所の監視カメラ映像を解析するから、犯人のデータを提供してください」
 と返してきたのだ。犯人が神奈川県在住なら、新宿二丁目無差別殺傷という警察史に残る事件の大金星を、警視庁から横取りできる大チャンスというわけだ。
「こちらで解析するから映像をくれ」
「こちらで解析するから情報をくれ」
 警視庁と神奈川県警の間で、このやり取りが続いている。けんせいし合っているのだ。
 琴音は身を乗り出す。
「口紅からはこれ以上、捜査が広がらない。病院に手を付けるしかない。拒絶権を出されても、やるしかない。堂原さんなら、説得し返す力があるでしょ」
「簡単に言う」
 六花は鋭い瞳で、琴音を見た。
「私は、患者の秘密を守りたいという医者の拒絶意思に賛同する。そこをこじ開けたいと思わない。私たちは捜査の過程でもうすでにたくさんの性的マイノリティを傷つけている」
「事件解決のため、仕方がない。市民には警察の捜査に協力する義務がある」
「かといって市民の尊厳を傷つけていいわけがない」
 まあまあ、と敦が間に入った。
「そこは警察の捜査の、永遠のテーマだよね」
 琴音は夫を無視し、六花に言った。
「あなた。なぜ自分がL署の配属なのか、自覚していない」
「自覚している。ビアンだからだよ」
「その特性を捜査に最大限に生かせるのがこの所轄署だからでしょ? だから村下さんはあなたを警視庁にスカウトした。それを自ら放棄するのは裏切りだわ」
「本部が私に期待しているなら、私は私の方法でクロキサチコを突き止める」
 六花はテーブルを叩き、行ってしまった。
 怒っている。

 いけぶくろ駅に到着した。乗客がはける。敦はやまのて線外回り電車に乗っていた。
 一月二十九日、水曜日。敦は六花と共に、LGBT支援団体『ノアウォーク』の事務所へ向かっていた。
 六花が病院回りを拒否したので、性的マイノリティ支援を行う市民団体にターゲットを変更した。インターセックスの犯人がこうした市民団体と接触している可能性があるからだ。だが令状はないので強制力がなく、情報も引き出しにくかった。
 都下には性的マイノリティ支援団体として届け出されているNPOが百件以上もあった。最古参は昭和四十年代に設立されたゲイの権利を求める運動団体だ。新しいものではXジェンダーの認知を広めようとする小さな団体などもあった。
 捜査上面倒なのは、LGBTと社会的弱者の支援がごっちゃになっている団体だ。これから聴取に行く『ノアウォーク』も、主にロストジェネレーション世代の就労支援を行っているが、一部、LGBT支援にも手を出す。東京レインボープライドの協賛もしているので、可能性は低くとも確認に行かなくてはならなかった。
 敦は電車の扉の前に立つ六花の背中を叩いた。座ろうぜ、と。
 六花はちらりと敦をいちべつしたのみで、扉から離れなかった。犯人さ、とふいに言う。
「犯行直前まで、山手線をぐるぐる回ってたじゃん。四両目の三番ドアの、進行方向左側の扉の脇に、じーっと立ってた」
「三周してるんだよな」
 だいたい一周、一時間近くかかる。
「一周目は座っていたらしいよ。目を閉じた状態で。でも二周目からはずっと立ってるの」
 六花はガラスの向こうをにらむ。
「犯人も見たはずだよね、この景色を」
 おおつか駅に到着した。都電荒川線に乗り換える。一両しかない都電は混雑していた。手すりの届かない場所に追いやられかなり揺れる。つかまるところがなかったが、六花はタイトスカートの脚を開き、バランスよく立っている。
 妻の琴音は、電車の中でうまく立てないタイプだ。新婚のころはよく一緒に出勤していて、琴音はいつも敦の腕を必死につかんで、満員電車の揺れをやり過ごしていた。誰もが一目置く優秀な女性警察官に頼られる優越感に、敦は浸っていたものだ。
「こないだぶつかってたな、琴と」
 敦は指摘した。六花が目をらす。
「それとも好みのタイプのお姉さんだから、反抗したくなっちゃうの?」
 六花が低い声で言う。
「あっくんの奥さんさ。すごい差別主義者じゃない?」
「それはないだろ」
 真面目過ぎる、柔軟性がない、とはよく言われるが、人を差別するはずがない。される側として、琴音は苦しんでいるのだ。
「事実、お前のこと認めてる」
 六花が目に力を込めた。
「差別するってことは、相手を認めない、ということじゃないんだよ」
 どういうことか、と敦は眉根を寄せた。
「つまり、相手を認めているからって、差別してないとは限らない、ということ」
 着いた、と六花がさっさと電車を降りた。こうしんづか駅だ。駅前から伸びる庚申塚通りは旧なかせんどうでもある。古びた商店街を五分ほど歩いた先に、三階建てのビルがあった。ノアウォークの事務所がある三階まで階段を上がったところで、敦は足を止める。ノアウォークの事務所の扉が開け放たれていた。若い男性がかがみ込み、中をのぞきこんでいる。集音マイクを持っている者や、ヘッドセットをつけている者もいる。
 敦は声をかけた。
「しーっ。本番中です」
 撮影中のようだ。敦は六花と共にスタッフたちの隙間から、中を覗きこんだ。
 壁一面に書籍が並ぶ部屋の中央に、大きなデスクがあった。スーツ姿の男が座り、インタビューに答えている。
 ノアウォーク代表のふるはたまさだ。
 本人もロスジェネ世代だろう。敦より少し年上のようだった。紺色のスーツにえん色のネクタイ姿で、公務員みたいだった。眉間にしわをよせ、ロスジェネ問題を語っている。
 収録はすぐに終わった。敦は撮影隊に紛れて中に入った。警察手帳を示す。
「すいません、警察なんですが」
 撮影隊が、なにごとかと敦を見た。
「古畑さんにお話をお聞きしたく、参ったのですが」
「警察が、なんの用です」
 古畑はもう怒っていた。警察嫌いがあからさまに顔に出ている。
「とある事件の容疑者について、古畑代表のご意見をちようだいしたく……」
 ひたすら下手に出た。
「失礼ですが、あなたはいくつですか」
 答えなかったら難癖をつけられそうだ。敦は正直に四十歳と答えた。
「なるほど、あなたはロスジェネ世代ですね。失礼ですが、ご結婚は」
 いつの間にかインタビューのようになっていた。撮影隊も片付けの手を止めて、敦を見ている。
「してますが」
「マイホームは」
「はぁ、郊外に」
「お子さんは」
「ひとり、いますが」
 古畑は「カメラ回して!」と撮影隊に叫ぶ。
「見てくださいみなさん。公務員のこの勝ち組っぷりを……!」
 敦は慌てた。こんな様子が放送されたら本部に叱られる。
「日本の長い歴史において、これほどまでに公務員が優遇されている時代はほかにありません。五十年前までは、公務員になるのは民間企業に入れなかった落ちこぼれか、よほどの社会奉仕精神にあふれる人しか……」
 敦は六花の手を引き、逃げた。

 庚申塚通りのジェラートショップで、敦はコーヒーを飲んだ。カウンター席では、六花が三種盛りジェラートを口に運んでいる。敦は鼻息荒く、言う。
「断言できる。あのノアなんとかってとこの古畑は誰一人、救えない。あの物事を見る浅ささじゃLGBTどころかロスジェネの一人も救えねえよ、くそっ」
 ほんとー、と六花は適当な答えだ。
「確かに俺はさ、そこそこ給与もらってるし妻子もいるしマイホームだってあるけどさ。だからって幸せか? 俺は人生の全てを手に入れた勝ち組か?」
「確かに、幸せそうではないよね。あっくんも琴さんも」
 全部手に入れたのにね、と六花にさらりと言われた。全部手に入れたのに、幸せにはなれなかった。それは、自分の心掛けが悪いからなのか。それとも、いまの日本は、全部手に入れても幸せにはなれない社会なのか。
「そういう六花ちゃんはどうなのよ。いま、幸せか。そうじゃないか」
「幸せに決まってるじゃん。おいしいジェラート店、開拓できた」
 アイスを口にいれ、きゅっと目を細めて肩を震わせる。六花は本当に幸せそうだった。
 敦はぼやく。
「それにしても、こんな理由で聴取を拒否されるとはな」
 インターセックスに関しては、非常にセンシティブな性疾患であるというのを建前に、これまで聞き込みした二十五の団体の全てが証言を拒否した。個人情報保護法にも引っかかる。支援団体に関しては令状が出ていないのだ。
 敦は懐に手を入れ、リストを出した。LGBT支援の市民団体が一覧になっている。赤ペンで、『ノアウォーク』を消す。
「次はどこ行く」
 この団体一覧は、五十音順とか、設立順にはなっていなかった。地域別にもなっていない。六花が抜き出して勝手に並べていった。
「ところでこれ、何順なの」
「優先順」
「それはないだろ」
 敦は、リストの下の方を指ではじいた。
「新宿二丁目の中でも大規模な性的マイノリティ支援団体と言われている『新宿なないろ会』が、なんでリストの最後の方なんだ?」
「知らなーい」
 六花は目を逸らした。いつもの口調だが、目が泳いでいる。意外にはぐらかし方が下手だ。なにかあると直感した。
 新宿なないろ会の代表はがわまさ、四十五歳。戸籍の性別は男だが、性的指向は『パン』で性自認は『クィア』と、敦にはわからない言葉が並ぶ。須川の話を振ると、六花が渋々といった様子で、説明する。
「男、女、どっちもってこと」
「それはバイってことなんじゃないの」
「それは、男とも女とも寝れる人のこと。性自認がまだ定まっていない、場合による、だから性的指向も定まらない、ってことよ」
「つまり、その場しのぎのご都合主義者ということか?」
 怒られると思ったのに、六花は否定しなかった。なるほど、六花はこの須川なる人物となにかあるようだ。
 須川は大学の政治学部を卒業後、野党市議会議員の秘書などを経て、三十歳の時にカミングアウト。『新宿なないろ会』を立ち上げた。なないろはレインボー、虹を意味する。LGBTのシンボルだ。運営の他、著作や講演活動を行っていた須川は、やがて新宿区議会議員選挙に野党公認で立候補した。
〝新宿区でも同性パートナーシップ制度を〟と声高に訴え、将来的には同性婚が認められるよう国に働きかけていく、というのが公約だった。
 最初のチャレンジこそ失敗に終わったが、二度目の立候補で当選。現在は二期目を務める。体の工事は一切していないらしく、戸籍も男のままだ。写真を見る限り、敦には女装している線の細い男という印象しかない。
「草の根議員と聞くからに、聞き込みの優先順位が低いのはわかるけどさ。二丁目のど真ん中にオフィスを構えた団体だ。気になるのは──」
 敦はスマホのマップアプリを立ち上げた。二丁目の中心地、なか通りの交差点と、JR新宿駅を一度に表示する。
「犯人が駅からZEROに向かうこの動線上に、新宿なないろ会があるってことだ」
 六花が首をかしげる。
「事務所は雑居ビルの五階だよ。他にもゲイバーやビアンバーが入ってる。そこが目的地だったかもしれないし、最初からZEROが目的地だったのかもしれないんだよ」
「そう言われればそうかもしれないけど、現場から最も近いNPOの優先順位がどうして低いんだよ」
 六花は不機嫌になった。口を少しとがらせた横顔が、またかわいい。
 敦はコーヒーを一口、飲んだ。
「琴や上層部は六花の二丁目での影響力に期待しているんだろうけど、二丁目と近いからこそ動けない場所もあるってことか?」
 六花は目の色を変えた。すがりついてくる。
「気づいてくれた? 察してくれた?」
「わかるよ。これでも本部捜査一課だからな」
「てかいま、呼び捨てした」
 甘えてくるくせに、結局最後は睨みつける。
 六花はジェラートにプラスチックスプーンを突っ込み、ため息をついた。
「その須川って代表、去年ビアンと結婚してるのよ」
「へえ。同性パートナーシップ制度を利用したってこと?」
「違うよ。トランスジェンダーのパンでクィアだよ」
 敦は一生懸命考えて、やっと理解する。
「あ、そっか。戸籍は男のままか。だからビアンと結婚できるのか。で? それのなにが悪いの?」
 六花は背高イスをくるっと横にし、敦に背を向けてしまった。敦は刺激してみる。
「二丁目は人間関係が狭いからなぁ……」
 六花の肩が、ひくひく動く。
「須川議員と結婚したの、お前の元カノか。子供を産みたいと言ってお前を捨てた」
 六花が正面に向き直り、鼻息を荒くした。勇ましくもかわいらしい。敦はつい目尻を下げた。六花が膨れる。
「あっくんには私の気持ちわかんない」
「わかるさ」
「わかんない。チンポついててそこから赤ちゃんのもと出して女の人に母親になる喜びを味わわせてやれる人には、私の気持ちはわからない」
 六花は立ち上がり、グッチのウエストポーチを体に巻き付けた。
「行こ」
「どこ。まだアイス残ってるよ」
「私の元カノんとこ」
「無理すんな」
 敦は六花の腕をつかみ、座らせた。彼女は背が高いが、軽い。すとんと椅子に収まる。
「俺がひとりで行くから、アイス食って待ってろ」
 敦は立ち上がり、財布から千円札を出してテーブルに置いた。
「なんの金」
「アイス代」
「捜査の相棒が男でも出すの?」
 これも女性差別か。敦は金を引っ込めようとした。待って、と六花が止める。千円札をテーブルの上に広げ、ボールペンで何か書こうとした。のぞきこむと、隠された。
「副代表の須川ゆうに渡して」
 六花は素早く千円札を折りたたんで敦に渡そうとして──ぎゅっとお札を握った。
「やっぱ一緒に行く」

▶#5-2へつづく
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