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連載

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」 vol.21

抗争がはじまり、若い恋人たちは引き裂かれてしまって……。赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」#12-1

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」

※この記事は、期間限定公開です。



前回までのあらすじ

興津山学園に通う須永令奈は通学中、暴走する車から命を救ってくれた刑事・村上に恋をする。運転席の男は死んでおり、手には令奈の姉・美樹の名前が書かれたメモがあった。大崎組の息子・裕次が令奈を誘拐し美樹に会おうと目論むが、令奈は別の男に誘拐されてしまう。一方、対立する組の息子・小林志郎と恋愛関係にある香は、駆け落ちを企てるが失敗。エレンと共に再び志郎に会いに行くが、そこにいたのは、銃を構える両家の男たちだった。

詳しくは 「この連載の一覧
または 電子書籍「カドブンノベル」へ

 16 命の重さ(つづき)

「違うわ!」
 と、かおりは叫ぶように言った。
「しかし、現に、向うは待ち伏せしていたんだぞ」
 と、おおさきは言った。
ろうさんも知らなかったのよ」
「どうかな」
 大崎はエレンの方を見て、「お前はどう思った?」
「さあ、どっちとも……」
「エレンさん──」
「待って下さい。向うが先に発砲して来たのは事実です」
 と、エレンは言った。「でも、ばやしの息子は本当にびっくりしているように、私には見えました」
 香が、エレンを感謝の目で見た。
「だが、もう今となっては同じことだ」
 と、大崎は言った。「戦闘は始まってしまった。香は自分の部屋から一歩も出るな。分ったか」
「お父さん……」
「エレン、香の部屋の前に、見張りをつけろ。一秒たりと目を離すな」
「分りました」
 そこへ、まつやまがやって来た。
「社長」
「どうなってる?」
「事故のけが人は全部運び出されました。門は閉めてあります」
「よし。もう一度、誰か忍び込んでいないか、チェックしろ」
「承知しました」
 エレンが香を促して、
「さあ、香さん……」
「お父さん、もう一度考え直して!」
 と、香は言ったが
「もう死んだ者もいる。手遅れだ」
 大崎は冷ややかに言った。
 香は唇をかみしめて、父の部屋から出て行った。

「松山さん!」
 正面玄関を出た松山へ、子分の一人が呼びかけた。
「どうした」
「一人、隠れてたやつを見付けました」
「本当か? どこだ」
「こっちです!」
 しっかり閉じられた門と、建物の間の空間は、低い茂みになっている。照明の届かない辺りに、男が後ろ手に手錠をかけられて、子分の一人に捕まっていた。
「こいつか」
 松山は苦笑して、「小林の所の顔役だぜ」
「ここでばらしちまいますか?」
「いや、何か情報を聞き出せるだろう。連れて行け。俺も後から行く」
「分りました。──来るんだ!」
 子分二人が、その男を両側から腕を取って連れて行く。
 松山はその後ろ姿を見ていたが──。上着の下から拳銃を抜くと、続けて二発、引き金を引いた。
 消音器を付けてあり、ほとんど周囲には分らなかった。銃弾は、二人の大崎の子分の命を奪っていた。
「おい」
 と、松山は手錠をかけられた男へ、「用心してくれよ。この二人の死体を隠さなくちゃならない」
「すまねえ。アレルギーでな、ついクシャミが出たのさ」
「待て」
 手錠を外してやると、「例のものは?」
「とっさに、茂みの奥に隠した。かなり強力な爆弾だ」
「よし。今はその辺りに子分たちがウロウロしてる。──様子を見て連絡するから、その爆弾を社長の部屋のそばに仕掛けるんだ」
「もらった中の地図は間違いないだろうな」
「ああ。うまくやれよ。──死体を、ともかく茂みの中へ隠そう」
「分った」
 松山は、子分二人の死体を隠すと、何食わぬ顔で、玄関へと戻って行った……。

#12-2へつづく
◎第 12 回全文は「カドブンノベル」2020年2月号でお楽しみいただけます!


「カドブンノベル」2020年2月号

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