menu
menu

連載

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」 vol.25

腹心の男は、実は裏切り者だった!彼が企てていたこととは……。 赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」#13-1

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」

※この記事は、期間限定公開です。



前回までのあらすじ

興津山学園に通う須永令奈は通学中、暴走する車から命を救ってくれた刑事・村上に恋をする。運転席の男は死んでおり、手には令奈の姉・美樹の名前が書かれたメモがあった。対立する組の息子・小林志郎と恋愛関係にある大崎香は、駆け落ちを企てるが失敗し、厳しい監視のもとにおかれる。一方、美樹と再会を果たした大崎裕次は、腹心の松山が大崎組を裏切っていたことを知り父に電話をかけるが、電話口から聞こえて来たのは爆発音だった。

詳しくは 「この連載の一覧
または 電子書籍「カドブンノベル」へ

 17 犠牲(つづき)

「ここはいい」
 と、まつやまが言った。「俺が見てるから、お前たちは庭の方へ回れ」
「分りました!」
 若い者数人は、松山の言葉を疑うことなど考えもしないで、一斉に駆け出して行った。
「畜生……」
 松山はそっと汗を拭った。
 いざとなると、子分たちの目を避けて動くことがなかなか難しかったのだ。
 機会は少ししかない。
 松山は左右を見回して、
「おい、出て来い」
 と、呼んだ。
 布袋を積んだ台車のかげに小さくなって身を潜めていた男が、やっとい出して来て、
「一生このままかと思ったぜ」
 と、文句を言いつつ、立ち上った。「いてて……」
「我慢しろ。おい、ついて来い。社長の部屋は、このすぐ奥だ」
「分った」
 と、男は小ぶりな紙包みを手に、松山について行く。
「いいか」
 と、松山は言った。「社長の部屋のドアは、普通に見えるが、中には分厚い鉄板が入っているから、外で爆発させても社長を殺せない。俺が社長を呼び出して、ドアの所まで連れて来るから、そのとき、爆発させろ」
「いいけど……。お前はどうするんだ?」
「俺は部屋の中へ入って、ドアを背にする。それよりお前は──」
「お前の社長と心中するつもりはないぜ」
 と、男は言った。「廊下じゃだめだ。俺が逃げられない」
「そうか。それじゃ──」
「部屋の中で爆発させるんだ。ドアが閉っていれば、中にいる人間は必ず死ぬ」
「つまり、社長一人が中に残っていればいいんだな」
 と、松山は言った。「をどうやって持ち込むかだ」
「中へ入れるのはお前だ。俺がセットするから、持って入れ。どこかへ置いて出て来ればいい」
「おい、待て。セットして何秒で爆発するんだ?」
 松山は、そういて、「俺も一緒に、なんて考えるなよ」
「ちっとは信用しろ。セットして三十秒だ」
「三十秒か……」
 どれくらいの長さか、よく分らない。あまりあわてて逃げ出したら、おおさきがおかしいと思うだろう。
 といって、中でのんびりしているような度胸はない。
「よし」
 松山はうなずいて言った。「社長を殴るかどうかして、気絶させる。そして部屋を出て来る」
「それがいい。どうせ殺すんだ、しっかりやっつけろ」
「ここが社長の部屋だ」
 と、松山は足を止めた。
「いいか、セットするぞ」
「待て! もし社長がいなかったら──」
 松山は、ドアのそばのボタンを押した。
「松山か、入れ」
 と、大崎の声がした。
「よし」
 男が包みの端を破ると、中のボタンを押した。
「三十秒だ」
「分った」
 松山は包みを受け取ると、ドアを開けて中に入った。
「どんな様子だ?」
 と、大崎は大きなデスクの向うに座っていたが、松山が入って行くと立ち上った。
 松山は心臓が高鳴って、その音が大崎に聞こえるんじゃないかと心配になった。
「今のところは静かです。接近する車があれば、問答無用で弾丸を食らわします」
 五秒……十秒か? もっとたってるか?
 松山は首筋や額に汗がふき出るのを感じた。
 俺は小心者だったんだ……。
 大崎をやっつける? そんなことができるか?
 三十秒だ! 早くここを出ないと──。
「どうした、顔色が悪いぞ」
 と、大崎が言った。
 そのとき、大崎のケータイが鳴った。
「社長──」
「待て。ゆうからだ」
 大崎はケータイに出ると、松山へ背を向けて、話し始めた。
 今だ! ──松山は包みを床の隅の方へ放り投げた。

▶#13-2へつづく
◎第 13 回全文は「カドブンノベル」2020年3月号でお楽しみいただけます!


「カドブンノベル」2020年3月号

「カドブンノベル」2020年3月号


関連書籍

MAGAZINES

カドブンノベル

最新号
2020年8月号

7月10日 配信

怪と幽

最新号
Vol.004

4月28日 発売

小説 野性時代

第201号
2020年8月号

7月13日 発売

ランキング

アクセスランキング

新着コンテンツ

TOP