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連載

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」 vol.13

村上刑事からの電話に、有里は歯切れの悪い様子で……。 赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」#9-5

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」

※この記事は2020年1月10日(金)までの期間限定公開です。

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 ケータイが鳴った。むらかみ刑事からだ。
「──君、始まりそうだよ、本格的な争いがね」
「え……」
 と言ったきり、有里は黙ってしまった。
「──もしもし? 有里君、聞こえる?」
「聞いてます、ちゃんと」
 と、有里はやっと息をついて、「本格的な、って……」
「どうも、今入ってる情報だと、大崎の所と、相手のばやしの所と、どっちも武器を大量に用意してるようだ。地元の警察で抑えられるかどうか心配だね」
「じゃ、本当の撃ち合いに? 今どき、そんなこと、あるんですか?」
「万一、そうなったら、一般の人が巻き込まれたり、流れ弾に当ったりするかもしれない。そうなれば、どっちも大変なことになるんだがね」
「そうですね……」
 有里としては、自分の家に須永美樹たちが泊っているのを村上に教えたいのだが、
「今夜一晩は泊めてあげる」
 と、さちが言ってしまったので、黙っているしかない。
 村上は、有里がいやに歯切れの悪い言い方をするので、
「有里君、大丈夫かい?」
 と、心配してくれたが、「や、ごめん、至急の連絡だ。何かあれば、また知らせるよ」
 と言って、切ってしまった。
 有里としては、ホッとした一方で、やはり村上に隠していてはまずくないか、という気持もあって、複雑だったが……。
 またケータイが鳴って、村上かと思ったが、そうではなかった。
「──ああ、あまもとさん?」
「はい……」
「須永令奈の母です」
「あ、どうも」
「令奈、お宅に行ってる?」
 と、緑子は訊いた。
「え? いえ、来ていませんけど……」
 有里は当惑して、「帰ってないんですか?」
 だから電話して来たのだろうが、「連絡もないんですか。おかしいですね」
「そうなの。令奈のケータイにかけても出ないし……」
「でも、令奈は黙って外泊したりしませんよね」
「ええ、そんなことのない子だから。美樹は年中だったけど」
 と、緑子が心配そうに、「もし何か分ったら──」
「もちろんご連絡します」
 と、有里は言った。「あの──裕次さんって、今、そちらに?」
「いいえ。何だか大急ぎで出て行ったようよ」
 出入りがある、という連絡が行ったのだろう。
 緑子は、
「それじゃ」
 と、切ってしまった。
 有里も令奈へかけてみたが、やはりつながらない。
 もう夜も遅くなっている。
 有里はちょっと迷ったが、部屋を出て、居間へと下りて行った。
 美樹がソファでのんびりTVを見ている。
「あら、何かTV見るものあるの?」
 と、美樹は言った。
「いえ、そうじゃないんです」
 有里は、美樹のそばに座って、「令奈から何か言って来てません?」
「令奈? あの子がどうして?」
 と、キョトンとしている。
「連絡つかないんです。まだ帰ってないそうで」
「あの子が? 私と違って、そう寄り道する子じゃないけどね」
 と、美樹は言って、「あ、ケータイが……」
 鳴り出したケータイを手にすると、
「令奈だわ。──もしもし? どこにいるの?」
 少し間があって、
「お前の妹は預かってるぜ」
 と、男の声が言った。
「──何て言ったの?」
 そばにいる有里にも、向うの声は聞こえていた。
「聞かせてやろう」
 と、男が言うと、少しして、
「お姉ちゃん? 私……今、縛られてるの」
 令奈の声が震えるように伝わって来た。
「一体誰が──」
「いいか」
 と、男に戻って、「大崎裕次をおびき出せ」
「何ですって?」
「二十四時間以内にだ。一分でも過ぎたら、このわいい妹は無事じゃすまない」
「待ってよ、そんな──」
「このケータイへかけて来い。分ったな」
「おびき出すって──どこへ?」
「お前が考えろ。いいか、やつが一人で来るようにするんだ」
「令奈に手を出さないで!」
「二十四時間は待ってやる」
 男は愉快そうに、「二十三時間と五十九分だな」
 と言うと、通話を切った。
「美樹さん……」
 と、有里は言った。「戦いが始まりそうなんですって。きっと、相手の方の子分ですよ」
「どうしよう……」
 美樹はしばしぼうぜんとしていた。
「令奈を取り戻すんですよ!」
 有里は力をこめて言った。

#10-1へつづく
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