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連載

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」 vol.4

赤川次郎が描く、祖母・母・娘の三世代ミステリ! 「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」#7-4

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」

   11 つながる

「もしもし」
「ああ。──どこからだ?」
 と、須永しよう牧師は訊いた。
 細川希代子からの電話だった。
「今、何してるの?」
 と、希代子が何だか投げやりな口調で言った。
「教会だ。片付けなきゃいけない仕事があってな」
 と、須永は言った。「どうかしたのか」
「どうして?」
「いや……。何だか話し方が……。もしかして、酔ってるのか?」
「違うわよ! こんなに静かなバーなんてないでしょ」
「そうだな。家からかけてるのか?」
「いいえ。どこだと思う?」
「さあ……。分らんよ」
「死体置場」
「──何だって?」
「あのね、主人が……」
「ご主人が? 亡くなったのか?」
「いいえ。主人は入院中。と張り切ってるときに心臓発作起こしてね」
「そいつは……」
「兄がね、死んだの」
 唐突に言われて、須永はわけが分らなかった。
「お兄さん?」
「そう。雨宮克郎。一度会ったことあるわよ。おぼえてないでしょう」
「いや、待てよ。──そうか、えらく真面目そうな。君とご主人の間を心配してた。あの人が亡くなったのか。──死体置場っていうのは?」
「兄だってことの確認よ」
 と、希代子は言った。「兄は独身だったから」
「なるほど。それで──間違いなく?」
「ええ、兄だった」
「気の毒に。何か……事故にでもあったのか?」
「いいえ。ただ、殺されただけよ」
「何だって?」
「殺されたの。犯人はまだ分らない」
「そんなことが……。ショックだね、それは」
「あなたは知ってた?」
 訊かれて、須永は当惑した。
「知ってた、って……。何を?」
「兄が殺されたことよ」
「いや、知らんよ! どうして私が──」
「村上って刑事さんから聞いたわ。兄が死んでるのを見付けたのは、あなたの令奈ちゃん」
「娘が? 本当か」
「それだけじゃないわ」
「というと?」
「兄の上着のポケットにメモが入ってて、そこに、美樹ちゃんの名前が書いてあったって」
「美樹の? しかし……どういうことだ」
「こっちが訊きたいわ」
 希代子の口調が強くなった。「兄はお宅とどういう関係があったの?」
「待ってくれ。私は知らない。以前一度確かに会ったが、それきりだ。娘たちだって、君の兄さんと知り合う機会はなかっただろう」
「じゃ、どうして美樹ちゃんの名前を書いたメモを持ってたの?」
「見当もつかないよ。待ってくれ。今夜、令奈から詳しいことを聞いてみる」
 と、須永は言った。「美樹は今、連絡が取れないんだ。本当だよ」
「誰を信じていいか分らないわ……」
「なあ、落ちついてくれ。今は状況が分らない。何か分り次第連絡する。本当だ」
「そうね……。兄のお葬式も出してあげないと……。主人の入院でもお金がかかるし。相手の女が誰か分ったら、請求書回してやるんだけど」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろう。ともかく──また会って相談しよう」
「ええ、そうね、でも、ホテルはね」
「うん、もちろんだ」
「何が何だか分らない……」
 と、希代子がうめくように言って──切れた。
「──どうなってるんだ?」
 須永は呟いた。
 そのとき、足音が教会の中に響いて、振り向いた須永は目を見開いた。
「──お前か」
 大崎裕次が立っていたのである。
「久しぶりだな、教会に入るのは」
 と、裕次は言って、「十字は切りませんよ。もう信じちゃいませんからね」
「お前……。美樹はどこだ!」
「こっちが訊きたいことでね」
 それにしても、裕次の様子はまるで違っていた。
「今の電話は誰からです?」
「え? ああ……。信者の奥さんだ。それより──奥へ入ろう」
 須永は裕次を促した。

>>#8-1へつづく ※9/13(金)公開
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カドブンノベル 2019年10月号

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「カドブンノベル」2019年9月号収録「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」第 7 回より


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