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連載

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」 vol.27

裏切り者の男の企ては失敗に終わった。しかし、事態はますます大変になっていて……。 赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」#13-3

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」

※この記事は、期間限定公開です。

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 誰が見ても分るほど、ガタガタ震えているのは松山だった。
 それはそうだろう。──大崎を殺そうとしたことは、とっくにばれている。しかも、大崎を撃とうとして、娘の香を撃ってしまった。
 爆弾を持って来た男は、捕まって袋叩きにされた。もう生きてはいないだろう。
 松山も爆発で火傷を負っていたが、「救急車を呼んでくれ」とは、さすがに言えなかった。
 地下の倉庫で、松山は椅子に座っていた。──大崎の子分が十人近くで、松山をにらみつけている。
 足音がして、入口から、
「松山はここか!」
 と、声がした。
 大崎裕次だった。松山を見ると、大股に歩み寄って、
「貴様!」
 と言うなり殴りつけた。
 松山は椅子から床へ転り落ちた。
「痛い……。裕次さん、俺は……」
「裏切りやがって!」
 裕次は子分の一人へ、「拳銃を貸せ」
「待って下さい!」
 松山があわてて言った。「俺は何も一人でやろうと決めたわけじゃ──」
「じゃ、誰かがお前をたきつけたって言うのか?」
 裕次は子分の拳銃を受け取ると、銃口を松山へ向けた。
「やめて! ──やめて下さい」
 松山は両手を顔の前にかざした。
「生かしとくと思うのか」
 裕次の指が引金にかかる。そのとき、
「もう沢山よ」
 と、声がした。「これ以上、死人を出さないで」
「──か」
「一応私はあなたの妻ですからね。殺人罪で刑務所に入ってほしくない」
「ここで殺したって、分りゃしない」
「もうやめて」
 と、美樹は首を振った。「それに、香ちゃんは病院へ運ばれてるんでしょ? どうして行ってあげないの」
「その前にこいつを──」
「警察が来るわ。そして松山を逮捕していくでしょう。それに任せなさい」
「香を撃ったんだぞ、こいつは!」
「あなた。自分のことを考えて」
 と、美樹は言った。「松山を殺す資格はないわ」
「お前──」
 子分の一人が駆けて来て、
「パトカーが何台も」
 と言った。「止められません」
「当り前よ。裕次さん、その拳銃を持っていたら、それだけで捕まるわよ」
 裕次がいまいましげに、拳銃を子分へ投げ返した。
「それに、松山の左腕の火傷はひどいわ。救急車を呼んでもらって」
 美樹の言葉に、子分が急いで出て行った。
「あなたには仕事があるわ」
 と、美樹は言った。「を取り戻すのよ」

▶#13-4へつづく
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