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連載

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」 vol.31

病院に響いた、籠った銃声の正体は……。 赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」#14-3

赤川次郎「三世代探偵団3 生命の旗がはためくとき」

※この記事は、期間限定公開です。

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「おい!」
 村上が駆け寄ると、二人は一緒に倒れた。
「しまった!」
 村上が、倒れた二人の男の下から拳銃を見付けた。「どこで手に入れたんだ……」
「村上さん、二人は……」
 と、有里が言った。
 医師や看護師が駆けつけて来て、大崎と小林をあおけにした。──二人とも、心臓の辺りに血が広がっている。
「社長……」
 エレンが壁によりかかって、呟くように言った。「私を置いて……」
 裕次はただぼうぜんとして立っていた。
 医師は大崎と小林のそばに膝をついて診ていたが、やがて立ち上ると、
「どちらも亡くなっています」
 と言った。「心臓に一発。即死ですね」
「──何てことを」
 と、幸代は穏やかに言った。「どっちも、生きる気力を失っていたのね」
「どっちが先に撃ったんですか……」
 と、裕次がやっと口を開いた。
「分らないな」
 と、村上は首を振って、「ともかく……」
「同じ思いだったのですね」
 と、幸代が言った。「一人は息子を失い、もう一人は娘が自分の代りに銃弾を受けた。お互い、自分を責めている気持を察していたのでしょう」
 村上は一人、
「とんでもないことになった……」
 と呟いていた。
「せめて、香さんに助かってほしいわね」
 と、有里が言った。「意識が戻ったとき、すべてを知って、どう思うか分らないけど」
 幸代は、有里の肩に手を置いて、
「人は立ち直るものですよ」
 と言った。「生きていれば。生きてさえいればね……」
 病院の廊下に大勢の警官がやって来て、村上の指示の下、二つの家の子分たちを連行して行った。
「天本さん」
 と、寺井が言った。「すみませんが、のことをお願いします」
「ええ、任せて。大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
 深々と頭を下げて、寺井は連行されて行った。
「私たちも引き上げましょう」
 と、幸代は言った。「文乃は?」
「お母さん、どこだろ?」
 有里は、キョロキョロしていたが、「──あそこだ」
 廊下の隅の長椅子で、待ちくたびれて居眠りしている文乃を見付けた。
「──お母さん」
 と起こしに行くと、文乃は目を覚まして、
「え? ──眠っちゃったのね、私」
 と、頭を振って、「ここ、どこだっけ?」
 と、首をかしげた……。

▶#14-4へつづく
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