小・中学生の頃、ライトノベルをたくさん読んでいました。
 学校の図書館にもラノベが置いてあったので、いろんな作品を読むことができたのです。きっと、とっても流行っていたからでしょうね。
キノの旅』『ブギーポップは笑わない』『半分の月がのぼる空』……お気に入りのタイトルを挙げ始めるときりがないほど、ずっとラノベを読んでいるような日々でした。
 谷川流先生の御本に出会ったのも、ちょうどその頃のことです。
 最初に読んだ『学校を出よう!』がすっごくおもしろかったので、続けて出た『涼宮ハルヒの憂鬱』も手に取ったのですが、これがもう最高。
 同じ谷川先生のお話でも『学校を出よう!』はどちらかというと特別な能力がある人たちが集まった世界です。でも、ハルヒの方は、キョンみたいな普通の人がいて、日常的な学園生活も描かれているから、とても身近に感じられたのです。
 だから、「私が気づいてないだけで、もしかしたら私の周りにも宇宙人、未来人、異世界人、超能力者が潜んでいるのかも」と思えて、妄想好きの私にはたまりませんでした。
 すっかりハマってしまい、友達にも布教したくって貸しまくっていましたし、各キャラクターの決め台詞を日常会話に混ぜ込んだりして遊んでいるうちに、テレビでアニメが始まりました。
 そうしたら、一気に人気が爆発したではありませんか。
 もうびっくりでした。
 私自身、もっとハルヒが広がってほしいとがんばっていたものの、単純に谷川先生の作品がおもしろくって読んでいた身だったので、アニメ主題歌の「ハレ晴レユカイ」が流行って、それの「踊ってみた」が流行って、もう世の中がハルヒ現象みたいなブームになるとは思ってもおらず。
「ハレ晴レユカイ」は、私ももちろん踊りました。学校の授業以外だと、人生で初めて練習したダンスがこれです。
 世間では、それ以前からモーニング娘。さんなどの楽曲で踊るのが流行っていましたが「ハレ晴レユカイ」だけは、自分でもやってみようという気になって、姉と二人で一生懸命練習をしたのです。当時、大阪の日本橋にっぽんばしという電気街の路上で、街に流れる音楽に合わせてみんなで急に踊り出すのが流行っていたのだけれど、それに参加してみたりもしました。
 本当に楽しい思い出です。
 でも、まさかそれから約十年後、平野綾さんご本人と一緒に「ハレ晴レユカイ」をみくるちゃん位置で踊り、あまつさえ地上波で皆さんに見ていただくことになろうとは……。
 当日はもう感激で胸がいっぱいで、みんなにも自慢しまくりました。アニオタの頂点を極めた気分でした。
 できることなら、中高時代の自分に、あの日の私の勇姿(?)を見せてやりたいです。ほら、きちんと振りを教えてもらって、アイドルとしてやると、こんなにちゃんと踊れるんだよ、って。

 そんなわけで、ハルヒは小説もアニメも大好きだし、涼宮ハルヒというキャラクターには大きな憧れを感じていました。
 でも、「私はハルヒにはなれない」とも思っていました。
 日本橋の路上で踊っていた、なんて告白しておいて何ですが、元々、恥ずかしがり屋で、どちらかというと内向的なタイプ。友だちと喋るのも好きだけど、外で遊ぶよりはお家で本を読んでいる方がいいと感じる人間で、行動よりも妄想の方が得意です。
 キョンもみくるちゃんも長門ながと古泉こいずみもハルヒに巻き込まれて大変そうだけど、私もSOS団に入って一緒に巻き込まれてみたい。ハルヒみたいな行動力の塊の子が側にいたらどんなに楽しいだろう、と考えてはいました。でも、考えるだけでした。
 あの頃の私は、好きなラノベや漫画、アニメを見て妄想するのが一番楽しくて、想像の世界で遊んでいられたらそれで十分だと思っていたのでした。
 それなのに、今は乃木坂46の一員としてアイドルをやっているのだから、自分でもなんだか不思議な気がします。
 別に、突然積極的な性格に変わったわけでもありません。本当のところ、乃木坂のオーディションを受けたのだって、どういう気持ちで応募したのかあんまり覚えていないんです。合格したときも、舞い上がったりせず、妙に淡々としていました。
 そして、あんまりよくわかっていないうちに乃木坂46に入っていて、気づいたら人生が百八十度変わっていた。そんな感じでした。
 でも、いざ自分の意志で動くようになると、想像しているだけでは知ることができなかった楽しさがいっぱいあることに気づきました。昔の私ならやる前から「自分には無理かも」と諦めていたようなことでも、やってみたら意外にできちゃったり、想像外の新しい世界が見えてきたり。
 そうしているうちに、やっぱりハルヒのように自分から動かないと、本当に楽しいことはできないのかなと思うようになってきたのです。
 何でもやってみるのは大切だし、自分一人でやるより、誰かと一緒にやる方が達成感も喜びも倍になる。個人主義者だった私が、みんなで喜びを共有するうれしさに気づいたのは、ものすごく大きな変化だったと思います。人生ずっと長門タイプで来ていたのだけど、乃木坂という私にとっての「SOS団」に入ったことで、内面が少しずつ変わっていったようです。
 二〇一四年に乃木坂46内グループの「さゆりんご軍団」を結成したのだって、そんな変化があってこそだったのかもしれません。二期生、三期生が入ってきたことで、自分がリーダーになってみる決心がついたのです。
 後輩の中にアニメが好きな子たちがいたのですが、彼女たちは私と同じくちょっと個人主義的なところがあって、よく一緒に仕事するのにあんまり仲良くなれない時期が続いていました。
 でも、どうせなら仲良くしたいし、一緒に遊んだりしたかったので、それならもう団だ、団を作りましょう! と、強制的に「私たちはもう仲間です!」感を出してみることにしました。
 気分は完全にハルヒです。
 周りの反応も、初期のSOS団のようでした。みんなきょとんとして、それこそキョンやみくるちゃんみたいに「えっ、えっ、何の話」「それ何ですか」みたいに戸惑うばかり。でも、やっているうちに、みんな順応していくんです。
「今度こういうことやるから!」と宣言したら「あっ、はい、わかりました」とすんなり受け入れる。こんなところもまるっきりSOS団。そういうのが、なんだかおもしろくて……。
 そんなわけで、私の人生は涼宮ハルヒからの影響が大、なのです。
 やらないよりはやった方が、絶対おもしろくなる。
 それが、ハルヒが私に教えてくれたこと。ハルヒはすごくわがままでやりたい放題だから、「こんなにやっちゃってもいいんだ」って、心のリミッターを外してくれるんですよね。ハルヒの大胆さに比べたら、この現実で一歩を踏み出す勇気なんて、そう大したことじゃありません。
 未だにちょっと面倒くさがり屋さんなところは変わらないけれども、これからも心の中にハルヒに住んでもらって、パワーをもらいながら、エネルギッシュに生きていけたらいいなと思っています。

構成・門賀美央子


書誌情報はこちら≫谷川流『涼宮ハルヒの溜息』

※この記事は5月24日(金)までの期間限定公開です。

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○こうしてハルヒと出会った  それは、今から十年ぐらい前のことです。

書籍

『涼宮ハルヒの溜息』

谷川 流

定価 648円(本体600円+税)

発売日:2019年01月24日

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    書籍

    『涼宮ハルヒの憂鬱』

    谷川 流

    定価 648円(本体600円+税)

    発売日:2019年01月24日

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