十四歳の晴彦の心の中には、なにが詰まっているのか。十四歳の晴彦の心は、どんなふうに育ってきたのか。私にはわからない。なにもわからない。この子が赤ん坊の頃からずっと誰よりもそばで見てきたんだ、という確かな支えを持っていない父親など、父親と呼べるのだろうか、と思う。
 息子と腹を割って話したいのに、遠慮があってうまく話せない。そんな芳明の心境が、いくつもの印象的なエピソードとともに描かれ、読者の共感を呼ぶ。

 タイトルの「木曜日の子ども」とは、童謡マザーグースの有名な歌の一節だ。「月曜の子どもはかわいい子」や「誕生日」のタイトルで知られるその歌には、「木曜日の子どもは、遠くに行って」という意味深な歌詞がある。ここを離れ、どこか遠くに行ってしまう子どもたち。それを前にして大人には何ができるのか。何をするべきなのか。マザーグースの歌詞が通奏低音のように鳴り響くこの物語は、14歳という危うい年代にいる“木曜日の子ども”たちと、不器用ながらもそれを救い、導こうとする大人の物語だ。

 重松清氏はデビュー以来、しばしば家族の絆をテーマにしてきた作家だ。今回は“血の繋がらない父子”を主要登場人物に据えることで、あらためてそのあり方を見つめ直している。慣れない父親の立場で悩み、家族のために奮闘する芳明。その後ろ姿には、分断しかけた人間関係を修復するための大切なヒントがある。普遍的なテーマを秘めた家族小説にして、少年犯罪を扱った現代ミステリー。老若男女、あらゆる読者層におすすめできる逸品だ。


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「ダ・ヴィンチニュース」より転載
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【『木曜日の子ども』刊行記念書評リレー】
① 近未来の「黙示録」――奥野 修司(ジャーナリスト・ノンフィクション作家)
https://kadobun.jp/reviews/604/1ba6b39f
② 重量級の新たな傑作が生みだされた――池上 冬樹(文芸評論家)
https://kadobun.jp/reviews/601/0190ff05
③ あえて「わからない」心に向き合う姿勢と覚悟――石戸 諭(記者・ノンフィクションライター)
https://kadobun.jp/reviews/605/53d6ba47
④この小説は、テレビドキュメンタリーへの警告である――張江泰之(フジテレビ「ザ・ノンフィクション」チーフプロデューサー)
https://kadobun.jp/reviews/606/5477207c

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書籍

『木曜日の子ども』

重松 清

定価 1836円(本体1700円+税)

発売日:2019年01月31日

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