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レビュー

ホストっぽい風貌の道長も!「この人と友達になりたい」という感覚が持てる『漫画版 日本の歴史3』

 過去を持たない人のことを、「子供」と言います。
 未来は潤沢に持っているけれど、ほんの数年分の過去しか持っておらず、その記憶も曖昧なのが、子供という生きもの。
 私は歴史に興味の無い子供時代を過ごしましたが、それはおそらく子供だった私自身が過去を持っていなかったため、日本人、そして人類には脈々と続く過去すなわち歴史が存在するという事実に、全くピンとこなかったせいなのでしょう。大河ドラマを欠かさずに見る親のことが、理解できなかったものです。
 しかしそんな私も、大人になって過去を積み重ねるうちに、今度は「歴史って、面白いわ……」と、思うようになったのでした。自分の過去が長くなってきたせいで、「私自身の過去は、実は他人の過去へとつながっているのだなぁ」と、つまりは「歴史」というものの概念を体感したのだと思う。
 日本の歴史を子供達にもわかりやすいよう、まんがで伝えるこのシリーズは、過去を持たない子供達に過去を教えるという、難事業に取り組んでいます。歴史をビジュアル化するというのは、過去を持たない子供達のみならず大人にも、すっと入っていくのではないでしょうか。
「歴史上の人物と自分は、同じ人間である」ということを理解することができると、人は歴史に親近感を抱きます。現代と過去とはあまりに違うので、自分とは全く違う人達が過去には生きていたと思いがちなもの。しかし何か一つでも「あ、同じ」というポイントが見つかると、過去への扉は容易に開くことになる。
 今を生きる我々は、昔の人のことを無意識に差別しがちでもあります。たとえば若い頃、自分よりも年配の人達のことを、「今のことをわかっていない古臭い人」と思ったことは、ありはしまいか。昭和時代の人は、スマホもパソコンも持っていないとは可哀想とか、明治・大正はテレビすら無いなんて信じられないとか、テクノロジーが進化していなかった時代の人を差別することもあるものです。また現代とは異なる社会体制の下で生きていた過去の人達を「さぞ野蛮だったのだろう」「感情にも乏しかったのでは?」と、下に見ることも。
 しかしその手の感覚もまた、何かの瞬間に「過去を生きていた人も、今を生きる自分も、同じ」ということがわかると、霧散していくのでした。現代社会では、「世の中には色々な人がいる」という多様性を理解しよう、との動きが進んでいますが、その視線はおそらく、過去の歴史を見る上でも役に立ちます。どの時代の人が偉いというわけではなく、「色々な人がいて、色々な時代があってこそ、今の日本がある」という、歴史の中でのダイバーシティ的感覚は、歴史を少しずつ知る中で、養われていくものなのではないでしょうか。
 そんな感覚を醸成するにあたり、本書で取り上げられている平安時代のことを知るのは、非常に役立つように私は思います。千年も前ということで、「今よりグッと原始的な時代」という感覚を持つ人もいるかもしれません。が、今の日本文化の基礎となるものがこの時代に(はぐく)まれたことが、本書を読めばわかることでしょう。一応は平和で、ガツガツした雰囲気が薄いこの時代の空気は、現代にも通じているのです。
 教科書に載っているような古典によって、平安時代のことを「花鳥風月のことばかり考えている、つまらない人ばかりがいた時代では?」と思う人も、いるかもしれません。しかし本書は、生々しい欲望や権謀術数が渦巻く時代であったことを伝えていますし、また恋愛なくしては人生なし、という感覚があった柔らかな時代であったこともわかってきます。
 女性が活躍していたことも、平安時代の特徴でしょう。本書にも登場する紫式部や清少納言は、平安の世におけるキャリアウーマンと言ってよい存在ですが、『源氏物語』や『枕草子』という現代まで読み続けられる作品を書き残しました。その後、武士の世となると女性が表舞台に登場しなくなりますが、平安時代の女性達が書いた作品を読むことによって、私達は今も、「私と同じ」とか、「この人と、友達になりたい」という感覚を、たやすく得ることができるのです。
 もちろん、今とは異なる部分も、たくさんあります。女性達が着ていた十二単は、我々が着ている服とは全く違うもの。十二単がどのようなものであったか、はたまた貴族の屋敷はどのような構造かなど、今まで私が古典を読みながらわかったフリをしていた部分も、本書ではわかりやすく図解されているのでした。
 政治のシステムも、全く異なりました。平安時代中期といえば、天皇の外戚(がいせき)が摂政や関白に就いて政治を支配するシステムが特徴的。天皇は今の世にも存在していますが、その立場を利用しようとした人は、歴史の中にたくさん存在します。歴史は流動的であり、ずっと変わらないものなどは無いのです。
 そんな中で我が世の春を味わった藤原道長も、本書にはちょっとホストっぽい風貌の人として登場。古典を読んでいると、主語が書いていなかったり、人物も名前ではなく官職名でしか記されずに、誰が誰やらわからなくなったりするものですが、まんがにすると顔で見分けがつくのが、ありがたいところです。
 自分と同じ、と思う部分には共感を。自分と違う、と思う部分には興味を。こういった本を手に取ることによって、読者は計り知れない過去の豊かさに、気づくことでしょう。特にいくらでも、そしてどのようにも未来を開拓することができる子供達にとって、過去を知ることは大きな財産になるものと思います。そして私達大人もまた、歴史を知ることによって、自分達もまた過去から続く歴史の中の一部であるということに、気づくのではないでしょうか。

>>『漫画版 日本の歴史 3 雅なる平安貴族 平安時代前期』
>>角川文庫版 まんが学習シリーズ『日本の歴史』


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