「暴力団博士」の異名を取る研究者による新書である。暴力団を辞め、介護施設で働く小山さんの半生を描いた第一部「リアル任侠ヘルパーの見た世界」と、暴力団離脱者問題の研究成果をまとめた第二部「ヤクザの辞め方」で構成される。新聞はもちろん、実話誌でも、なかなかお目にかかれないリアルな暴力団の実態が描かれている。私も警視庁の記者クラブに身を置き、暴力団取材をしてきたが、本書を読むまで知らないことが多かった。
 第一部は、小山さんの独白形式で、テンポよく物語が展開する。福岡の複雑な家庭で育った小山さんは中学一年で不良となり、漫画『ビー・バップ・ハイスクール』のモデルになったヤンキー高校へ進学する。
どげん思い出しても喧嘩しかせんかったですね
 
 愛嬌のある博多弁が小気味よい。
 高校を中退した後、紆余曲折を経て任侠の世界へ。福岡に本部を置く組の枝(下部組織)に所属。その生活は、波瀾万丈の一言に尽きる。
近年、暴力団組員の高齢化が進む。組員になろうという若者が減り、負担を軽くするため当番を廃止する組も出始めている、と警察幹部に聞いたことがある。これまで「当番が大変」と言われてもピンと来なかったが、小山さんの話で腹に落ちた。
 当番が回ってくると、服、防弾チョッキ、カバンに鉛板を入れた盾を用意し、組事務所へ向かう。前の当番から引き継ぎを受け、正午からスタートだ。幹部会や定例会に備え、会場とトイレ、玄関先の掃除から始まり、オシボリ巻き、湯飲み、灰皿のセッティングまで。「昔のOLでもやっていたことじゃないか」と考える読者に対しては、こう力を込める。

書籍

『ヤクザと介護 暴力団離脱者たちの研究』

廣末 登

定価 886円(本体820円+税)

発売日:2017年09月08日

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