本選びに失敗したくない。そんなあなたに、旬の鉄板小説をドドンとオススメ!

西田啓子は六三歳。一人暮らし。五年前に個人でやっていた学習塾を閉じ、いまではスポーツクラブの平日コースを利用することと、図書館で借りた本を読むことだけを楽しみにしている。つつましく目立たず生きている彼女には、一つだけ他人には絶対に言えない秘密があった。それは、かつて連合赤軍事件に連座し、五年余り服役していたという過去だった。
一九七一年から七二年にかけて起きた連合赤軍事件については、当事者が書いたものを含めかなりの数の関連書籍が出ている。とくに永田洋子、坂口弘の手記は有名で、私も読んだことがあるくらいだ。しかし、『夜の谷を行く』の主人公、西田啓子は、彼らのような指導部ではなく、被指導部、つまり末端のメンバーだったという設定である。自分もリンチされるのではないかとおびえながら仲間の世話をし、遺体を運んだ。そして、命からがら逃げ出し、生き延びることができた。連合赤軍事件のなかでは脇役どころか端役といっていい。しかし、それだけに彼女はあの時代の精神に感化された、普通の女性に近い存在だった。
刑期を終えた啓子を待っていたのは、父母を亡くし、親戚に縁を切られ、わずかに妹とその娘、佳絵とだけ付き合うというひっそりとした人生だった。しかし、永田洋子が亡くなり、東日本大震災が起きた年、その平穏な日常がついに終わりを告げる。直接的なきっかけは佳絵の結婚である。サイパンで式を挙げることになり、啓子がかつて米軍基地に放火し、ボヤ騒ぎを起こした事件が問題になる。サイパンで逮捕されるかもしれないというのである。そのため啓子は、これまで黙っていた自分の過去を佳絵に話さざるをえなくなる。

書籍

『夜の谷を行く』(文芸春秋)

桐野 夏生

定価 1620円(本体1500円+税)

発売日:2017年3月31日

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    書籍

    「女神記」

    桐野 夏生

    定価 637円(本体590円+税)

    発売日:2011年11月25日

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      書籍

      『小説 野性時代』 第163号 2017年6月号

      小説野性時代編集部

      定価 860円(本体796円+税)

      発売日:2017年05月12日

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