4月24日に新創刊された雑誌『怪と幽』。その創刊を祝うイベントが5月12日、京極夏彦さん、東雅夫さん、朱野帰子さんの3氏を招いて開催された。多くのファンが詰めかけたイベント当日の模様をレポートします!

取材・文=朝宮 運河
写真提供=ラクーン エージェンシー

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 2019年5月12日(日)、東京堂書店神田神保町店にて、雑誌『怪と幽』の創刊記念トークイベントが開催された。
『怪と幽』は4月24日にKADOKAWAより創刊された、「お化け好きに贈るエンターテインメント・マガジン」。昨年惜しまれつつ休刊した妖怪マガジン『怪』と怪談専門誌『幽』が、合併する形で誕生した雑誌だ。
 イベントでは『怪』創刊時から携わってきた作家の京極夏彦さん、『幽』の編集長・編集顧問を歴任したアンソロジストの東雅夫さん、『怪と幽』創刊号に妖怪小説を寄稿した作家の朱野帰子さんの3氏がトークをくり広げた。
 イベント冒頭、京極さんが「怪と幽」と墨書された額入りの色紙を持って登場。新元号の発表会見を思わせる光景に、会場は笑い声に包まれた。
京極夏彦さん

京極夏彦さん

“お化け”という共通項がありながら、実はスタンスも読者層も異なっていた『怪』と『幽』。イベント前半では、両誌はどんな雑誌だったのかがあらためてふり返られた。
「そもそも『怪』は水木しげるさんの企画でできた雑誌。それが20年も続くとは」と語った京極さんは、「自分たちが妖怪の認知度を高めたという自負はあります。ただその結果としての現状には複雑な思いがある。たとえば“妖怪は可愛い”とまとめられてしまうと、かなり戸惑いますね」と胸中を明かした。
 一方東さんは「ネガティブに扱われがちな怪談のイメージを向上させたかった。そのため各ジャンルで一流の書き手を揃えました」と話す。実際、『幽』誌上では綾辻行人さんら多くのベストセラー作家が怪談にチャレンジした。「書き手にとっても新しい挑戦のできる場だったのでは」。
 朱野さんは「わたしは『怪』派でも『幽』派でもない。ごく普通の一般人です(笑)」と前置きしつつも、『幽』主催の文学賞に応募経験があること、デビュー作『マタタビ潔子の猫魂』が京極さんらが出演していたラジオ番組「『怪』ラヂヲ」(TBSラジオで2007から08年まで放送)をヒントに生まれたことなど、秘蔵のエピソードを公開した。
朱野帰子さん

朱野帰子さん

 イベント後半では『怪と幽』創刊の意義や、今後の方向性について話し合われた。東さんは「15年間好き勝手に『幽』を作らせてもらった。『怪と幽』も自由にやったらいいと思います」とイベントの司会を務める『怪と幽』編集長を激励。そのうえで「メディアには新しい才能を発見し、育てるという責務もある」とも強調した。
 朱野さんは「妖怪スイーツの紹介ページにほっとした。雑誌はその時代を映すもの。ミーハーなファンが読んでも楽しめる企画も大切にしてほしい」とリクエスト。
 京極さんは「妖怪は小馬鹿にされるべきものだし、同時に世の中をシニカルに笑い飛ばすものでもある。『怪』にはその、諷刺の精神、批評性が足りなかったという反省はあります」と、故・水木しげるさんの諷刺マンガを例にあげつつ提言した。
 今回、朱野さんが創刊号に寄稿したのは、「このオフィスには妖怪がいる」という妖怪小説だ。「怪談と妖怪では立てるアンテナが違う。怪談は負のエネルギーを集中して、一気に書くというイメージ。妖怪小説はあえて“ダメな人”になって、妖怪が出そうな世界に寄せていく感じです」と執筆の舞台裏を語る。
 それを受けて京極さんは、「怪談的な負のエネルギーは、妖怪を生み出すための土壌でもあるんです。その両者を扱えるところに『怪と幽』の面白さがある」と新雑誌の可能性に言及した。

書籍

『怪と幽 vol.001 2019年5月』

定価 1944円(本体1800円+税)

発売日:2019年04月24日

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