2012年12月25日(火)

 僕は時々、動画で絵本の読み聞かせを見ていることがある。
 画面には絵本だけが映し出されている。お母さんが子どもに読み聞かせているもの、声優さんやアナウンサーの音読、機械音のような声が聞こえて来るもの、音声には、さまざまな形態がある。
 僕は、お母さんが子どもに読んであげている読み聞かせの動画が気に入っている。聞き取りにくい言葉があったり、おかしな間があったり、とても上手とは言えない音読だが、何度も聞きたくなるのだ。本の内容を正確に聞き取りたいだけなら、音声読み上げソフトを使えばいい話だが、それではだめなのである。
 きっと、心が込もっていないからではないだろうか。では、心を込めるとは、どうすることなのであろう。
 それは、登場人物になりきることでも、作者になったつもりで読むことでもないと思う。きっと、読み聞かせている相手に、自分の愛情を伝えることだ。
 自分のために誰かが絵本を読んでくれる、時間と手間をさいて。これは子どもにとって、最高に幸せな時間だろう。
 僕が絵本を読んでもらっているわけではない。けれど、動画を見ている間は、僕も子どもに戻った気分で楽しませてもらっている。
 少しくらい読み間違えても構わない。
 僕が知りたいのは、読み聞かせをしてもらっている子どもの気持ちだからだ。
 本を読んでもらっている間の嬉しそうな表情を想像するたび、僕も満たされた気分になる。そして、いつか、世界中の子どもたちに、自分も絵本を読んであげたいと夢見るのだ。

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