──ブログを書いてみんなにコメントをもらうことで自分の存在意義を感じて、その気持ちがエスカレートしていく千夏子。このネット社会での承認欲求に象徴されるように、登場人物が抱えている問題がそれぞれ非常に現代的ですね。

宮西:ちょうどストーリーを練っている頃、芸能人の不倫スキャンダルが世を賑わせていました。そこまで一方的にマスコミに批判されなきゃいけないのかと驚く一方、インターネットの世界で一般の人からも叩かれているのを目の当たりにして、ネットって怖いなあ、とも感じました。サスペンスを書くなら、登場人物がぶつかり合う舞台を用意しなければと考えた時に、ネット社会をうまく取り入れられないかと思いつきました。

──登場人物それぞれの境遇や悩みがリアルに感じられました。

宮西:私は昔から友人のなかで愚痴の聞き役、というところがあって。怒って電話してきた友人の話を聞きながらその人以上に怒ってしまうので、話しやすいのかもしれません。婚活している友人も、子育てしている友人も、家族関係で悩んでいる友人も、それぞれ悩みや愚痴を打ち明けて話してくれるので、現代の「生きづらさ」が自然と集まってきて、それらが物語に落とし込まれていった、という感じでしょうか。

──登場人物はそれぞれ孤独で、誰にも相談できない。宮西さんのような聞き役がいたら、違う形になっていたかもしれませんね。

宮西:千夏子はブログを通じて知り合った女性に対する悪意を胸のうちに秘めながら相談に乗っていますが、それでも相談者は救われたと感じている。みんなが生きづらい世の中で、誰かが誰かを意図せず救うこともある、そんな誰かがいたらいいのに、と思いながら書きました。

──タイトルを初めに見た時には不穏な小説をイメージしましたが、読後感はまったく異なるものでした。

宮西:いわゆるイヤミスにしないというのは最初から決めていました。タイトルにもその気持ちを込めていて、「誰かに見られている」と思うとしんどいけれど、「誰かが見てくれている」と思うと、心強く感じるんじゃないかと考えて。読み終えたあとにタイトルの印象が変わっていたら、嬉しいですね。

書籍

『誰かが見ている』(講談社)

宮西 真冬

定価 1620円(本体1500円+税)

発売日:2017年04月12日

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    書籍

    『小説 野性時代 第165号 2017年8月号』

    小説野性時代編集部

    定価 860円(本体796円+税)

    発売日:2017年07月12日

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