【質問1】『AX』の主人公「兜」の名前の由来は? キャラクターの名前はどのように考えますか?
 最初の短編を書いたのが五、六年前なのであまり覚えていないのですが、たぶん、『マリアビートル』を発表したころ、オオクワガタの飼育が好きだったので、「クワガタ」という名前を考えて、それでは殺し屋のニックネームっぽくないことから、「クワガタじゃないならカブトムシかなあ」と単純に発想したような気がします。この本に限らず、登場させる人の名前は、読みにくくなくて、特徴が把握しやすいものをいつも探したくなります。大きいから「鯨」、うるさいから「蝉」とか。
【質問2】『AX』にはシリーズ前作である『グラスホッパー』『マリアビートル』の殺し屋たちも登場します。
 歴代の殺し屋で特に気に入っているキャラクターは? また、最強の殺し屋は誰だと思いますか?
 この作品に限らず、実はキャラクターにはそれほど思い入れがないのですが、槿みたいな存在は、ほかの小説に出てくる黒澤や千葉と同じようなタイプで、「読者としての自分」の好みを反映させている気がします。あと、バディ物の映画が好きなので、蜜柑と檸檬は書いていて楽しかった記憶があります。
 最強の殺し屋は誰か。『グラスホッパー』を書いたころはまさにそれを描きたかったのですが、最近は(年を取ったということでしょう)、「人を殺すような物騒なことは良くない」と思うようになってしまい、あまり考えたくないです。
【質問3】「兜」は無類の恐妻家ですが、作中の恐妻家エピソードで気に入っているものはありますか?
 もともとは編集者の教えてくれた、「魚肉ソーセージこそが(恐妻家にとって)夜食としては完璧」という教えが面白くて兜の話を書くことになったので、そのエピソードが一番好きです。
【質問4】伊坂さんご自身は恐妻家ですか?
 妻の機嫌には敏感なほうだと思います。
【質問5】他の作品の登場人物にも、『AX』の兜のようにモデルはいるのでしょうか?
 基本的にはモデルはいません。書きはじめるときに、なんとなく役者さんを思い浮かべることはありますが。
【質問6】『AX』に古山高麗雄さんを出されているように、伊坂作品には文学作品や楽曲がよく登場します。最近おすすめの文学作品や音楽はありますか?
 最近、あまり小説を読むことができていません。ただ、先日読んだ、佐藤正午さんの『月の満ち欠け』は小説の豊かさを味わえて、楽しかったです。音楽も新しいものにはすっかり疎くなってしまいましたので(最近の方でいえば、岡崎体育さんはよく聴きます)、おすすめのものがあれば教えてほしいです。
【質問7】伊坂さんにとって、〈殺し屋シリーズ〉とはどんなシリーズですか?
 自分の小説のなかで、シリーズ物として意識しているのは、『陽気なギャングが地球を回す』からはじまる銀行強盗四人組の話くらいでして、基本的には、この〈殺し屋シリーズ〉も特に、シリーズという自覚はありません。新しい小説を書くときに、前の作品の環境が使えるかな、というくらいの感覚ですが、今回、『AX』を書いていて、意外に、「業界」の設定が活用できるので書きやすいな、と気づきました。
【質問8】兜はボルダリングを趣味にしていますが、伊坂さんがいまハマっている趣味はありますか?
 とあるトレーディングカードゲームに、自分でもどうかと思うほどハマっています。カードゲームのことに思いを馳せる合間に、小説のことを考えるような状況になっていて、これはまずいな、と思っているところです。
【質問9】『AX』のなかで特に気に入っている場面や台詞があれば、教えてください。
 兜が、ある場所で幾人かの相手と同時に格闘する場面があるのですが、そのグループがスポーツやダンスのように連なって動き、攻撃を仕掛けてくるものの、だんだんと疲れが出てきて連係ミスが起き、隙ができる、といった展開が、非常にバカバカしくて、自分では好きです。あとは、終盤のほうに気に入っている場面がいくつかありますが、ネタバレになるのでここでは書けません。
【質問10】ずばり、シリーズ続編の構想はありますか?
 考えていませんし、そもそも、『AX』も書くつもりはなかったのですが、今回、『AX』の原稿を読み返していたら、蜜柑と檸檬が出てくるとやはり楽しくて、スピンオフというものにはまったく興味が持てないながらも(スピンオフという言葉自体、企画物のようで好きではないのですが)、この二人の別の話を読んでみたいな、とは少しだけ思いました。蜜柑と檸檬を主人公にした長編とか、わくわくします。ただ、最近、『きかんしゃトーマス』を観ていないから、檸檬に喋らせる蘊蓄がまったく思いつかないので、難しいかな。

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書籍

『AX アックス』

伊坂 幸太郎

定価 1620円(本体1500円+税)

発売日:2017年07月28日

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    書籍

    『本の旅人2017年8月号』

    角川書店編集部

    定価 100円(本体93円+税)

    発売日:2017年07月27日

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