『さよならドビュッシー』でデビューし、今年で作家生活十年目を迎える中山さん。
これまでミステリを中心にさまざまなジャンルの作品を発表してきたが、『笑え、シャイロック』は若手銀行員を主人公にした長篇小説。
債権回収業務に携わる主人公の眼を通し、日本経済の闇を描いたミステリだ。
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お金がからむと本性が出る

──中山さんはこれまでさまざまなジャンルのミステリをお書きになっていますが、今回は銀行が舞台です。なぜでしょう。

中山:金融と組織をテーマに書いてみないか、と出版社から依頼されたからです。課題だったのは金融工学などの難しい知識をどこまでハードルを下げて書くか。ページを繰る手を止めさせてはいけないので、リーダビリティを確保したうえでどこまで深い話を書けるか。それが挑戦でした。

──舞台は銀行。仕事は債権回収です。これ自体、銀行業務の中では、表だって紹介される機会が少ない仕事ですよね。

中山:みなさん、融資については、ご自身で住宅ローンを組んだりしていてご存じだと思います。ところが、回収については、実際に回収された人でないとわからない。

──主人公の結城は大手銀行の若手行員。回収業務に回されて腐っているところに、山賀という先輩と出会って回収の重要性に気づきます。彼らの回収のための奮闘がこの小説の面白さの一つです。

中山:金融の両輪は融資と回収。この二つがバランス良く回って前に進んでいきます。しかし、一見、うまく両輪を回しているように見える銀行でも、実は、バブルの負の遺産がまだ残っているんですよ。どこの企業もそうなんですが、いわゆる簿外処理、帳簿に出てこない債権、売掛金が必ずあるんです。決算書を見てもわからないお金の流れですね。銀行に限らず、会社として外に出せないことがあるということは、それがずっと内部に留まっているということです。膿が外に出ない状態でずっと体内にあるということなんです。会社が健全になるためには、どこかのタイミングで出さなければならない。『笑え、シャイロック』では、それを銀行の回収行動にからめて書いたつもりです。ですから、一般の会社にお勤めの方にもなるほどと思っていただけると思いますね。

書籍

『笑え、シャイロック』

中山 七里

定価 1728円(本体1600円+税)

発売日:2019年05月31日

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    書籍

    「本の旅人2019年6月号」

    角川書店編集部

    定価 100円(本体93円+税)

    発売日:2019年05月27日

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      書籍

      『新訳 ヴェニスの商人』

      シェイクスピア 訳:河合 祥一郎 イラスト:金子 國義

      定価 432円(本体400円+税)

      発売日:2005年10月25日

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