このほど六年ぶりに「佐方さかた貞人さだと」シリーズを刊行した柚月裕子さん。いま、柚月さんが興味を覚えているテーマをどのように作品化したのか。ファンの期待に後押しされながら、不安な思いも抱きつつ挑んだ中編で試みた文体の挑戦とは何か。上昇気流に乗った作家の看板シリーズについて、存分に語っていただきました。
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派手なドラマよりも 人々の心模様を描く

──『最後の証人』『検事の本懐』『検事の死命』に続く「佐方貞人」シリーズ待望の四作目『検事の信義』が刊行されました。雑誌掲載やアンソロジーに収録されていた作品に中編「信義を守る」を加えた四編が収録されています。

柚月:前作から六年ぶりの刊行ということを聞いて、そんなに経っていたのかと驚いています。

──中年のヤメ検弁護士という佐方が登場して、圧倒的に不利な殺人事件の裁判に挑んだのが『最後の証人』でした。新人賞デビューから二作目にあたる重要な作品でしたが、当時読んだとき、これはすごい人が登場したと思いました。その一年後に『検事の本懐』が出ましたが、時代を遡って検事時代の若い佐方が登場したのでびっくりした記憶があります。

柚月:デビュー後に短編の依頼があったのですが、当時はわたしのキャリアが浅く、新しいキャラクターを作り上げる過程が難しかった。『最後の証人』が幸い好評を得たこともあり、佐方を再登場させました。でも短編で法廷ものを書くのは分量的に難しい。検事ならば起訴するかどうかの判断など法廷以外の仕事もあるので、短い枠の中でもできるかなと。苦肉の策でした。

──これまでにも検事が主人公の作品はありましたが、佐方のようにわずかな疑問をそのままにすることなく、被疑者や事件に向かい合い、しかも法の理想を忘れずに検事の職務をまっとうするという作品は新鮮でした。

柚月:弁護士も検事も罪を扱う点は同じなので、小説もドラマも弁護士側から描かれることが多いですね。弁護士は検事のように国家権力の後ろ盾がなく、越えなければならないハードルが高い。でもその分ドラマとして作りやすいかもしれません。しかし検事も自分の見立てや方針と、組織の事情がぶつかって悩むことが多いはずです。

書籍

『検事の信義』

柚月 裕子

定価 1620円(本体1500円+税)

発売日:2019年04月20日

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    書籍

    「本の旅人2019年5月号」

    角川書店編集部

    定価 100円(本体93円+税)

    発売日:2019年04月27日

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      書籍

      『最後の証人』

      柚月 裕子

      定価 626円(本体580円+税)

      発売日:2018年06月15日

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