赤松:一番何度も読み返している本は、ミヒャエル・エンデの『モモ』ですね。ふと読みたくなる時があって、そうなるともう、家に持っているのに書店に飛び込んで買ってしまいます。三十回くらいは買ったんじゃないかな。あと私の場合、小説を書いている時に、なんとかこのレベルに達することはできないか、と思い描く作品があるんです。『鯖』の場合で言えば、頭の中にあったのは、西村寿行さんの『風紋ふうもんの街』。ちなみに、「藻屑蟹もくずがに」の時は中村文則さんの『銃』。次に双葉社から刊行する予定の『らんちう』が、湊かなえさんの『告白』です。どれも大きなタイトルなので、なかなか思うようにはいきませんが。今はまた、他の版元から出版予定の別の長篇を執筆中で、目下、車谷長吉さんの著作が頭の中にあるのですが……。車谷さんの小説の場合は、物語がどうのという前に、よく考えてみると、あれは生き方だから。人生そのもので完敗しちゃっているので、ちょっといま壁にぶつかっています(笑)。

──赤松さんの人生もかなり波瀾万丈だと思いますが……。ではすでに、本書のあとに一作書き上げ、その次にまで取り掛かっていらっしゃる。

赤松:正確には新潮社の次に、大藪新人賞をいただいた「藻屑蟹」を第一章に据えた、徳間書店から刊行予定の長篇を先に書き終えています。
 ただ早書きということではなくて、単純に執筆時間が長いだけだと思います。一日中ずーっと書いているので。

──『鯖』はエンターテインメント性に富みながらも、全体のテイストは暗い、ある意味で文学らしい文学という印象でした。次作『らんちう』はどんな作品でしょうか?

赤松:もっともっと暗い作品です。

──では、今ご執筆中のものは?

赤松:どん底です(苦笑)。
 でも本当は、読後に勇気が出るような、明るい小説が好きなんですよ。ただ、受賞作と本作がこんなテイストなので、担当編集者たちが寄ってたかって「もっと暗い話を書け」と(笑)。
 最初に話した、ゴルフ場を舞台にしたピカレスクなら、少し明るく書けると思うんですが……。芝生をコントロールする天才が主人公で、彼が賭けゴルフをするんですが、芝生に細工してスコアを狂わせたり……。

──もはや芝についての小説ですね。

赤松:タイトルも決めています。『緑の番人』。いや、『芝』の方がいいかな?

書籍

『鯖』(徳間書店)

赤松 利市

定価 1836円(本体1700円+税)

発売日:2018年07月21日

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    書籍

    「小説 野性時代 第181号 2018年12月号」

    小説 野性時代編集部

    定価 864円(本体800円+税)

    発売日:2018年11月12日

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