ベストセラー『百年法(ひゃくねんほう)』から四年、理系ミステリーの旗手として知られる山田宗樹さんが新たな題材に選んだのは、医療用に開発された人造人体〈代体(だいたい)〉だ。それは患者を苦痛から解放してくれる夢のテクノロジー。代体に意識を転送すれば、仕事や日常生活を続けることができるのだ。しかしそこには人類が触れてはいけないタブーが潜んでいた——。サスペンスフルかつ深いテーマを(はら)んだこの長篇はどのように生まれたのか?
<単行本刊行時に「本の旅人」2016年6月に掲載されたインタビューを再録したものです>
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短篇の着想を長篇に

──書き下ろしの最新作『代体』では、先端科学によって生み出された医療用の人造人体(=代体)が実用化された社会を舞台にされています。義手や義足をさらに発展させたような夢の技術ですが、こうした設定が生まれた経緯を教えてください。

山田:もとになっているのは、以前見た夢です。病気や怪我で入院することになった人が、お金を払って他人に治療の苦痛を肩代わりしてもらう。妙に印象的な夢だったので、何かに使えるかもしれないとメモを取っておいたんです。後日『野性時代』から短篇の依頼をいただいて、あの夢が使えそうだと思いついた。といっても、そのまま書いたのではよくある人格交換ネタ。新しい切り口はないかと頭を捻りました。医療用の人造人体というアイデアを思いついた時には、行けそうだという実感がありました。

──それが短篇バージョンの「代体」(「小説野性時代」二〇一四年七月号)ですね。ラストが衝撃的な医療ミステリーでした。

山田:自分でも手応えを感じて、アイデアを練り直して長篇化したのがこの作品です。人造人体が実用化された社会という基本設定は共通ですが、ストーリーや登場人物は別物になっています。

──この長篇は代体メーカーの若手営業職員・八田輝明(はったてるあき)が、患者の意識を代体に転送する現場に立ち会うシーンから幕を開けます。病院での転送作業が臨場感たっぷりに描かれていて、たちまち引き込まれました。

山田:物語を楽しんでもらうためには、基本となる設定を理解してもらう必要がありますが、難しい説明が続くと誰だって飽きてしまいます。説明パートは動きのあるシーンを通して、分かりやすく伝えるのが大切です。僕自身、難しい本を読むのはあまり得意じゃないので(笑)、ややこしいことを分かりやすくというのは常に意識しています。

書籍

『代体』

山田 宗樹

定価 821円(本体760円+税)

発売日:2018年05月25日

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    書籍

    『百年法 上』

    山田 宗樹

    定価 778円(本体720円+税)

    発売日:2015年03月25日

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      書籍

      『百年法 下』

      山田 宗樹

      定価 778円(本体720円+税)

      発売日:2015年03月25日

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        書籍

        「本の旅人」2016年6月号

        角川書店編集部

        定価 100円(本体93円+税)

        発売日:2016年05月27日

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