取材・文:葛山あかね
撮影:内山めぐみ
「江戸川区角野栄子児童文学館」開館プロジェクトレポート
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「江戸川区角野栄子児童文学館」開館プロジェクト 第11回
「魔法の文学館」のオープンまであと1年!
愛称やロゴマークも決定し(カドブン特集記事参照)、ますます注目が高まってきた「魔法の文学館」こと角野栄子児童文学館。開館まで残すところ、ちょうどあと1年となりました。建設現場は今どのような状態にあるのでしょう。
(2022年10月/これまでの工事の進捗は第1~10回のレポートをご覧ください)。
開放感のあるエントランス
10月末の取材で、まず目に飛び込んできたのは建物の顔ともいえるエントランス部分でした。前回の取材では、足場が立ち並びブルーシートに覆われている状態でしたが、それらはすべて取り払われて、大きなガラスがはめ込まれていました。
玄関は、中が透けて見えるガラスファサード(外壁にあたる部分がガラス張りになっていること)が採用されています。その大きなガラスの高いところは5メートルもあり、カーテンウォール(構造上の荷重を負担しない外壁)枠を細くすることによって、エントランスに開放感を持たせています。
建物には大小さまざまの「しかくい窓」(カドブン開館プロジェクト第7回参照 )が設置される予定ですが、それぞれの大きさによって強度や厚みの違うガラスが用いられます。例えば、直射日光が強く当たる壁面の窓にはLow-Eガラス(ローイーガラス)が使われる予定です。これは館内の冷暖房効果を高め快適性を維持させるエコガラスで、文学館に配架されるたくさんの本を紫外線から守ることにもなります。
職人技による美しい曲線
屋根の取り付け作業も、佳境に入っていました。フラワールーフの設置が難しいことは前回紹介した通り(第10回参照 )。実際に設置された屋根の端の部分を見て、驚かされました。
緩やかで美しい曲線は、その名の通り花びらを連想させる形状ですね。
そもそも、屋根材に使用されているのは下の写真のようなステンレス鋼材です。両端を直角に曲げた板状の素材で、屋根の端にあたる部分は当然ながら直線ですが、これがどうして緩やかなカーブを描くことになるのでしょう?
その秘密は、屋根の端を特殊な工具を使って少しずつ折り曲げて滑らかなカーブが作られていく、職人の手仕事による手間と時間がかかる作業にありました。設計を担当する隈研吾建築都市設計事務所の設計担当者はフラワールーフのことを「職人さまさまの屋根」と語ります。
軒下の天井部分も、ゆるやかに湾曲した仕上がりになりつつありました。ここにも職人技が光ります。
屋根の曲線に合わせて、その軒を覆うボードの幅・奥行きにも角度がついていきます。
普通なら1枚のボードをそのまま貼れば済むところ、ここでは少しずつ変わる軒下の角度に合わせて、幅を微調整しながら設置していきます。
館内にも変化あり!
それでは建物の内部に潜入してみましょう。以前は足場だらけでしたが、館内の様子が分かる場所もできてきました。
正面エントランスからまっすぐ進むと、その先はコの字のように曲がった通路となっています。この通路は「黒猫シアター」に続く傾斜のあるスロープだったのです!
“あなぐら”をイメージしてつくられたという「黒猫シアター」は、プロジェクションマッピングなどを駆使した映像で物語の世界を体感できるスペースになる予定。この細長いスロープを進むとき、子どもたちはきっとワクワクとした気持ちになるでしょうね。
館内はまだまだ未完成の状態ですが、ところどころに、角野さんの世界観を表す“いちご色”がお目見えするようになりました。壁面下の
子どもたちが安心して遊べる「ものがたりの丘」
建物以外の工事も始まりました。エントランスの西側は、子どもたちが安心して遊べる前庭「ものがたりの丘」になる予定だそうです。すでに、面白そうな遊具の工事が進んでいました。
上記パースの中央に見える白い大きな滑り台です。一般的な滑り台とは形状も大きさも異なり、子どもたちが思わず走り出したくなる、遊びたくなるよう、子どもたちの行動特性を踏まえたデザインになっているそうです。
滑り台には、飛び石やボルダリングなども一緒に設置される予定で、さまざまな遊び方ができるようです。
「魔法の文学館」のオープンまであと1年を切りました。工事はどんどん進んでいます。待ちきれないですね!
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