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特集

隈研吾さんも現場に! 原寸大モックアップ確認の様子をレポート 「江戸川区角野栄子児童文学館」開館プロジェクト第5回

取材・文/高関聖子(アンチェイン) 撮影/内山めぐみ

2023年11月に開館予定の「江戸川区角野栄子児童文学館」は、江戸川区のなぎさ公園・展望の丘で建設されています。前回の見学から約1ヵ月経ち、建設現場には、原寸大のモックアップ(模型)が登場しました。4月中旬、そのモックアップを見ながら細部のイメージをすり合わせるために、設計を担当した隈研吾さんがなぎさ公園を訪れました。

「白い壁、窓の中はいちご色……」原寸大の模型に想像が広がる!

2021年10月下旬に着工した児童文学館。前回の建設現場レポートでは、なぎさ公園・展望の丘の一部を掘削くっさくし、建物の骨組みを作る「基礎配筋きそはいきん」作業の様子をお届けしました。

前回の取材から約1ヵ月経ち、鉄筋が美しく組まれた基礎部分にはコンクリートが流し込まれ、床のベタ基礎(底面全体に鉄筋コンクリートを敷き詰める基礎)が出来上がりました。さらに、建物の一部では壁にコンクリートを流し込むための型枠を設置する作業も始まっており、小箱のような部屋の様子が想像できる場所もチラホラ。そんななか、敷地内では、外観の壁、窓、屋根の原寸大モックアップ(模型)が完成。この日(4月下旬)は、設計者である建築家・隈研吾さんによるモックアップの確認作業が行われました。


前回の取材レポートから1ヵ月経った様子。美しく組まれた鉄筋に、コンクリートが流し込まれました。


壁、飾り窓、屋根部分の原寸大モックアップ。室内の壁の色のパネルも入れられています。


モックアップは、建物の外観検討のために試作される模型のことで、図面上では判断が難しい場合に、工事現場に、原寸大でモックアップを設置し、材質や風合い、色調、外からの見え方などをトータルで確認し、実際に使用する材料や、ディテールの形状を決定していくものです。
今回作られたモックアップは、特徴的な出窓が取り付けられた壁の一部。白い壁を間近で見ると、ちょっと凸凹した味のあるテクスチャーで、建物全体にぬくもりを与えてくれているように感じました。また、出窓の内側にはライトが取り付けられたり、そこからいちご色の壁が見えたりと、細かい演出もなされています。
隈さんが現場に現れると、隈研吾事務所の設計スタッフとともに文学館の施工会社スターツCAM株式会社をはじめ、サッシや塗装、屋根、金物など専門の各社スタッフが一斉に周囲に集まり、全員で壁、窓、庇部分、屋根の形状、また色、材質などの細かい確認が始まりました。


現場を訪れた隈さん(右)。モックアップを見て、デザインを建設現場スタッフと確認中。


一つひとつ、細かいところをチェックしていく隈さん。屋根の軒先に出ている水はけ用の「唐草」(軒の先端に取り付けられる水切板金)の角度や、軒の天井部分のテクスチャー、窓枠にわずかにできた隙間の幅まで、モックアップに対してその点検項目は数十か所にも及びます!


より具体的な修正点があったところは、施工図に隈さん自らが書き込んでいきます。


隈さんは、上下に設置予定だった窓のライティングについて「一方だけでよいのではないか」、2パターンあったハゼの形状は「こちらのほうがすっきりしていていいね」と提案。窓に設置された点検口については、「ちょっと隙間の黒いラインが気になるな」、「子どもたちが危なくないよう、窓枠の角は丸くしてね」など、隈さんから事務所スタッフに疑問や確認が投げられると、担当した会社の専門スタッフがさっと近づき、全員で意見を交わし始めます。


屋根のハゼは2種類の試作品が作られ、どちらがいいか隈さんとともに検討。左側のシンプルなものが選ばれました。


隈さんは、はしごを上って庇部分まで細かく確認すると、次にガラス窓からいちご色の壁がどんな色に見えるかを入念にチェック。何度もしゃがみ込んでは、子どもの目線からどう見えるか、ということも確認していました。


窓と壁の接着面の滑らかさや、窓枠部分の角度など、細かいところも確認していきます。


最後に建物の周りに敷き詰められる予定の舗装や小石の大きさなどの色味や質感などを確認し、隈さんの現場視察は(予定時間をかなりオーバーしつつ)終了となりました。限られた時間で多くのことを打ち合わせたい、確認したい、と集まった多くの関係者たちの間にも、ようやくホッとした空気が流れます。
モックアップを使用し、設計段階と現場での印象のずれを修正し、関係者の意識を統一できたことで、児童文学館完成のイメージがより確かなものとなったようです。


デッキ材の材質チェック。「この色が良かったんだ」と、見本を見て隈さんも納得。


定点観測地点から見た建設現場の現在の様子


工事開始前の様子

ますます完成が楽しみな児童文学館。次回は、施工を担当するスターツCAM株式会社の現場所長さんにインタビューの予定です。お楽しみに!

「江戸川区角野栄子児童文学館」とは?

児童文学の傑作であり、世界中の子どもに夢を与えた『魔女の宅急便』の作者、角野栄子さん。50年以上にわたって創作活動に邁進し、これまでに生み出した作品はなんと250以上! その角野さんのゆかりの地である江戸川区に児童文学館が設立されることになりました。江戸川区が、児童文学の素晴らしさを発信するためのベースステーションとして建設を計画。現在、2023年の開設に向けて準備中です。建設場所は、総合レクリエーション公園「なぎさ公園」の展望の丘。江戸川区の自然に囲まれたこの場所で、新しく生まれる児童文学館にぜひご期待ください!
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e081/kuseijoho/keikaku/bungakukan/index.html


完成予想図


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