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特集

施工責任者にインタビュー!  江戸川区角野栄子児童文学館新築工事所長・佐藤匡宏さん「江戸川区角野栄子児童文学館」開館プロジェクト第6回

取材・文/高関聖子(アンチェイン) 撮影/内山めぐみ

2023年11月に開館予定の「江戸川区角野栄子児童文学館」。この建物の施工を担当しているのは、江戸川区に本社を置くスターツCAM株式会社。この会社が隈研吾氏の作った設計図をもとに、今回の施工工事の現場を具体的に管理していく要となる役割を担っています。施工について、現場全体の管理をしている佐藤匡宏さんにお話を聞きました。


――児童文学館のデザイン・設計に携わってらっしゃる隈研吾建築都市設計事務所(以下「隈研吾事務所」)と、スターツCAM株式会社のそれぞれの役割分担について教えてください。

佐藤匡宏さん(以下、佐藤):私たちは江戸川区から依頼された施工者という立場になります。隈研吾事務所が提示した設計図をもとに、建物を実際に作っていくという役割です。


現場責任者である佐藤さん。「私の仕事は、全体を見て、工事にどこか問題が起きていないかをチェックして、なにかあったらすぐに対応する調整役です」


――具体的にどのように施工にとりかかるのでしょうか。

佐藤:施工の前に、まずは設計図の図面を読み解いて、「施工図」というものに落とし込んでいく作業があります。鉄筋や資材がどのくらいの量になるのかといった資材の量を書き込んだものは別に作ってありますが、それが実際に正しく適切な資材であるかどうかを検討するために書く図面ですね。
鉄筋一本、資材ひとつとっても、それが現場に適合しているかどうかを検討しなくてはならない。構造を計算する方と確認しながら図面に書きこんで、施工図を完成させていきます。


――そのなかで、佐藤さんはどんなお仕事をされているのでしょうか。

佐藤:私の立場は現場管理人で、建物を建てるにあたり、すべてを見なくてはならない立場です。スタートした現場を監督するだけでなく、施工図を作ったり必要な修正を加えたりするために、江戸川区や隈研吾事務所との綿密な打ち合わせは欠かせません。さらに、現場を安全かつ工程期間を守って施工を進めていけるように人員配置や安全管理などの確認と調整しています。


隈研吾氏(右)の現場視察の様子。隈研吾事務所とは、設計図上だけでなく、現場でもしっかり連携をとりながら建設は進行中。


――角野栄子児童文学館を作る、と初めてお聞きになった時、どう思われましたか。

佐藤:隈研吾さんという世界的に有名な建築家の設計を形にするということで、非常にワクワクしました。それと同時に、どれだけ難しいものなのかという緊張感は、施工が始まった今でもあります。隈研吾事務所とは初めてご一緒させていただくのですが、どんなところにこだわって、これからも進めていかれるのか、隈さんのこだわりがこれからどんどん出てくると思うので楽しみです。


――設計図を見て、作業工程的に大変だなと思ったのはどんなところでしょうか。

佐藤:設計図には、設計者である隈さんの“想い”が込められているのですが、児童文学館の設計図の大きな特徴は、「屋根」だと思いました。上から見ると、いくつもの屋根が花びらのように見える多角形の配置になっています。屋根が先端にいくにつれて細くなっているんです。


「江戸川区角野栄子児童文学館」のイメージ(江戸川区提供)。「角野さんの世界観を表現する、この屋根の形が肝となっています。特徴的で複雑な作りのため、時間を掛けて何度も施工図を作り直しました」


――そうなんですね!屋根はどんなところにこだわりがありますか。

佐藤:先端は、最終的に35ミリくらいの細さ(薄さ)になります。これは、普通の屋根よりもかなり細いですね。これは技術的にはかなり難しいんです。ただ、それが、花びらのエッジのシャープさにつながっていると思います。この形状を設計図通りにやろうとしても、重さや強度などの施工面の要素を加味すると、現実にはなかなかうまくいきません。担当者と何度も話し合いながら、時間をかけて施工図を作り直し、どうやったら自然に屋根の先端が薄く細くなっていくかを考えました。まもなく、実際の屋根の施工が始まるわけですから、まだまだ気は抜けませんが。


建設に関わる多数の業者との連携やりまとめも佐藤さんの仕事。「工事の予定や資材の調達などが少しでも遅れると、次の工程に関わる業者との調整も必要になる。だから常に慎重に管理しています」


――施工図を作るのにも、時間が掛かるのですね。

佐藤:そうですね。隈研吾事務所の設計図はとてもしっかり作られているのですが、それでも今回の施工では、施工図を作るのに約1ヵ月ほど時間をかけました。我々は、設計者の想いとともに、安心と安全な建物づくりを心掛けて、施工をしています。


――ほかに、注意して施工している点はありますか。

佐藤:なぎさ公園に植えられている樹木を残した状態で施工していますので、樹木の枝や根っこを傷めないよう注意を払いながら作業をしています。大きな桜の木が何本もありますから気を使いますね。ですが、弊社では、これまでも建設地の既存の樹木を残したまま施工を行うことはありましたので、特に問題なく進んでいると思います。掘削した丘の土も建物の完成後には埋め戻して、丘の形を元通り復元してから造園作業を行います。そのための土もちゃんと取ってありますよ。


――4月からは基礎部分にコンクリートも入り始めましたね。

佐藤:このとき大変だったのは、満開の桜の花びらでした。なぎさ公園には桜の木が多いので、当然、風の多い日は花びらもたくさん飛び交います。その花びらが入らないようにコンクリートを流し込むのはとても大変でした。


基礎部分にコンクリートが流し込まれ、床のベタ基礎が完成(写真は、4月下旬の様子)。


――細かいところまで気を使うのですね。ところで、佐藤さんは児童文学館の施工は初めてですか。

佐藤:(私は)美術館や公共建築をこれまでにも担当したことはありますが、児童文学館は初めてです。世界的建築家の設計による、世界的児童文学作家の建物の施工を任されたことは、私たちにとっても誇りに思います。完成したら、きっと全国や世界中からこの建物を見にいらっしゃると思いますね。児童文学館にはテラスも作られる予定なので、コロナの状況が好転すれば江戸川の花火も楽しむことができるのではないでしょうか。これからの江戸川区の新たなシンボルになるでしょうから、それに恥じないものを作り上げたいという気持ちでいっぱいですね。


――今後はどのような流れで工事が進んでいくのでしょうか。

佐藤:7月にコンクリートを打ち終わったら、8月から鉄骨を組み立てる工事が始まります。その後、屋根を葺いてから内装工事ですね。おそらく10月末に足場を解体して、11月にはフェンスや門扉などの外構工事や造園工事を行ない、年明け23年の1月には江戸川区さんに引き渡しとなる予定です。昨年の11月から施工が始まり、ようやく工期の半分くらいまで来ましたので、残りの7ヵ月も気を引き締めて、安心安全で現場に取り組みたいと思っています。


――完成をとても楽しみにしています。ところで佐藤さんは、このお仕事のどんなときにやりがいを感じますか。

佐藤:建物を作っているときは大変なのですが、作り終わって、建物が活用されているのを見たときに喜びを感じます。話題性のある建物はニュースになったり雑誌にとりあげられたりということもありますので、それも楽しみの一つです。それと私たちは、「作ったら終わり」ではなく、1年後、2年後に定期点検があります。その定期点検の際に、使っている人が喜んでくださっているのを見るとうれしくて。そこはやりがいを感じるところですね。


「完成した建物を利用している方の笑顔を見ると、やっぱりホッとしますね」と語る佐藤さん。「来年の夏は、私も文学館で江戸川の花火を楽しみたいですね」と笑顔に。


佐藤 匡宏(さとう ただひろ)
プロフィール入る

「江戸川区角野栄子児童文学館」とは?

児童文学の傑作であり、世界中の子どもに夢を与えた『魔女の宅急便』の作者、角野栄子さん。50年以上にわたって創作活動に邁進し、これまでに生み出した作品はなんと250以上! その角野さんのゆかりの地である江戸川区に児童文学館が設立されることになりました。江戸川区が、児童文学の素晴らしさを発信するためのベースステーションとして建設を計画。現在、2023年の開設に向けて準備中です。建設場所は、総合レクリエーション公園「なぎさ公園」の展望の丘。江戸川区の自然に囲まれたこの場所で、新しく生まれる児童文学館にぜひご期待ください!
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e081/kuseijoho/keikaku/bungakukan/index.html


完成予想図


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