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特集

子どもの想像力豊かな心を育む場所に──角野栄子さんに聞く江戸川区と児童文学館への想い(後編) 「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」開館プロジェクト 第3回

取材・文/葛山あかね 

角野栄子さんといえば『魔女の宅急便』『小さなおばけ』シリーズなど、数々の名作を生み出している児童文学作家です。産経児童出版文化賞や野間児童文芸賞など数々の賞を受賞し、2018年には日本人3人目となる国際アンデルセン賞作家賞を受賞。87歳になった今も『おばけのソッチ ぞびぞびどうぶつえん』(2021年8月発売/ポプラ社刊)、『ケケと半分魔女 魔女の宅急便 特別編その3』(2022年1月発売/福音館刊)などの新刊を続々上梓し軽やかに活躍しています。


撮影/馬場わかな


そんな角野さんの世界観を楽しめる施設「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」(2023年7月オープン予定)についてのインタビュー後編は、来場者がきっと驚く印象的な館内の話から、現代の子どもたちに対する思いに続きます。

子どもの想像力豊かな心を育む場所に──角野栄子さんに聞く江戸川区と児童文学館への想い(前編) 「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」開館プロジェクト 第2回
https://kadobun.jp/feature/interview/entry-43626.html

圧倒的に可愛い「いちご色」の世界!


――外観だけでなく、館内にもワクワクするような仕掛けがいっぱいです。『魔女の宅急便』の主人公であるキキと猫のジジがお目見えするエントランスの楽しさはもちろん、なんといっても衝撃なのは、目の前に広がるコリコの町と、圧倒的に可愛い「いちご色」の世界です。



角野:色を決めてくれたのは、娘(作家・イラストレーターであるくぼしまりおさん。アートディレクターとして参加)なんです。私は館内をコリコの町のようにしたくて。『魔女の宅急便』の舞台になった、あの町ね。高さ制限なんかがあるから、ぐーんと高い時計台をつくるのは難しいけれど、あの町の雰囲気を再現したかった。そしたら娘が「町全体を角野栄子のイメージカラーである『いちご色』にしたらいいんじゃない?」って言ってくれて。それは面白い!と思ったの。
豊かな自然の「緑」に囲まれて、建物の外観は「ニュートラルホワイト」。で、中に入った瞬間にパッと『いちご色』の世界が広がるんです。みんなびっくりするんじゃないかしら(笑)



角野:壁が「いちご色」なだけでなく、時計台も本棚も、子どもたちが座るベンチも……。日常にはない風景を楽しんでもらえたらいいですね。


――嬉しいことに、館内には本を自由に読むことのできるスペースが用意されています。

角野:かしこまって読むのは疲れるでしょう。やっぱりゆっくりと寛ぎながら読みたいわよね。地べたに座って読んでもいいし、寝っ転がってもかまわない。屋外の芝生の上で風を感じながら読むなんていうのも楽しいわね。そんなふうに自由に本を読める場所があったら、子どもだけじゃなくて大人だって嬉しいと思います。



想像力が枯渇する子どもたち


――児童文学館の中に広がるコリコの町や「いちご色」の世界は、角野栄子さんの世界観を表現することはもちろんですが、もう一つ、大事な狙いがあるといいます。それは普段の生活とは異なる空間をつくることで、子どもたちの想像力をかきたて、自発的な行動を促すきっかけになること。

角野:現代の子どもたちは与えられることが多いでしょう。いろいろな情報が出まわり、検索するだけで何でも分かっちゃうから、自分で考えたり、動こうとしないのね。そうするとどうなるかというと、子どもたちの想像力はどんどん低下します。すでに、かなり枯渇していると言ってもいいくらい。情報を処理する能力には長けているみたいだから、選ぶことはできる。でも、選んだものをさらに膨らませて何かを生み出すということが苦手。クリエイションすることが得意ではないのよね。
だからここでは、誰かが何かを与えたり、指し示したりするのではなく、自分の目や耳を使って何かを発見してほしい。風景を眺めたり、風を感じたりしながら、自分なりの冒険を見つけてほしいんです。それは現実においても、本の中でも。

自分の「物語」を見つける場所に

角野:本って、テレビアニメとは違って自分でページをめくって自分のペースで読むことができるでしょう。ちょっと読んで考えることもできるし、手を止めて物思いにふけることもできる。自分の心の時間と物語の中の時間をシンクロさせて楽しむことができるんです。物語の中に入り込んで、一緒に冒険したり、喜んだり、悲しんだり、いろいろな体験ができる。子どもたちには、そういう本の楽しみ方をしてほしいし、その中で自分の好きな「本」を見つけてほしい。自分自身で自分の「物語」を見つけてほしいんです。
大人はすぐに「どうだった?」って聞きますよね。親は心配性だからついつい口を出しちゃうけど、子どもは面白いと思ったら、自分から話し出しますよ。誰かに言いたくなるわけ。大人だって昨日のテレビ面白かったわ~とか言うでしょう。それと同じ。楽しくって人に話したくなるっていうところから、もうクリエイションは始まっていると思います。
だからまずは子ども自身が心を動かし、面白さを体験し、いろいろなことを感じられる場所をつくりたい。そこから想像力豊かな心が芽生え、育まれると思うから。

「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」とは?

児童文学の傑作であり、世界中の子どもに夢を与えた『魔女の宅急便』の作者、角野栄子さん。50年以上にわたって創作活動に邁進し、これまでに生み出した作品はなんと250以上! その角野さんのゆかりの地である江戸川区に児童文学館が設立されることになりました。江戸川区が、児童文学の素晴らしさを発信するためのベースステーションとして建設を計画。現在、2023年の開設に向けて準備中です。建設場所は、総合レクリエーション公園「なぎさ公園」の展望の丘。江戸川区の自然に囲まれたこの場所で、新しく生まれる児童文学館にぜひご期待ください!
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e081/kuseijoho/keikaku/bungakukan/index.html


完成予想図


子どもたちの想像力を育む児童文学館は、隈研吾建築都市設計事務所の設計。角野さんの作品を読むことができるライブラリーや、角野さんのアトリエをイメージした展示室、代表作のキャラクターたちに出会えるファンタジックな空間も建設予定。

「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」開館プロジェクト



子どもの想像力豊かな心を育む場所に──角野栄子さんに聞く江戸川区と児童文学館への想い(前編) 「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」開館プロジェクト 第2回
https://kadobun.jp/feature/interview/entry-43626.html



『魔女の宅急便』で人気の児童文学作家・角野栄子さんのゆかりの地・江戸川区を知る 「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」開館プロジェクト 第1回
https://kadobun.jp/feature/readings/entry-42511.html


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