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特集

子どもの想像力豊かな心を育む場所に──角野栄子さんに聞く江戸川区と児童文学館への想い(前編) 「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」開館プロジェクト 第2回

取材・文/葛山あかね 

角野栄子さんといえば『魔女の宅急便』『小さなおばけ』シリーズなど、数々の名作を生み出している児童文学作家です。産経児童出版文化賞や野間児童文芸賞など数々の賞を受賞し、2018年には日本人3人目となる国際アンデルセン賞作家賞を受賞。87歳になった今も『おばけのソッチ ぞびぞびどうぶつえん』(2021年8月発売/ポプラ社刊)、『ケケと半分魔女 魔女の宅急便 特別編その3』(2022年1月発売/福音館刊)などの新刊を続々上梓し軽やかに活躍しています。


撮影/馬場わかな


そんな角野さんの世界観に触れることのできる施設「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」が、2023年7月にオープンするといいます。一体、どのような施設なのでしょうか。角野さんにお話をうかがいました。

『魔女の宅急便』で人気の児童文学作家・角野栄子さんのゆかりの地・江戸川区を知る 「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」開館プロジェクト 第1回
https://kadobun.jp/feature/readings/entry-42511.html

江戸川区と角野さん


――そもそも角野さんは、江戸川区とはどのような繋がりがあるのでしょう。

角野:私は3歳から23歳までを東京の江戸川区北小岩で過ごしました。戦時中、学童疎開のために離れたこともありましたけど、終戦を迎えてまた江戸川区に戻りました。とても庶民的な下町で、ご近所との付き合いも濃厚でしたね。子どもの頃はしょっちゅう外で遊んでいました。弟とザリガニを探しに行ってバケツ2杯分も捕ってきたり、夕方になると目の前をビューンと飛ぶコウモリを箒や竹の棒を振り回して捕まえようとしたり(笑)。
江戸川の河川敷も楽しい遊び場でした。春になるとレンゲソウがたくさん咲いて、花飾りを作ったり、長く繋げて縄跳びして遊んだり。家からゴザをもってきて、アラジンの魔法の絨毯のつもりで、土手を上から下までダーッと滑るんです。ゴザがないときにはもうそのまま横になってゴロゴロと転がるようにして下まで下りていました。おかげで洋服は汚れてしまってもう大変!


――そんな江戸川区にご自身の児童文学館ができると聞いたとき、どのようなお気持ちでしたか?

角野:とてもびっくりしました。だって、こうした施設は夏目漱石さんや芥川龍之介さんといった方々のものだと思っていましたから(笑)。驚いたけれど、同時に、思い出深い江戸川区に自分の児童文学館ができるなんて、素直に嬉しいと思いました。


学生時代の角野栄子さん(写真右から2番目。提供/角野栄子オフィス)

自然と一体化する“ものがたりの世界”


――建設予定地は、南葛西に位置する「なぎさ公園」です。園内には55品種約1万株のツツジや桜など四季折々の花が咲く自然に恵まれた場所であり、小高い展望の丘からは旧江戸川が望めます。公園内にはポニーやヤギと触れ合うことのできるポニーランドまでありますね。


撮影/佐山順丸


角野:私も実際に「なぎさ公園」を訪ねました。自然が溢れる豊かな環境で素晴らしい立地です。私が何より気に入ったのは「なぎさ公園」が“つくられすぎていなかった”こと。多くの公園では、広告や行事のお知らせといった情報を伝えるポスターやチラシがべたべたと張られていたり、プラカードや案内図が園内のあちこちにあったりするでしょう。ああいうのは親切なのかもしれないけれど、どこか押しつけがましくて、落ち着かないことが多いんですよね。
でも「なぎさ公園」には、そうした窮屈感がまったくなかったんです。あるのは季節の花々や可愛いポニーランド。広がった緑の丘を見たときは、なんて上品で素敵なところなんだろうと感動しました。遊びに来た人が、自分の感覚やペースで過ごせる理想的な公園だな、と。
児童文学館が建てられるのは見晴らしのいい丘の上。この場所の開放感溢れる雰囲気を大切にして、自然と一体化するように“ものがたりの世界”を表現できたらと、思います。

隈さんとの出会いと「フラワールーフ」


――設計パートナーは建築家の隈研吾さんです。初めてお会いしたときの印象は?

角野:一度、うちにいらしたんです。そのときの印象は本当に“くまさん”でした(笑)。ほら、「森のくまさん」っていう歌あるでしょう。もしね、森の中で迷子になったとき、熊さんならぬ隈さんに出会えたら、どんなに安心できるかしら、っていう感じの方ですね。世界的に有名な建築家で、名だたる建物をいっぱいつくっていらっしゃる方でしょう? それなのに、そういうことをひけらかすこともなく、偉ぶることもなく、こちらの話を一生懸命に聞いてくれました。デザインのことや外国で見た建築の思い出など、お茶をしながらいろんな話をして。とても楽しい時間でした。


――角野さんとのそうした時間や、なぎさ公園の立地や環境を鑑みて構想されたのが、下記の予想図(江戸川区のホームページwww.city.edogawa.tokyo.jpにて)。ほかにはない児童文学館になりそうですね。



角野:初めて模型を見たとき、ワクワクしました。まず目を引くのはやっぱり屋根よね。「フラワールーフ」と呼ぶそうですけど、文字通り、花びらが広がっているみたいに見えます。ただ単に、四角い屋根ではないのがいいところ。建物の建つ場所との関係を大切に考える隈さんらしいし、季節の花々と共に咲くように佇むなんて、ちょっと素敵ね。
建物の形も独特です。以前、隈さんが「小箱をいくつも集めた“おうち”みたいにしたい」とおっしゃっていたの。それなら「小さい窓をつけたらいいんじゃない?」とお話ししたりして。どんなふうになるのかしらと思っていたけれど、模型を見て、なるほど、“ものがたりの世界”にぴったりだわ〜と思いましたね。

(後編へ続く)

「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」とは?

児童文学の傑作であり、世界中の子どもに夢を与えた『魔女の宅急便』の作者、角野栄子さん。50年以上にわたって創作活動に邁進し、これまでに生み出した作品はなんと270以上! その角野さんのゆかりの地である江戸川区に児童文学館が設立されることになりました。江戸川区が、児童文学の素晴らしさを発信するためのベースステーションとして建設を計画。現在、2023年の開設に向けて準備中です。建設場所は、総合レクリエーション公園「なぎさ公園」の展望の丘。江戸川区の自然に囲まれたこの場所で、新しく生まれる児童文学館にぜひご期待ください!
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e081/kuseijoho/keikaku/bungakukan/index.html


完成予想図


子どもたちの想像力を育む児童文学館は、隈研吾建築都市設計事務所の設計。角野さんの作品を読むことができるライブラリーや、角野さんのアトリエをイメージした展示室、代表作のキャラクターたちに出会えるファンタジックな空間も建設予定。

「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」開館プロジェクト 第1回



『魔女の宅急便』で人気の児童文学作家・角野栄子さんのゆかりの地・江戸川区を知る 「江戸川区角野栄子児童文学館(仮称)」開館プロジェクト 第1回
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